第5話
ギルドはすぐに見つかった。街の中でもひときわ大きな商館風の建物だ。中に入るとが意外なほど多くビックリした。館に入って右手が冒険者ギルド、左手が商業ギルド。1Fのホールには道具や雑貨の販売店と掲示板があり、依頼が書き込まれている紙が掲示されている。ホールの奥は酒場になっていて、まだ太陽が真上だというのにすでに酔っ払っている者もいた。2Fはギルドの執務室や資料庫だろうか。階段横に大きく「ギルド関係者以外立ち入り禁止」と掲示されている。
「さて、登録受付は…と」
迷わず冒険者ギルドに歩を進めた。魔王を倒すと心に決めた限り、出来るだけ最短の道程にしたい。まずは強くなる事。死んでしまっては元も子もないからだ。その為には金と力、両方を手に入れやすい冒険者ギルドに登録すべきだろう。
登録受付/更新と書かれた窓口に向かう。
「こんにちわ。冒険者ギルドにようこそ!…初回登録には2500ガルドと年間登録料1000ガルド。合わせて3500ガルドかかりますが大丈夫ですか?」
受付にいたのはドワーフのお姉さんだった。こちらの風体と年齢から心配してくれたのだろう。生憎と手持ちが無いことと換金出来そうな魔石があることをを伝えると、最初に魔石を換金する事を進められた。
「買取り受付はあちらになります。また後ほどご利用ください。」
さすがギルド職員というべきだろう。村に定期的に来る旅業者とは段違いに対応が良い。買取り受付に行くと、ギルドカード無しでも買い取りはしてくれるそうなのでお願いする。
「これは!…素晴らしい魔石ですね。」
買取り受付の男性が驚きながら、賞賛の声を出す。
「両親から貰ったものです。いくらぐらいになりそうですか?」
「そうですね…1つあたり50000ガルドになります。」
「分かりました。3つ全て宜しくお願いします。」
正直相場が分からないが、ここで買い叩かれる事は無い。なぜなら「ギルド職員」とは一般人とは違う。国から援助を得て成立している組織の為、各国、街に支部を置いている冒険者ギルド職員が不正を働いたとなれば信用問題となり、その対処の為不正を働けば通常の罰より重い罰となるからだ。
「素晴らしい魔石です。全て買取らせていただきます。またのご利用、お待ちしております。」
そう言うと1金貨と5銀貨をカウンターの下から出してきた。
ー金銭
大陸共通通貨は、下から銅銭・銅貨・鉄貨・銀貨・金貨・白金貨、となっている。それぞれ十枚で次の硬貨と等しく、例えば銅貨10枚で銀貨になる。製造は4国共同で行っており、ドワーフが作ったといわれる通貨は紋様が細かく、また重量比等も計算されている。過去、偽造した者がいたらしいが、全員極刑となっていると親から聞いたことがあった。
金貨は余り使い勝手が良くない。全て銀貨に換えてもらった。
買取り受付から登録受付へ。受付のお姉さんに記載事項や再発行手続きに更新要領等説明された。名前と出身地、身長・体重を言い、職業を決める時に迷っていると
「こちらの質問に答えていただければ、最適な職業を選ぶ事が出来ますよ。確認してから後で変更することも出来ます。」との事なのでお願いする事にした。
「依頼を達成するのは、頭と身体どちらを使うほうですか?」
「身体です。」
「武器や道具は使いますか?」
「使います。」
「街と街の外と、どちらで行動しますか?」
「街の外です。」
「武器と魔法と、どちらをよく使われますか?」
「武器です。」
「武器は剣や槍ですか?種類は?」
「弓です。」
この後にもしばらく質問が続き、最後にとうとう職業が決定した。
「職業は野伏となります。」よろしいですか?
異論は無い。ギルドカード作成まで椅子に座ってしばらく待つ。
「お待せしました。こちらがコウキ様のカードになります。まだ少し作業が残っています。記載情報に誤りはありませんか?」
手にとってみると結構重い。厚みがあって刻印がしてる。
記載情報は以下の通りだった。
名前:コウキ
出身:白国スラストップ村
職業:レンジャー
種族:人間
眼色:蒼
頭髪色:黒
身長:120cm
体重:45kg
自書欄と母指欄がある。自書欄に名前を書く。
「母指欄にしっかりと親指を当ててください。」
親指をあてると登録受付の女性が魔法を唱えだした。
「大地の神よ。固く硬く彼の者の刻印を刻め。中級大地呪文!」
指を離すと親指の形がカードに刻印されている。それにカード自体もさきほどより硬くなっている。
「お疲れ様でした。3500ガルドになります。」
料金を払って次は旅支度だ。正直あまりこの街に詳しくないし、登録受付のお姉さんに尋ねてみよう。
「このあたりで、旅の支度に必要な物を売っているオススメのお店ってありませんか?」
「そうですね…。ギルド内の販売店で買っていただくのが正直宜しいかと。専門の武具や防具でしたら専門店に行かれたほうがいいと思います。」
販売店に向かう。乾燥済みの薬草、毒消し草、干し肉、砥石、皮袋…色々買っても1000ガルドで済んだ。良心的な店だったな。後で街で鍋と皮剥ぎ用のナイフと外套を買ったら6500ガルドもしてビックリした。
宿に戻って出発準備したら就寝。でも明日からの旅路と、冒険生活を考えると中々寝れなかった。
「一人で生きるのって大変だ…でも、冒険者ってハイリスクだけど、ハイリターンだよな。大丈夫。俺ならうまくやっていけるさ。」
そう一人ごちて、不安を降り払う。明日はいよいよ出発だ。
-光魔法
失われた魔法。古の勇者が使用したとされる。現在光魔法の使い手は確認されておらず、書籍や口伝の類も残っていない為、存在そのものが疑問視されている。
-闇魔法
知性のある魔族、魔獣、魔物が使用する魔法。闇の神に帰属する魔法である。効力は破壊や毒、変化などさまざまである。通常人間には使用できないが、魔に堕落した人間、魔物化した人間のみ使用出来る。