白服の私と黒服のダンナサマ
私は、ただ今結婚式のために化粧もドレスもばっちりです。
人生最高水準の似非美人と化している自信がある。
私がいるのは王城の中の控え室です。
私が聞いた話では、結婚式はシンセイな場所でやるもので、エイエンの愛のチカイは神様や精霊にするものなハズですが、ウチのダンナサマに意味わからんと一蹴されました。
曰く、破っても構わない宣誓を司る存在に、有難味を見いだせないらしい。そもそも、ダンナサマはナニカに祈ったことすらないそうだ。
確かに、エイエンの愛を誓ったくせに離婚したとか、きくけどさ~。
ちょっとぐらい、乙女の夢を見させてほしかったんだけど!
まったく、ウチのダンナサマは浪漫を解さない奴である。
というか、王城で結婚式を開いて、王様に夫婦の宣誓をするってどうよ。
ダンナサマは主君以外に言ってどうすると言っていましたが、ただでさえよれてるうちの陛下に余計な負担をかけてどうするの!
ちなみに、ウチのダンナサマの家系は代々主君の前で夫婦の宣誓をやってきたとか。
……流石、第一の忠臣の血筋っていうべきとこなのかしら?
それはさておき。
控え室にダンナサマがやってきたが、それは、式が少し遅れるという知らせだった。
何でも、移動用の転移門の不調で招待客の一部がまだ王城に来てないんだって。
別に私は中止でもいいしむしろ中止の方が嬉しいです。
私が今日の結婚式にお城のお偉いさん方が参列すると聞いたのは、当日、つまり今日。
——早く言おうよっっ!!
私の付け焼刃な礼儀作法を陛下の前で晒すのも気が重いのに、お高そうなお偉いさん方に見られるって何のイヤガラセ?優しい陛下は兎も角、お偉いさん方がなぁ。
そう言えば、ダンナサマの視線をものっすごく感じます。
今日もダンナサマは目の隈スゴイよ。その隈を化粧で隠したら、もっと格好良く見えるのに。
その前に、結婚式の新郎新婦の衣装は白だと聞いておりましたが、ダンナサマはナゼいつも通りな黒服?
いつもよりいろいろ頑張っている感じはあるけど、結婚式じゃなくてお葬式に参加するみたいだよ。
って、わっ。
ち、ちかい!近い!!
「……綺麗だ」
だ、ダンナサマ、耳もとで、耳元で囁かないでっ!
腰に響くんですけどっ!!
……うう。
……何この密着体勢……。
さっきうっかり腰砕けになりかけた後に、ダンナサマに抱きかかえられて、椅子に座ったダンナサマの膝の上に横座り中……。
恥ずかしくて、精神的にヤバイです。
だ、誰か、今すぐ蘇りそうになる夜のアレコレを忘却する方法を教えてくださいオネガイシマス!!
「……アリア」
だから、耳元で囁かないでっ!
この体勢だと、ちょうどダンナサマの口元に私の耳がぁっ!!!
「……話が、ある」