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ドレスの私と結婚式

 窓の外には、雲一つない青い空が広がっている。

 まさに、快晴と呼ぶに相応しい景色だ。

 ……ところで、どうして私はコンナトコロにいるんデショウネ……。

 ——最近、現実逃避したくなる頻度が高いなっ!

 まあ、自分を取り巻く世界が一変したら、現実逃避の一つや二つしたくなるよね、たぶん。

 今いるのは、一言で行ってしまえば豪華な部屋。

 正直怖くて、今座っている椅子から動けません。

 娼館の御姉様方の秘蔵の品よりも価値のある物が、ごろごろ転がっているのだ。

 うっかり引っかけたら、怖すぎるよっ!

 そして、私の座っている椅子の前には、大きな鏡がある。

 その正面の大きな鏡に映るのは、純白のドレスを(まと)っている私なわけだ。

 ドレスは、ものっすごく高そうで、私が服に着られていないのがむしろ不思議になってくる代物だ。

 第一に、ドレスを構成する生地の質が、そこらの半端ものとは一線を画すのだ。

 もう、生地だけで私を百人ぐらい買える水準なんだよ……。

 ただ、黙って立っている限り、特徴といえば裾を引き摺る長さというだけの、一見飾り気のない質素なドレスに見える。

 ところがどっこい。

 真っ白なだけの生地だと思いきや、光の加減で淡い虹色の模様が浮かび上がるのだ。

 しかも、その模様の細かいこと!

 繊細で綺麗な意匠だけど、これ作った人って発狂しなかったの?と思わず心配してしまう出来だった。いやむしろ、悟りを開かなきゃ、作れなさそうなカンジ?

 間違いなく、今までの人生で着た中でも、最高水準のドレスですね、はい。

 ちなみに、私の顔も、使用人の皆さんの尽力により、人生最高水準になっている。

 なんというか、原型を保っていて、何よりです。

 御姉様方の中には、化粧で化けに化けてたおカタもいたんだよね。スッピンになったら識別不可能って、どうよ。

 人生最高水準のドレス用の化粧が、そんなに分厚くなくてほっとしております。

 ドレスと化粧の補正付きだけど、こうして見ると、私もいけてないっ?!って自惚れてみたり。

 ……でもねぇ。

 はっきりいって、憂・鬱!なんですよ。

 

 ——だって、結婚式なのだ。結・婚・式!

 

 誰と誰のだって?

 ……私と、目の隈男、もとい第一の忠臣の誉れも高いアレクサンダー・ヘンアン・ウェイン様の(ちなみに、目の隈男の本名を私が知ったのは最近だ)。

 

 一体どうしてこうなった。

 

 いや、私がヘンアンのセットクに屈したのが原因なんだけどねっ!!!

 でも、少し位言わせてほしい。

 首を縦に振るまでベットから出さないのは、犯罪だと思いますっ!!!!!!

 ええ、実に念入りにセットクされましたとも。体で。

 私を誘拐したオニーサマ方を主に陛下がボッコボコにした後(瞬殺でした。陛下は意外に強かった!)、ヘンアンの屋敷に連行されました。

 これでも徹底抗戦するつもりだったのよ?

 厄介ごとを山ほど抱えていそうな男と結婚だなんて、いくら贅沢出来たってお断りだ。私は結婚生活ぐらい、穏やかに過ごしたかったのだ!!

 

 ……はあ。

 

 あの時は、本気で腹上死の危機を感じマシタヨ。

 快楽も過ぎれば拷問になることを、思い知らされマシタネ。

 敗因は圧倒的な体力の差と、あの男が私の弱点を知り尽くしていたことだったねコンチクショウ。

 あと、私が頷いた途端に結婚届に署名させたあっちの戦略勝ちだ。

 ガチで逃さない気満々だった。

 

 何故に私?!?!?!?!?!?!

 

 理由を聞いても、ヘンアンは私が良かったからしか言わないし、他の方々には生温い視線しかいただけません!

 

 コンコン

 

 って、返事をする前に扉を開けないでくださいダンナサマ。

 着替え中だったらどうするの。

 え?

 夫婦だから問題ない?

 いや、頼むから問題にしてください。

 私だって、恥じらいというものがあるのデスヨ。


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