戦争用?
走った。ひたすら走った。どこかの血管が切れたかもしれない・・・。心臓の辺りがズキズキと痛む。
「おい、ちょっと。」
「ひゃぁっ!?」
「へぇっ!」
カチャカチャン、と金属の音が谷間に響いた。
「痛っ・・・あのなあ、ピスタチオ。人から逃げてるってのにさ、急に声かけられても困るよ。」
「俺もそんなびっくりされても困るけどな。傷が付くって。」
「ああ・・・。『人』と言ってはいけないようだ。」
僕はまた走り出した。
「じゃあ何なんだい?」
「強いて言うなら、・・・ドリル?」
「俺はそんなにバカじゃないんだから、もう少し詳しく説明してくれてもいいと思」
「ちょっと黙れ!!ほら、発射!」
キキキキカーン・・・ガチャン。耳障りな金属音だ。何度聞いたことか・・・。
「ほらぁ、お前が話しかけてくるから!」
「ハイハイ、あれだね、仲間のアンドロイド?」
「正解!僕を直そうとしてるんだよ、何も思おうとしないように・・・。」
そうだ・・・。僕は元々戦争用に造られた。相手国が大量の血を吹き出して倒れていっても、地雷を踏んでグロテスクに内蔵が飛んでいっても、構い無く相手を攻撃し続けることができる、「感情の無いアンドロイド」に——
「けどまあ、そろそろ僕も燃料切れそうだよ。あっちも頭良いよな、燃料切れてから捕らえようってんじゃないかな?」
「ああね。だって、造られた脳だから。」
そうそう・・・僕は「男」として造られたのだが、またなにかの不都合で女っぽく・・・。名前も最初っから「亜梨沙」で。本当に「高性能」を造りたかったのか不明だ。
「亜梨沙、そろそろどうするのか決めろよ。このままだと、燃料切れを繰り返すだけだぞ?」
「うーん・・・。でも、することもないし、僕はずっとこのままでいいよ。」
「そうかなあ。退屈だろ。」
「逃げ続けて、燃料切れて、また逃げて・・・。壊れたら壊れた、でいいんだ。僕は元々戦争用アンドロイドなんだから、戦争してなかったら『存在の価値』なんてないんだよ。」
そうだ・・・。僕がもし人間なら。「そんなことないよ。みんなに『存在の価値』はあるのさ。」って誰かが言ってくれるに違いない。
「でも、俺もプラリネも、亜梨沙に使ってもらわなきゃぁ『存在の価値』が無い。つまり、亜梨沙には死んでもらっちゃあ困るんだよ。」
「大丈夫。僕は簡単には死なないし、捕まらないから。」
「俺もプラリネも信じてるからな、亜梨沙のこと。戦争用に使われるのは嫌だから。」
こんにちは。
なんかキレの悪い最後となりました・・・。
1度この作品は出したのですが、「あっ!短編にしてしまった!!」と思い、シリーズに直しました(汗)
まだ続きますが、短めにしようと思っているので、気楽に読んでいただければ。
そうそう、バタフライナイフのピスタチオが「発射」してますが、「特殊なんだ」と思ってください。
佐々松 ミナとして書いている小説「世話役Aの苦労物語」もよろしくお願いします。