思い出06
朝、起きる。
昨日までと変わらない。
変わらないように見えて、確実に変わっている。
まず、遼の彼女にってから初めての朝。
「だから何だろう」
次に。
「今日から8月」
7月分のカレンダーをめくる。
カレンダーをめくるのもこれが最後となってしまった。
「あ……」
宿題、どうしようかな。
どうせ提出する前に死ぬんだし。でもしてないと変かな。
「別に私は死ぬって知ってるんだからいいでしょう」
いちいち、周りを気にする必要もない。
部屋から出て、1階へ下りる。
あの女はいない。どこかへ泊っているんだろう。
「私の命が後1カ月って言うことも知らずに」
知ったからと言って、きっと変わらない気がする。
いつもと変わらず、1人の朝。
1人で食パンを準備して、トーストに入れる。
「今日はどうしよう」
遼に……会おうかな。
と、いっても電話番号も家も分からない。
「どうしようか」
チン、といつも通りトーストがなる。
トーストのところまで歩き、パンを手に取る。
これからのことを考えながらパンにバターを塗り食べる。
番号ぐらい、聞けばよかったのかも。
そう思いながら、パンを1枚食べ終わる。
食べ終わって、食器を片づけているころ、普段はならない電話が鳴った。
「はい。桐沢です」
『真生? 遼』
遼?
言いたいことはいろいろある。
まず、真生? 遼。なんてどちらが誰の名前かわからない。
次に。
「なんで電話番号知ってるの?」
『今、連絡網ってものがあるの知ってる?』
……なるほど。
「だから携帯じゃないんだ」
『真生、携帯持ってるんだ』
バカにしないでほしい。
ちなみに、私は中学のころからずっと持っている。
そのことを電話相手に伝える。
『へー。意外だな』
「私をどう見てるわけ?」
『まぁまぁ。で、今日暇?』
もちろん暇。
『どこか行く?』
「……別にいいけど」
『今から行っていい?』
「だめ!」
受話器の向こうから笑い声が聞こえる。
電話して、今からいい? なんて、いいはずがない。
「準備できたら電話する。番号教えて」
『了解』
近くにあった紙に遼が言う番号を書く。
『それじゃ、あとで』
「うん」
通話時間を見ると4分弱。
久々の長電話。
準備、しなきゃ。