思い出01
カウント4 思い出01
カウントが減るにつれて、思い出は増える……みたいな感じです。
「……えっと、俺を好きってこと?」
「信じた?」
「嘘なの?」
見るからに落ち込んだことがわかる。
「いや、嘘」
「どっちが」
「好きなのが本当」
「それじゃ、付き合ってくれますか」
顔をあげてまっすぐ私を見てくる。
「はい」
一言、ただの一言で彼は、顔をくしゃくしゃにして喜んだ。
少し前までは彼を好きになった自分が不思議で仕方がなかった。
高校に入学してから、彼とはクラスメイトだ。
そして、3年に上がるときクラス替えがない我が学校では、来年も同じクラスになることが普通だ。
しかし、まるで接点がなかった。
ただ、同じ教室で、同じ先生に授業を受けているだけの関係。
教室で静かに過ごす私と、どこでも明るく騒ぐ彼。
私が彼を好きになったこと以上に、彼が私を好きになったことが不思議だ。
「真生、何考えてる?」
「……真生?」
真っすぐに生きる、という意味でつけられた分かりやすい名前。
この名で呼ぶ男子は珍しい。と、いうのかいるかさえ不明。
「彼氏だろ。真生じゃだめ?」
「いや、別にいい」
「よかった。俺も、遼でいいからな」
遼。
死ぬまでに1度は呼びたかった名前。
死ぬまでに……。
「遼、大事な話がある」
「大事な?」
「付き合うといったけど、これを聞いて別れたいと思うなら別れていい」
「は?」
まったく理解していない彼には、はっきりと言う必要があるだろう。
「私の余命は、あと1カ月だから」




