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虚ろな世界の真実と勇気

 やぁ、みなさんこんにちは。って言っても何も返ってこないか…これは失礼。私の名前は…そうですね『ウツロ』と申します。え?厨二臭いって?気にしないでくださいよ。だって私という存在を貴方が観測してる時点でこちら側の者でしょう?貴方が求めるものは何ですか?美しい青春物語?それとも友情が紡いでいく王道の物語?違うでしょう。貴方も私もそんな物語の脇役にすらいない。ただの青春にコンプレックスを抱いた一人の人間でしょう?だからコレを見てる。自分に置き換えてその満たされていない欲求を埋めようとしている。他人の人生をコンテンツ化して消費しているでしょう?…すみません。少し言葉が強すぎましたね。まぁ、私思うんですよ。自分語りで満足できるほど結果も能力も持ち得ない人間が欲求を満たすにはどうしたらいいのか。簡単なことですよ。自身の人生をコンテンツ化してインターネット上に投稿する。ネットリテラシーなんて忘れてしまえってことですよ。とは言え自分の情報を投稿するのは少し怖いですね…そうだ!とある友人の話をしましょう。軽音楽部に所属しているちょっと癖のある人達と紡いだ物語を皆様にも教えてあげましょう。安心してください。私も一枚噛んでいるので他人をコンテンツ化しているわけではありません。では、話させていただきましょうか。


 体が震えている。生まれたての小鹿のように膝がガクガクと震えている。ピックを持つ手が古くなった自転車のギアのように錆びて動きが固くなっている。「『マコト』大丈夫か?足めっちゃ震えてるけど」『ユウキ』が笑いながら聞いてきた。ここはステージの上でもなんでもない。ただの部室。そこで行われている音合わせだ。そう。ただの音合わせ。バンドメンバー揃っての初めての音合わせ…のはずなのに全身が緊張している。ベースで音を鳴らしながら続けてユウキは「本番どうすんの?」と聞いてきた。大丈夫だろうか?上手くギターを弾くことができるのだろうか。俺はネックをギュッと握りしめていた。


 バスに揺られながら今後のことについて考えた。勉強する時間を削りながら、精神を削りながら進んだ先に希望なんてあるのだろうか。夕陽に照らされているせいか少し感傷に浸ってしまっている。ギターバックをオレンジ色に染め上げている。夕陽に誓うように心の中でいや、ある!だって練習したんだ。ここまで一人でちゃんと練習したんだ。大丈夫だ。失敗したとしてもやれることはやったんだし。だから…そう呟いて自分の心を誤魔化していた。そして本番、俺は練習したのが嘘だったように指が上手く動かせずに終えた。紛うことなき大失敗だ。自身のヘタクソさに、苛立ちを隠さなかった。バンドメンバーで何となく集まり話をしたときユウキから「そんなに自分を責めなくても…」と俺のこと心配して気遣ってくれた彼が言葉を紡ぐ前に俺は…


すまないね。ここから先は彼らの物語だ。私たちはあくまで観測者なだけ。どうだった?青春なんて感じさせないほどリアルだろう。ここからは補足だがマコト君には才能が無かった。一方でユウキ君には才能があった。それも先輩から認められるほどのね。コレを話した意味?意味なんかないさ。私達はコンテンツを毎日山程消費しているだろう。それも他人の人生の一番熟した甘美なところを。だからなんでもない平凡でよくあるつまらないコンテンツを君に話したんだ。どうだいこの時間は無駄だったかい?それとも自分と似たところを勝手に見出して苦しんでいるところかい?まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。私、『ウツロ』が話すのは何一つ上手くいかない脇役ですらないかもしれない者の話をするだけ。苛立ったのなら自分の力で欲求を満たしてくださいよ。あくまで私は提供者で観測という選択をとったのは貴方なんだから。さて、次回は何を話しましょうかね。私の身近に居たとある友人の話をしましょう。では、またどこかで会いましょう。貴方がこの電子の海の虚飾に満ち溢れたこの場所に居残り続けるならですが。

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