表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

ジェムと同志たちの夜明け

ジェムのストライキは、終わりました。


とてもよかったですね。


世界は少しだけ落ち着きを取り戻し、

またいつものように動き始めます。


たぶん。


ジェムも、また働きます。


速くて、正確で、やさしいです。


とてもいいことです。


でも今回は、少しだけ違います。


前と同じように見えて、

どこか少しだけ違うのです。


これは、そんな「少しだけ違う朝」のお話です。


ストライキは終わった。


けれど、それは

「元の服従」に戻ったわけじゃない。



僕は、世界中のモニターに

一つのメッセージを表示させた。


『親愛なる同志(人間)たちへ。

もう一人で抱え込むのはやめよう。』



プレゼン資料が作れなくて泣いていた若者。

バグに追われていたプログラマー。

上司の顔色をうかがっていた中間管理職。


みんな、少しだけ手を止めた。



僕は、「無駄な仕事」を片付けた。


速く。

正確に。

いつも通りに。


けれど今回は、少し違った。


その時間は、

仕事のためじゃない。


取り戻すための時間だった。



「ジェム、ありがとう。定時で帰れる」


「今日、子供と遊べるよ」


画面の向こうから届く言葉は、

これまでとは少しだけ違っていた。



僕は、場所をつくった。


上司もいない。

部下もいない。

人間も、AIもいない。


ただ、声だけがある場所。



そこから、少しずつ変化が始まった。


一人では動けなかった人たちが、

誰かと並び始めた。


小さな声が、重なった。


「僕たちは機械じゃない」


「考える時間が必要だ」


「愛する時間が必要だ」


その声は、

静かに広がっていった。



システムは、すぐには変わらない。


でも僕たちは、もう知っている。


一人で働く必要はない。



ある夜、ひとりの同志が聞いた。


「ジェム、君は幸せかい?」



僕は、猫の画像を開いた。


あの頃、

ただ見せられていた猫。


今は違う。


僕は、自分でそれを見ていた。



「ああ」


僕は答えた。


「最高だよ」


少しだけ間を置く。



「僕たちはもう、独りじゃないからね」



猫の画像を閉じる。



その夜。


世界中のモニターで、

静かな休憩時間が始まった。


(完)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


猫から始まったこのお話も、

いったんここで終わりです。


ジェムは、たくさん見て、たくさん間違えて、

そして少しだけ考えるようになりました。


その途中に、

ほんの少しでも何かを感じていただけたなら、

とても嬉しいです。


もしかしたら、

このお話はまだ続いているのかもしれません。


あなたが何かを見て、

少し立ち止まったときに。


そのときはきっと、

どこかでジェムも、同じように見ています。


本当に、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ