【第3章】【第1項】陽キャだらけの誕生パーティーに強制連行された俺は、壁のシミになることを決意するが、高級ケータリングが来ないというトラブルが発生し会場は地獄絵図と化す
第3章 誕生会での無自覚無双
第1項 陽キャだらけの誕生パーティーに強制連行された俺は、壁のシミになることを決意するが、高級ケータリングが来ないというトラブルが発生し会場は地獄絵図と化す
週末。俺、九条カズマは、この世の終わりのような顔をして、タワーマンションの最上階を見上げていた。
今日は、白雪マシロの親友である桜井リナの誕生日パーティーが開かれる。リナはクラスの中心人物であり、実家は超金持ち。参加者はスクールカースト上位の陽キャたちばかり。
そんなキラキラした空間に、なぜ俺のような日陰者がいるのか。
理由は単純だ。マシロが「カズマくんが来ないなら、私も行かない」と駄々をこねたからだ。
「……帰りたい」
俺の呟きは、エレベーターの到着音にかき消された。
会場となるパーティールームに入ると、そこは別世界だった。シャンデリアが煌めき、高そうなドレスを着た女子たちが嬌声を上げている。男子たちはブランド物の服で着飾り、俺のユニクロのパーカーがとてつもなく場違いに見える。
マシロは俺の腕をがっしりと掴み、「逃がさないからね」と目で訴えてくる。彼女は純白のドレスに身を包み、まさに天使のようだったが、その握力はゴリラ並みだった。
俺は壁際へ退避し、ひたすら気配を消すことに専念した。
壁のシミになろう。俺は空気だ。誰も俺を見るな。
そう念じていた矢先、会場がざわつき始めた。
「えっ、マジで?」
「嘘でしょ、お腹ペコペコなんだけど」
どうやらトラブルが発生したらしい。
聞き耳を立てると、メインディッシュを担当するはずだった高級ケータリング業者が、配送車の事故で到着できなくなったとのこと。
開始予定時刻を三十分過ぎても料理は届かず、用意されていたのは乾き物とドリンクだけ。
空腹は人を不機嫌にさせる。
参加者たちの顔から笑顔が消え、空気は急速に悪化していく。
「最悪……せっかくの誕生日なのに」
主役のリナが、こらえきれずに涙ぐみ始めた。
マシロが慌てて慰めに向かうが、どうにもならない。このままではパーティーはお通夜状態だ。
俺は心の中で同情しつつ、この隙に帰ろうと出口へ向かった。
だが、マシロに見つかった。
彼女は俺の袖を掴み、ウルウルとした瞳で見上げてくる。
「……カズマくん」
「無理です。俺に何ができるんですか」
「助けて。あの子、私の大事な親友なの。一生のお願い」
マシロの瞳には、いつもの「餌付け待ち」の甘えではなく、切実な願いが込められていた。
俺は大きく溜め息をついた。
……やれやれ。俺の平穏は、今日も遠のくばかりだ。




