ー【第2項】ただのカップ麺と冷や飯で作るチャーハンが、彼女にとっては三ツ星シェフの創作料理よりも深く心に突き刺さる精神安定剤となる
第2項 ただのカップ麺と冷や飯で作るチャーハンが、彼女にとっては三ツ星シェフの創作料理よりも深く心に突き刺さる精神安定剤となる
さて、今日のオーダーは「カップ麺」と「冷や飯」。
これをどう料理するか。
俺が水を飲むと、フワリが現れてマシロの頭上を飛び回る。彼女の今日一日のストレスを吸い取りながら、脳内にレシピを送信してきた。
『対象、疲労困憊。推奨、炭水化物×炭水化物の暴力』
了解だ。
俺はカップ麺の中身をジップロックに移し、麺棒で粉々に砕く。
フライパンに油を熱し、溶き卵を投入。半熟になったところで冷や飯を加え、パラパラになるまで炒める。
そこに、砕いた麺と付属の粉末スープを投入。
ジャーッ! という音と共に、食欲をそそるジャンキーな香りが立ち昇る。
仕上げに、ごま油をひと回し。
完成、『深夜の背徳・カップ麺チャーハン~謎肉増し増し~』。
原価百円以下。調理時間三分。栄養バランスなど知ったことではない、ただ美味いだけの塊だ。
「……できたぞ」
俺が皿を差し出すと、マシロは眼鏡の奥の瞳を輝かせた。
「すごい……! 黄金色に輝いてる……!」
いや、ただの炒めた飯だ。
だが、彼女にとっては違うらしい。
スプーンで山盛りに掬い、口へと運ぶ。
ハフハフと熱さを堪えながら咀嚼すると、マシロの表情がとろけた。
「んんぅ……ッ!」
カリカリになった麺の食感と、スープの濃い味がご飯一粒一粒に染み渡っている。卵のまろやかさが全体を包み込み、ごま油の香りが鼻腔を抜ける。
フワリの力が作用し、彼女の脳内で「アンチコメント」や「プレッシャー」が弾け飛ぶ。
「なにこれ……複雑なスパイスの香りと、計算し尽くされた食感のハーモニー……カズマくん、天才なの?」
「ただのカップ麺だ」
「嘘よ! 有名店のチャーハンよりずっと美味しいもん!」
彼女は夢中でスプーンを動かし続ける。
その横でフワリが、マシロから抜け出た黒い靄をパクパクと食べていた。
食べ終わる頃には、彼女の顔色はすっかり良くなり、憑き物が落ちたような穏やかな表情になっていた。
「……ふぅ。生き返ったぁ」
マシロは満足げに腹をさすり、俺のベッドにゴロンと横になる。
「カズマくんの部屋、落ち着く匂いがする。……帰りたくないなぁ」
無自覚な殺し文句を吐きながら、彼女は俺の枕に顔を埋めた。
完全に餌付けされている。
俺はため息をつきつつ、彼女が寝落ちしないよう、冷たいお茶を淹れ直した。




