【第2章】【第1項】翌日から深夜になると俺の部屋に学校のアイドルが降臨し、すっぴん眼鏡に部屋着という無防備すぎる姿で餌付けされに来るようになった
第2章 秘密の通い妻とギャップ
第1項 翌日から深夜になると俺の部屋に学校のアイドルが降臨し、すっぴん眼鏡に部屋着という無防備すぎる姿で餌付けされに来るようになった
翌日から、俺の平穏な日常は音を立てて崩れ去った。
深夜一時。
いつものように晩酌を始めようとすると、玄関のチャイムが控えめに鳴る。
「……カズマくん、起きてる?」
ドアを開けると、そこに立っていたのは白雪マシロだった。
だが、学校で見かける完璧なアイドルの姿ではない。
ぶかぶかのパーカーに、ゆるいスウェットパンツ。髪は無造作に束ねられ、顔には黒縁眼鏡がかかっている。
すっぴんだ。
俺が呆気にとられていると、彼女はもじもじしながらコンビニ袋を差し出してきた。
「えっと、その……お腹すいちゃって。これ、食材」
中にはカップ麺と、冷や飯のおにぎりが二つ。
「……あの、昨日のアレは一度きりのアクシデントだと思ってたんですが」
「だ、だって! あれから家のご飯が味がしなくて……!」
マシロは必死の形相で訴えてくる。
「カズマくんのご飯を食べないと、手が震えるの。ほら見て」
彼女が差し出した手は確かに微かに震えていたが、それは空腹による低血糖の症状に見えなくもない。
俺の肩でフワリがまたもや興奮し始めた。マシロから漂う「今日も怒られた」「SNSで叩かれた」という負のオーラを感知し、よだれを垂らさんばかりに待ち構えている。
どうやら、俺の部屋は彼女にとっての避難所、あるいは給油所になってしまったらしい。
「……わかりましたよ。でも、条件があります」
「うん、なんでも聞く!」
「学校では他人のフリをすること。俺みたいな陰キャと関わると、白雪さんの評判に関わりますから」
「わかった。絶対秘密ね」
彼女は食い気味に頷き、まるで自分の家のようにズカズカと上がり込んできた。
こうして、奇妙な二重生活が始まった。
学校では一切関わりのない他人。けれど深夜だけは、俺の狭いワンルームで肩を並べてジャンクフードを啜る共犯者。
マシロは眼鏡の位置を直しながら、俺のベッドに腰掛ける。そのあまりに無防備な姿に、俺は目のやり場に困りつつ、キッチンへと向かった。




