ー【第4項】一口食べた瞬間に理性が決壊した白雪さんは、俺の手を握り締め、潤んだ瞳で「こんな体にした責任をとって」と無自覚に迫ってくるのだった
第4項 一口食べた瞬間に理性が決壊した白雪さんは、俺の手を握り締め、潤んだ瞳で「こんな体にした責任をとって」と無自覚に迫ってくるのだった
マシロは意を決したように、ちくわを一切れ口に運んだ。
カリッ。
焦げたチーズの小気味よい音が響く。
その瞬間、彼女の瞳孔が開き、動きが止まった。
口の中に広がるのは、焼けたマヨネーズの酸味とコク、チーズの濃厚な旨味、そしてちくわのプリプリとした弾力。七味のピリッとした辛さがアクセントになり、破壊的な美味となって脳髄を直撃する。
「――――んっ!!」
マシロの口から、艶っぽい吐息が漏れた。
フワリの力が発動する。
彼女を縛り付けていた「アイドルの重圧」「父親の監視」「世間の目」。それら全てが、咀嚼するたびに霧散していく。
残るのは、純粋な「食」の悦びだけ。
生きていて良かった。食べていて良かった。そんな根源的な幸福感が、彼女の全身を駆け巡る。
「はふっ、んんっ……! おいしい、おいしいよぉ……!」
もはや彼女に、高嶺の花の面影はなかった。
涙目でちくわを頬張り、指についたチーズまで舐めとる。その姿は、ただひたすらに生を貪る小動物のようだった。
あっという間に皿は空になった。
マシロは呆然と天井を見上げ、浅い呼吸を繰り返している。それはまるで、長い苦行から解放された修行僧のようでもあり、あるいは初めての快楽を知ってしまった少女のようでもあった。
俺は新しい炭酸水を開け、彼女に差し出した。
「落ち着きましたか? 雨も小降りになったし、そろそろ……」
帰ってもらおうとした、その時だ。
マシロがガバッと身を起こし、俺の手首を両手で掴んだ。
その力は強く、手は熱かった。
「……カズマくん」
彼女は潤んだ瞳で俺を見つめ、熱っぽい吐息交じりにこう言った。
「どうしてくれるの? 私、こんな味知っちゃったら……もう元の食事に戻れない」
「はあ」
「カズマくんのご飯がないと、震えが止まらない体になっちゃったかもしれない」
彼女は頬を染め、とんでもないことを口走る。
「責任、とってくれるよね?」
俺の肩で、満腹になったフワリが「げふっ」とゲップをしたような気がした。
こうして、クラスの空気モブである俺と、学校一の美少女アイドルによる、秘密の餌付け生活が幕を開けてしまったのだった。




