【第4章】【第1項】黒塗りの高級車がアパート前に停まり、和服の厳格な父親が「娘をたぶらかした罪」を問いに現れた
第4章 ラスボス(父)襲来と和解
第1項 黒塗りの高級車がアパート前に停まり、和服の厳格な父親が「娘をたぶらかした罪」を問いに現れた
その日は、不穏なほどの晴天だった。
俺、九条カズマのアパートの前に、見慣れない黒塗りの高級車が停まっていた。
近所の主婦たちが窓からこっそりと様子を窺う中、後部座席から降りてきたのは、和服を着た白髪の初老の男性だった。
鋭い眼光。背筋の伸びた立ち姿。纏う空気だけで、ただ者ではないことがわかる。
俺が買い物袋を片手に呆然としていると、男性が俺を睨みつけた。
「……貴様か。九条カズマというのは」
声は低いが、腹の底に響くような威圧感があった。
俺は直感した。
ラスボスだ。
白雪マシロの父親であり、伝統芸能の家元にして、美食家としても名高い白雪厳格氏。
誕生パーティーでの一件が噂になり、ついに本丸が動き出したのだ。
「娘をたぶらかし、下賤な餌を与えているのは貴様かと聞いている!」
怒号と共に、俺は首根っこを掴まれ、自室へと連行された。
狭いワンルームに、家元とSPが二人。そして、連絡を受けて飛んできたマシロが、青い顔で立ち尽くしている。
地獄絵図だ。
「お父様、やめて! カズマくんは悪くないの!」
マシロが俺を庇うように前に出る。
「黙りなさい! お前が最近、深夜に抜け出していることは知っていた。まさかこんな男の元で、ジャンクフードなどという毒物を摂取していたとは……!」
厳格氏は机を叩きつけた。
「白雪の家に泥を塗る気か! 即刻、連れ戻す。二度とこの男と関わることは許さん!」
マシロは泣きながら首を振った。
「嫌! カズマくんのご飯じゃなきゃ嫌なの! お父様の用意する精進料理なんて、もう味がしない!」
「なっ……!?」
親子の断絶が決定的になった瞬間だった。
俺は震える手で、冷蔵庫から気付け用のコーラを取り出した。
このままでは、マシロが連れ去られ、俺も社会的に抹殺される。
何か、打開策はないのか。
俺はプシュッとプルタブを開け、一気に煽った。
炭酸の刺激が喉を焼く。
その時、俺の肩にいつもの重みを感じた。
フワリだ。




