ー【第3項】一口食べた瞬間、金持ちたちの舌はジャンクフードの暴力的な旨味に屈服し、会場は一転してカズマを崇める宗教施設と化した
第3項 一口食べた瞬間、金持ちたちの舌はジャンクフードの暴力的な旨味に屈服し、会場は一転してカズマを崇める宗教施設と化した
一人の男子が、ガレットを口に放り込んだ。
カリッ。ザクッ。
ポテトチップスの食感が残る表面と、卵液を吸ってモチモチになった内側。そのコントラストが絶妙なハーモニーを奏でる。
噛むほどにコンビーフの塩気と旨味が染み出し、トリュフの芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。
「――――ッ!?」
男子の目がカッと見開かれた。
「う、美味ぇえええええ!!」
その絶叫が合図だった。
周囲の人間も次々とガレットに飛びつく。
「嘘でしょ!? これポテチなの!? 信じられないくらい高級な味がする!」
「サクサクなのに中はトロトロ……! この食感、計算し尽くされてる!」
「コンビーフがまるで熟成肉みたいだ……!」
会場は興奮の坩堝と化した。
フワリの力が作用し、彼らの「空腹」という最高のスパイスと相まって、料理の味は何倍にも増幅されていた。
主役のリナも、涙目でガレットを頬張っている。
「おいしい……! こんなの初めて食べた……! ありがとう、マシロの連れてきた人!」
マシロは得意げに胸を張り、俺の背中をバンと叩いた。
「でしょ? 彼よ。私の……専属シェフなの」
その一言に、会場がどよめいた。
「専属シェフ!? 白雪さんすげえ!」
「九条くんって、ただの地味メンじゃなかったのかよ!」
「神だ……九条神だ……!」
俺は呆然と立ち尽くしていた。
いや、ただポテチと卵を混ぜて焼いただけなんだが。
フワリが俺の頭上で、満足げにゲップをしている。
どうやら俺は、無自覚のうちにこの場の救世主となってしまったらしい。




