ー【第2項】キッチンにあるのは乾き物と調味料だけだったが、フワリが俺のプレッシャーを食らって『ポテトチップスとコンビーフのガレット』という悪魔的レシピを授けてきた
第2項 キッチンにあるのは乾き物と調味料だけだったが、フワリが俺のプレッシャーを食らって『ポテトチップスとコンビーフのガレット』という悪魔的レシピを授けてきた
俺は渋々ながら、会場の奥にあるキッチンへと向かった。
広々としたシステムキッチンだが、食材らしい食材は何もなかった。
あるのは、パーティー用に大量に買い込まれたスナック菓子(ポテトチップス、柿の種など)、缶詰(コンビーフ、オイルサーディン)、そして冷蔵庫にあった卵と調味料のみ。
これで数十人分の腹を満たす料理を作れと?
無理ゲーだ。
俺はとりあえず水を飲み、深呼吸をした。
その瞬間、フワリが現れた。
会場に充満する「失望感」「空腹のイライラ」「主役の悲しみ」。それら負の感情を、フワリは掃除機のように吸い込んでいく。
『――緊急事態。対象多数。推奨レシピ、ジャンクフードの再構築』
脳内にイメージが奔流となって流れ込む。
俺の意識が切り替わる。
雑音は消え、目の前の「食材」だけが鮮明に浮かび上がった。
俺は無言でポテトチップスの大袋を手に取り、開封せずに中身を粉々に砕き始めた。
ボウルに卵を割り入れ、砕いたポテトチップス、ほぐしたコンビーフを投入。塩胡椒、乾燥ハーブを加え、全体を混ぜ合わせる。
フライパンに多めのオリーブオイルを熱し、生地を流し込む。
ジューッ!!
激しい音と共に、香ばしい匂いが立ち昇る。
ポテトの揚げ油の匂い、コンビーフの肉々しい香り、焦げた卵の風味。それらが混然一体となり、暴力的なまでの食欲を刺激する。
仕上げに、マシロが持参していた(なぜ持っている?)トリュフ塩をパラリ。
完成、『ポテトチップスとコンビーフの即席ガレット・トリュフ塩風味』。
見た目は厚焼きのスペイン風オムレツ。だが中身は、カロリーと塩分の結晶体だ。
俺はそれを一口大に切り分け、大皿に盛り付けた。
「……お待ちどうさま」
俺が料理を運び出すと、会場の空気が一変した。
全員の視線が、湯気を立てる皿に釘付けになる。
「なんだこれ……? こんがり焼けてて、美味そう……」
「でも材料、ポテチだろ? 貧乏くさくないか?」
半信半疑の陽キャたちが、恐る恐る手を伸ばす。




