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第9話 始まり9

 予想外に敵が次から次へとわき出る。ふと先の猩猩殿の言葉が想い出される。一宿一飯の恩義とか言っていた。ということは、宿、といっても物置同然であったが、あれも提供されたのかもしれぬ。つまり、俺たちは他のところに現れ、あの物置に案内されたと。恐らくここはごろつきどものアジトの中心近く。で、俺はその間、ずっと眠っていたと。


 猩猩殿の奮闘振りは相変わらずであるが、敵が多勢な分、俺たちを狙う奴らも増える。そうなったら万事休すなんてことはないのだが、ただ、対処に苦労するところもあった。


 加えて、ペロの奴が恐いのか、何かと俺にしがみつく。それが邪魔でしょうがない。さっきの合点承知との台詞はどこに行ったんだ。そんな中、俺は少しずつ、コツをつかみ始めていた。この体を使うコツだ。大きく二つ。


 一つは地道なもの。あんまり飛んだり跳ねたりせずに、なるべく地面に足をつけておいた方が良い。この体は並外れた脚力があるらしく、それゆえ、ついつい飛んだり跳ねたりをやってしまうのだが、それをやると、当然ながら空中では態勢の変更に限界があり、想わぬ危機に直面することもたびたび。足が地についておる限り、加速減速の自由度は大きく、少なくともごろつきども相手では遅れを取ることはない。


 もう一つはチートっぽい。見なくても敵の動きが何となく分かるのだ。俺を殴ろうとしたり蹴ろうとしたりする動きが。あくまでおぼろに把握できるに過ぎないのだが、俺のスピードと連動させれば、十分役に立つ。


 他方、猩猩殿の攻撃力は桁外れであり、新手を次々に粉砕して行く。


「あっ。それは、駄目な奴」想わず、そんな言葉が俺の口を出る。ごろつきどもは、さすがに素手では無理と判断したのだろう。武器を構えて、彼女を囲む。とはいえ、それにひるむはずもない。「ほら。当然、そうなる」が俺の次の台詞。敵の武器を奪うと、彼女はまさに万夫不当ばんぷふとうとなった。何せ、騎士様である。武器を持った方が何倍も強い。


 で、俺とペロはといえば、彼女の後方で付かず離れず奮闘した。その突進の庇護を受けつつ、その振るう武器で怪我をしないように。


 ただ、俺たちの方にも武器を持って襲いかかって来たので、俺の対処も限界に近いものになる。相手の攻撃をかわしつつ、殴り蹴る。素手の攻撃なら、腕や足でブロックできるのだが、それは止めといた方が良さそうだ。


 それでもしがみつこうとするペロは、ついに俺の外套をはぎ取ってしまう。


 ただ、俺はその瞬間はっきり分かった。俺の速度が数段上がったことを。そして想い至る。これはゲーム仕様だろうと。恐らくビキニ・アーマーが俺の正装であり、その姿でこそ俺は能力の最大を発揮できるのだろうと。


 武器を縦横無尽に振るい敵を圧倒する猩猩殿。他方、半チチ、半ケツ露出してようやく最大火力フルパワーの俺。勘弁してくれよ。クソ・ゲーがよ。ただ、こうなっては敵もあきらめたようで引き始める。


 そこに、今までの輩とは明らかに異なる者たちが現れた。重騎士あつらえの猩猩殿に比べれば、軽くとはいえ、全員が武器・防具で武装し、また、何より動きに統制があった。


「やばい。官軍か?」


 俺はそう叫ぶと、猩猩殿を後ろから羽交い締めにしようとする。ただ、想いはそれでも、彼女の上半身にしがみつけば、足もつかぬ。加えて、なぜか、ペロが俺にしがみついて来る。


 ごろつき相手とは訳が違う。下手に彼女が手を出し、十重二十重に囲まれるならば、それこそ万事休すになりかねぬ。それを恐れたのだったが。


「何をしておるのだ。うぬらは」


 彼女はそう言うと、俺をペロもろとも、つまんで引きはがす。どうやら、落ち着いておるらしい。そこに、


「ご苦労。盗賊どもを成敗しておる者たちがおると連絡が入り、急ぎ応援に駆けつけた次第。後は我らが引き継ごう。皆の者、この機に一網打尽にせよ」


 指揮官らしき男がそう言うと、彼の護衛であろうか、数人を残して、他の者たちはいくつかの隊に別れ、この場を離れた。


「ところで、そなたらの功を大将に報告したい。付いて来てくれるか」


 猩猩殿がこちらを見る。俺は相手が誰か確認する必要があると想い、問うと。


「丁原様だ。幷州へいしゅうを守っておられたが、今はここに駐屯されておる」


 俺は一端、猩猩殿にうなずいてみせてから、相手の方に向き直り、告げる。


「丁原様と会えるとすれば、滅多にない僥倖。是非、ご案内ください」


 後漢末期、俺が知るところの中央を守る大軍勢は二つ。一つは、まさにこの丁原が率いて北の遊牧勢に備える。もう一つは董卓のものであり、西の遊牧勢に備える。二者択一とすれば、丁原しかない。歴史上ではすぐに死に表舞台から消えるので、その人となりはあまり伝わっていない。董卓の方は、その行いから見る限り、権力欲にとりつかれた男とみなして問題なかろうから。

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