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第18話 呂布との試合4

 俺は再び呂布の足下への攻撃に取りかかる。その場面を想い描き、何度も。ただ、うまく行かなかった。先ほどの瞬間移動のことを想い返してみても、一度きりであったゆえ、どうであったか良く分からない。俺って、場面を想い描いていたのか。そうであったような気もするし、そうでなかった気もする。


 一つ明らかなのは、足下への攻撃と異なる動きであったことである。といって、それでは、今度は自分から転んでみるというのも阿呆な話だ。たとえ、うまく行って、瞬間移動ができたとしても、戦況が大きく好転する訳ではない。


 なので、俺はこれまで自分に禁じていたこと、上体への攻撃を許すことにした。それもまた足下への攻撃とは異なるゆえに、成功する可能性があった。


 そして俺がそうするもう一つの理由として、呂布の無尽蔵とも想えるスタミナがあった。俺の体はゲーム・キャラゆえであろう。未だ疲れを感じていない。ただ、相手は生身の体。まさに、化け物クラスというところか。


 俺は呂布と戦ってみたかったが、といって、この膠着状態は楽しくない。折角、瞬間移動ができると分かったのだ。今の俺としては、このチート・スキルの発動条件を明らかにするなどの研究・錬磨を重ねて、再びの手合わせをお願いしたい、そんな気持ちになっていた。


 そう、この勝負を終わらせる。決まれば勝ち、そうでなければ負け。上体への攻撃は、まさにそれにうってつけであった。


 俺の想い描くべきは、呂布の蹴り足に乗って、そこから更に上へと飛び上がる場面。曲芸師じみているが、瞬間移動ができれば、可能なはずである。


 こちらに軽くキック・フェイントを入れてのち、明らかに誘うが如く呂布が待ち構える。まさに、そのタイミングで俺は地を蹴る。


 そして、次の瞬間、俺は呂布の上体と同じ高さにいた。できた。ここで俺がなすべきは、呂布の頭を蹴り抜いた場面を想い描くこと。いや、その必要もないようだった。俺の片膝は呂布の頭の至近距離にあった。そこまでは想い描いていなかったはずだが、この体がそうすべきと判断し、勝手に動いたのだろうか。いずれにしろ、このまま蹴れば良い。


 ただ、頭を蹴ることの危険性に気付く。呂布は兜さえかぶっていない。それをこのゲーム・キャラの脚力で蹴っては、致命的なダメージを与える可能性があった。


 俺はむしろ勝手に蹴らないようにと、足へと意識を集中する。それが行き過ぎたのか、地に降りたときには態勢を崩し、よろめいたほど。


 俺は近距離での攻撃へ備えるため、腕でブロックする構えを取る。しかし、なにゆえか、呂布はあらぬ方向に走って行く。戻って来たときには、巨大な武器――方天画戟ほうてんがげきであろう――をたずさえ、顔は紅潮しておった。


「やめい。そこまでだ。呂布」


 クラン御前ベキの叫びが空気を切り裂くも、呂布が止まるそぶりはない。


 どうやら、完全に怒らせてしまったらしい。全力で来いとの台詞が想い出される。あのときから、カチンと来ておったのだろう。わざと蹴らなかったのがバレて、更にプライドを傷つけたか。俺に憧れの英雄を殺せというのかよ。しかも、戦場ではなく、あくまで試合だろう。こちとら、現代日本の倫理観で生きてるんだからよ。


 兵が囲んでおらねば、逃げられるかもしれぬ。そうでない以上、その囲みを抜けるのに手間取っておる間に背中を斬られることになる。


 まず、間合いをつぶすこと。先と同じ動きをなして――ただ、蹴り足ではなく、武器を振る腕に乗って――頭ではなく、肩あたりを蹴って呂布を転ばし、その隙に兵の間をすり抜ける。それができれば、今度は兵たちが呂布の追走の邪魔になる。


 俺はそのために地を蹴った。

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