第12話 丁原の陣にて2
「ところで、そなたら、随分と珍妙な格好をしておるな。よほどの遠方より来たのであろう。いずこの国より参った?」
確かに猩猩殿が身にまとう西洋風の重装騎兵の鎧兜は珍しかろうし、ペロの身につける着ぐるみとなれば、まさに、丁原様の言う通りである。そう想うも、なぜか丁原様は俺を見ておる。ふと下に目を落とすと、ひざまずいたゆえであろう、外套が左右に開き半チチの胸元が見えておった。
ただ、隠そうという気も起きぬ。俺って男ではなくなったようだが、かといって、女になった訳でもないのか? この姿を見られたからといって、恥ずかしさの感情に駆られるということはないようだった。もっとも、俺が女心の何を知っているんだと言われれば、それまでだが。そんなこんなの物想いに俺が囚われておるあいだに、
「モフモフ大帝国だよ」
ペロであった。むっ。スローライフ系ではないのか、意外なものを聞かされたと想いつつ、丁原様の反応をうかがうと、さも不可思議なものを見るといった感じでペロに視線を向けておる。この表情、どこかで見たことある。そう、隊長と一緒だ。そして、やはりおもむろに丁原様は視線をそらした。聞かなかったことにしたのだ。モフモフの言葉が理解できなかったのだろう。恐るべし、モフモフ。そして俺の心の叫びとは以下であった。
(正しいですぞ。丁原様。こやつが先ほど申したフリチンなどというのも、同じ扱いで十分です。なにとぞ、お願いいたしますぞ)
俺は口に出したい衝動に駆られつつも、何とか、こらえ、ただ、そう心に念じた。
「私は国というものには属しておりませぬ。正義と公正を重んじるガリア騎士団に属し、その筆頭を務めております。その領土は広い海に浮かぶ島です。この近くに海はあるのでしょうか。なければ遠方ということになりましょう」
「そうか。海とな。一度は見てみたいと想うておるが」
果たして、その未見の海の潮風に想いを馳せておるのか、しばし、黙す丁原様。
他方、俺はといえば、ファンタジーあるあるだな。実際の歴史上の存在を少し変えてというのは、恐らくマルタ騎士団あたりがネタ元なんだろう。そんな益体もないことを考えていたのだが。
「それでフリチンはどこぞより参った?」
なぜです。なぜ、聞かなかったことになされぬのですか。丁原様。俺は無念に駆られつつも、でも、ペロの言うフリチンって、俺の知るフリチンと違うのでは無いか、その一縷の希望の元に気を取り直し、俺は胸を張って答えることにする。魏志倭人伝が伝えるところの国名である。『三国志』の編纂年代は後漢末より少しくだって晋の時代。とはいえ、知っていても不思議ではない。転生先でいにしえの自国の名を知る人に出会う。そのロマンで俺からフリチンの悪夢をのぞきさってくれ。それをこそ願いつつ、
「倭国でござます」




