第10話 丁原の陣へと
丁原の陣へと赴くにおいて、俺たちは馬に乗るようにうながされる。大喜びなのはペロ。顔のニンマリが止まらない。ぺたぺたと手で触れるが、馬の方もいやがる風もない。まさにテイマーの本領発揮というところか。
他方、猩猩殿の方はといえば、お馬さんが可哀想すぎるというほかない状態であった。これらの地の馬は、元をたどればモンゴル高原の馬ということもあり、日本人の良く知るサラブレッドほどには大きくない。ポニー並みといっては、誇張が過ぎようが、要は小柄な馬に大柄のゴリラが乗る図を想像してもらえば良い。
それで、俺はといえば、そんな背の低い馬に乗るのにもおっかなびっくり。無理もあるまい。何せ乗ったことないのだ。馬の方も俺の恐れが伝わってか、少し興奮気味なので余計にやりにくい。鞍に尻をすえるためだけにも一苦労しておるのを見かねてか――何せ、乗ったはいいが、いきなり走り出されてはたまらない、どうやったら止まるかも知らぬのだ――ペロが近寄って来てくれた。
馬を触って落ち着かせてから、俺の尻を押し上げてくれる。
「えらいぞ。ペロ。それでこそ、仲間というものだ」
出会って以来、初めて俺はこいつに感謝した。そして俺が馬上にて態勢を整えたのと、ペロがペシッとばかりに馬の尻を叩いたのが同時。
「あれー」との女性の金切り声の悲鳴が響き渡り、それを聞いて俺も驚けば馬も驚き、更に馬足を速める始末。後で気付いたのだが、それは俺自身の声であった。
馬が落ち着きを取り戻し、何とか元のところに戻るを得たとき、待ってくれておる馬上の隊長に笑みが見える。俺としては、それがほほえましいとの想いから浮かんだものであり、あざけりでないことを望むばかりだ。馬に乗ったペロが近付いて来る。俺がこの野郎とばかりに頭を軽く――一応、相手は年下の女の子であるから、あくまで軽くである――手の平ではたこうとするが、余裕でかわされ、俺は危うく勢いのまま落ちそうになり、何とか馬首にしがみついて態勢を戻した。
「では、そろったようなので、いい加減、出発しましょうか」
隊長の声が呆れ果てたとの響きを帯びていると感じたのは、俺の考え過ぎであろうか。
護衛四人に前後をはさまれ、隊長とともに進む歩みはあくまでゆっくり。恐らく、俺に合わせてくれておるのだろう。
進むに連れて、家屋ではなく、畑が周囲に広がり始める。何度も溝を越える。農業用水のためのものであろう。確か渠というなかなか難しい字が当てられる。遠くに水車も見える。
そんな中、俺はなかなか現れてくれないなと焦れた気持ちになる。ウインドウである。俺自身のステータス・ウインドウはあきらめるとしても、これらの畑の生産量を示すものが現れても良いのでは、そう期待しておるのであるが、さっぱりであった。




