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第十章

「アストロノミカ計画の失敗から見れば、我々はいわゆる「巣鴨プリズン予備軍」と表現すべきなんだ。サンシャイン復興会がある限り。正直、あの鵠兆範呂を使った展示は、我々にとんでもないテロを仕掛けてくれたものだった。大打撃だよ」

 理九眞稀と名乗った男が自嘲するように言った。

 羽端ら三人は深夜に株式会社汽乃堂の取締役を呼び出し、目的地に向かう途中の池袋の住宅街にある路上の一画で彼の車を強引に止めて、おりて来たところを囲んでいた。

 離理の背後関係と株の譲渡を迫ると、彼はいきなりの独白のように吐いたのだ。

「何が言いたいわけ?」

 羽端は飲み干したπ9の空き缶を適当な方向に放り投げた。

「君たちの話は渡りに船でね。条件と事情は今のでわかっただろう?」

 スーツ姿の眞稀は落ち着いていた。

 この状況下で焦りの一つも見せないのは、元アストロノミカ計画に喰いついた会社の取締役になるだけのことはあった。  

「協力しようというのかい」

「汽乃日報の郁渡離裏は邪魔だ。あいつは俺たちを利用しようとしている。意図はわからないが」  

「何時から関係がある?」

 主に聞くのは羽端で、瀬樹は関心なさそうにしつつ、据わっためを辺りに配らせ、師施葉は相手が変な行動を起こそうとするとすぐに反応できるようにしていた。

「アストロノミカ計画に参加しようとした時に、ウチのグループの傘下に自ら入って来た会社だ。元々は、生体臓器の研究のための学術誌を発行していた会社社長だった」

「……その学術誌のころの離裏と面識は?」

「ない」

 眞稀は断言した。

 羽端は顎を掻いた。

 嘘だという雰囲気が微塵もなかった。

「どうして、取り込んだ?」

「上から声がかかった」

「どこの?」

「意端の上だ」

 三人の眼がそれぞれに光った。

 「意端」といえば、彼等デザイナー・ベイビーの施設を運営していたNPО法人の名前だった。

「意端と離裏の関係は?」

「元々、離裏とつながりがありそうな雰囲気だったな」

 施樹と師施葉は思いだしていた。

 あのイベントの時に現れた離裏の顔を。

 忘れるわけがない。

 施設に時々顔を出していた職員らしき女性だ。

「……離裏を呼んでもらいましょうか?」

 施樹のは有無を言わさない口調だった。

「株主会議でもするのか?」

 眞稀の冷静さは変わらない。

「そうだよ。だから呼んで」

 羽端が当然のような態度で続けた。   

「場所は?」

「汽乃堂会議室で良いんじゃないの?」

「……呆れたもんだ。で、君たちは私を極東裁判にでもかけるのかね?」

 眞稀は笑みすら浮かべていた。

「そうね。まだわからないかな? あなたの態度しだいだね」

 羽端の代わりに施樹がは宣言を下すように言う。

「あんたの焦点は、師舞と関係あるから今から対応考えて置いてね」

 羽端はタクシーを呼び、彼を連れて三人は汽乃堂本社に向かった。

 その時に、耶杜から連絡用のメッセージが来た。

 羽端は顔を上げて、眞稀を見た。

「……遁暮会の矛漕さんに連絡して良いかな?」

 眞稀は、一瞬だけ間を空けた。

「……つまりは?」

「あんたに協力するのと離裏を始末するの、耶杜って人の意思だってことになった」

 言うと返事も待たずに、羽端はチャンネルを開いた。

「良いだろう……。私は私でニアンズに用がある」 



 ランプが照らすログハウスのテーブルに、リラックスした風の少女とボーイッシュな少女の二人が目の前に付いていた。

 最初に話かけて来た少女がセリウ、ボーイッシュなほうがラウと名乗った。

 だがすでに羽端は知っていた。

「……で、探査衛星さんたちが俺に何の用事だ?」

 見下した態度そのものでニヤニヤしながら羽端は二人に切り出す。

「流石だなぁ」

 セリウが苦笑する。

「適格者ってやつかぁ」

 珍しいものを見るように、ラウが羽端に眼を釘付けにする。

「適格者?」

 羽端は眉を寄せる。

「ああ、あたしたち衛星の機能をフルに使いこなすデザイナー・ベイビーのことだよ。例えば、星製物とかをね。例えばあたしがこうと言えばこうなる、という風に」

 無意識で使い勝手に名前を付けていた羽端は、急に眼を据わらせた。

「……気に喰わねぇなぁ。まるでおまえらのために俺らがいるみたいじゃねぇか」

「持ちつ持たれつだよ」

 セリウは微笑むが、羽端の表情は和らがない。    

「それが気に喰わねぇんだよ。おまえらが居なけりゃ、こっちは何もできないみてぇじゃねぇかよ。大体なぁ、適格者とか偉そうだんだよ言い方が。まずおまえらありきじゃねぇかよ」

 尊大にテーブルに片足を乗っけて、言葉を飛ばすように吐く。

「事実なんだからしょうがないじゃん?」

 当然のようなラウだった。

 羽端は舌打ちする。

「だって、今、なんであんたがここにいるのかも、適格者だからだよ」

 応えるように鼻を鳴らし、ラウは続けた。

「まぁ、今回はこっちがお願いする番なんだけどねぇ。まぁ気にしないでよ」 

「気にするなじゃねぇよ! じゃあ、そういう態度取れよ」

「衛星が本体だからよく解んない、あたしー」

 ラウはケラケラ笑う。

「ああ、おまえらただの擬人化映像だったな」

羽端は、彼女らを面白げなラウを睨らむ。

「お腹減るし寝るけどね」

「システム数値結果だろ?」 

「それ言ったら、あんただってここに実体ないじゃん? 何も食べれないし、寝れない」

「人生それだけじゃないからな」

「死ぬよ、その人生?」

「実体ないから大丈夫だ」

「無いって、あるでしょうに」

 セリウが呆れたようにグラスを軽く傾ける。

「アレはずっと俺を閉じ込めてやがったからな。認めるわけがねぇ」

「それで衛星間に広がってくれちゃ、こっちが迷惑なんだよ。あんた一時、遡来乃ひな乗っ取ったでしょ?」

 吐き出すようにセリウが言う。

「おまえらが通路開けてくれたからじゃねぇか」

「あんたを捉えるための罠だよ。お陰でここに呼べた」

「嵌めたのかよ」

 苦々しそうな、羽端だった。

「それより、困ってる話がある」

 セリウはもう十分だとばかりに話題を変えようとグラスを置いた。

「……ハイハイ」

 面倒臭そうに、顎を浮かせる羽端。

「実は、あたしたちは本当は地球軌道に還ってくるはずではなかった」

「予定変更でもしたのか?」

「違う。勝手に戻された。いつの間にか、ここいたんだよ」

 セリウは溜め息まじりだった。

「勝手に……? どういうことだよ?」

 訝し気に羽端が聞く。

「多分、星製物のせいだと思う。計算と証言の結果だけどね」

 ラウはラウで忌々しいと言わんばかりだった。

「……待て、じゃあ俺は今、その星製物の影響圏内にいるってことか?」

 羽端にセリウは頷いた。

「あなたの場合は無意識だけがここにいるからどんな効果を得るのかわからないけど、九十七%の確率で相手がやろうと思えばやれる範囲内だね」

 彼女はどうだ、大人しくしろとばかりな淡々とした口調だった。

 次の意図するセリフを羽端は想像できた。

 だが疑問もある。

 不満もある。

 不満だらけだ。 

「つまりは、その星製物をどうにかしろと言うんだろ? つか、星製物はおまえら衛星網が造ってるんだからどうにかできねぇのかよ? あと、何のために還らされたんだ?」

 セリウは、息を吐いた。

「まずその通りなんだけど、星製物とその能力を我々が造っている点は、でもあたしたちにも影響あるの。自身たちだからこそなんだ。あと、何のために還らされたかだけど、それはあなたの方が詳しくわかるはず。いや、自分で知った方が納得できるでしょ?」

 羽端は値踏みするように、二人を見つめた。

 そして、ニヤリとした。

「ああ、俺のあの皮かむりの浮遊物ならどうにかするだろうよ」

 あざ笑うかのように羽端は言い切った。

 セリウはハッキリとそこ泥濘した憎しみがあるのを掴んだ。

 確認とも言えた。

 彼の無意識は自身を嫌い抜いて、もはやそのような表現では余りある程なのだ。

「あんたに頼んでいるんだよ。ぶっ壊してやってくれ」 

 改めて強調する。

 舐め切って相手にしていない風だった羽端が、二人を微かに値踏みをする眼になる。

「ホントにぶっ壊すぞ、全部?」

「望むところだよ」

 表情を変えずセリウは答え、ラウは楽し気な笑みをたたえる。

「へぇ……まぁやるとしたら、十日以内にやれるが」

 まだハッキリとはさせない羽端だが、セリウにもラウにも満足する反応は確かにあった。

「まぁ、タダでとは言わない。お土産もあげるよ。あんたが古深名だろう? 力の元は核だったよね? あたしたちがそっちを処理してあげる」

 羽端はジロリと睨んだ。

「キミ、恨んでるんだろう、デザイナー・ベイビーを造って勝手やった奴らを。あたしたちだよ。ついでに教えてあげるけど、主犯は離裏。彼女は自分の能力に飲み込まれてアストロノミカ計画を起こした。もちろん、星製物の発生はあたしたちにも責任もある。だから、死んであげる」

 ラウは笑顔のまま言った。




「……汽乃堂のすべてを任せてくれると言う話でしたので、この時間に来ました」

 スーツ姿で凛とした離裏は、会議室で眞稀に言った。

 会議室の机に一人ついていた彼は、じっと離裏を見つめる。

「鹿等入眞とか言ったか、キミが目を付けていた作家は」

「鵠兆範呂、ですか?」

 眞稀は頷いた。   

「彼に会いたい」

「……構いませんが。急な話になりますね。起きていればいいのですが」

 彼女は携帯通信機を弄ると、顔を上げた。

「こちらに来るとのことです」

 眞稀は頷いた。

「ところで君は余程、その鵠兆範呂を気に入っているようだが、何故だね?」

「彼との出会いは、同じ施設でした。彼は昔から多大なる才能を持っていました。私にはその時代は非常に苦しみを伴う頃のことでして。彼の開花前だったとはいえ、その才能的魅力に救われたものです」

「なるほど。惚れてはいないのかね?」

 離裏は無表情なまま答えなかった。

 眞稀は苦笑する。

「これは立ち入ったことを聞いたな。失礼した」  

だが、離裏は固まったように立ったままだった。

「……どいしたのかね?」 

 離裏は急に眼だけの笑顔になった。

「いえ、意端の意志でしたから」

「……なるほど。君はやはり意端の者か。遁暮会は違うと見たが」

 笑顔が再びかえって来る。

「それと何か関係があるのでしょうか?」

「ないな。ただ、あのNPОがここまで力を持つとは、人脈とはいえ怖いものだ」

「そうですか。ところで本題に入るのは何時ですか?」

「客人が来てからだ。座って待っていたまえ」

 三十分も無言の時間が過ぎると、室外に足音が聞こえ、ドアがノックされた。

「入り給え」

 眞稀が言う。

 ゆっくりと扉が開き、ダークグレーのスーツを着た、長身で髪を後ろに撫でつけた青年が現れた。

「……入眞、この人はここの元取締役で理九眞稀さん。あなたに会いたかったんですって」

「やたらと喧伝してくれるのは、『鵠兆範呂』のほうにしてもらいたいな」

 机の前まで来て、苦言めいた口調を放つ。

「あなたと意端のおかげでアストロノミカ計画は頓挫してサンシャイン復興会が発足するわ」

 彼は、離裏の言葉を待たず、ポケットから仮面を取り出した。

「ここまでくれば、満足だ。理九眞稀とか言ったか。あんたが離裏を増長させたなら、ついでだ」

 離裏は眉をしかめた。

「どうしたの?」

「鹿等入眞はあんたの能力でがんじがらめだった。だが、『鵠兆範呂』は違う」

 仮面をつけた入眞が楽しそうに言う。

 姿が二重に重なった。

 仮面のモノと、入眞と。  

「何年待ったか! おれはな、離裏、おまえを殺してやりたくて仕方がなかったんだよ!!」

 鵠兆範呂がぶちまけるように喜々として叫んだ。

「入眞!?」

 離裏は信じられないという表情になる。

 彼は彼女の能力である、「魅了」によって思うままに操れたはずだ。

 だが、彼はそのままにして別の存在として現れた鵠兆範呂として以前現れた仮面の男が、叫んだのだ。

「幼心にも人を切り刻ざむ作業を延々とさせられていた者の気持ちはわかるか!? 切り刻めば切り刻むほどそれが快楽になり、自己嫌悪とシーソーゲームをしながら切り刻まねばならなくなった者の!! 散々利用しやがって! どれほどおまえを切り刻むことを夢見て来たか!!」

 だが、離裏は無表情ともいえる笑みをたたえていた。

 何か変だ。

 ドアが破られた。

 羽端ら三人が飛び込んでくる。

「鵠兆範呂!!」

 施樹が叫んだ。

 入眞の姿には、彼等に見覚えがあった。

 施設の意端で一緒だった男だ。

「あんたか!!」

 彼女が憎々し気に声を上げる。

 師施葉が刀を抜き、一気に跳びかかる。

 刀は鵠兆範呂の手が防いだと思うと、あっという間に錆びだらけになり、途中から折れた。

 「物質変化を先取り」する能力。

 リヴォルバーを構えた羽端は、迷うことなく眞稀と離裏に弾丸を見舞った。

 入眞と鵠兆範呂の目の前で、二人は血まみれになって絶叫した。

「……なんだ、と!?」

 鵠兆範呂は絶句した。

 今この瞬間に、彼は自分の復讐をしようとしていた相手を失ったのだ。

 信じられないとばかりに眼を見開き、死体を喰い入るように見つめる。

「……おい、またよ、ふざけるな……」

「入眞、おまえだったとはね。歩道橋ぶりだね」

 羽端は、シリンダ―の薬莢を素早く捨てて、新たな弾に入れ替えた。

 離裏が死んで、入眞は彼女の能力から自由になった。

 お陰で、彼女しか見えていなかった意識から、全てを思い出した。

 羽端も施樹も師施葉も、何もかも。

 今まで、外界の記憶は遮断されていたのだ。

 入眞は、苦しみに満ちたような顔で、羽端等を睨んだ。

「貴様ら!」

 どっちにしろ、己の仇を奪われたことに変わらない。

 彼の怒りは、羽端に向かった。

 仮面のモノの能力を振るう。

 羽端自身の物質変化を先取りするのだ。

 その途端、羽端の姿が描き消えた。

「羽端!」

 施樹と師施葉が思わず彼の名を呼ぶ。

 次の瞬間、大鎌を持った殺人鬼が立っていた。

 全員が驚愕する。

 どういうことだ!?

「……よぉ、入眞。待たせたまぁ、今日で十日目だ」

 頭巾がずり落ち、羽端の顔が現れる。

 セリウとラウのところにいた無意識が、羽端の元に戻ってきたのだ。

 それも本体とは乖離無しに。

 入眞は歩道橋の時にも汽乃日報芸術祭の場所にも現れたのを思いだしていた。さらに、。彼等が意端にいた時の知人だったことも。      

「これはルールだ入眞。だが、意端の仲間たちを殺してくれたお返しとして、死をくれてやる」

 羽端は言って大鎌を振るった。

 入眞の首が切断され、頭部が高く跳んだ。

 身体がゆっくりと人形のように倒れ、間をおいて切断口から血が噴き出す。

 仮面のモノは同時に消えていた。

 会議室には、羽端達だけが残された。

「羽端?」

 昔、手に負えない暴れ者だった頃の羽端の雰囲気を気にして、施樹は声をかけた。

「ああ、施樹、気にするな。俺はすぐにでもまた無意識を叩き潰す。入眞のお手伝いしていたとかいうの、絶対に思いだしたくないし腹が立って仕方がない」

 離裏の死体を見下ろしながら、彼は言った。 

「うん、そうだね。思いだすことなんてないよ、そんなの」

 施樹は胸をなでおろしながら、同意する。

「……手柄持っていかれちまったなぁ」

 師施葉が珍しくぼやくような声を出した。

「さて、総仕上げだ」

 羽端は笑った。



 耶杜は、羽端からの報告を受けていた。

「つまり、『古深名』は、おまえの無意識がネットワーク上に造ったものだった、というのか?」

 流石に驚きを隠せないでスクリーンの相手を見つめていた。

『……遡来乃ひなが逃げ道になって、衛星上に誕生した都市伝説の一つですね。だから一時、彼女が古深名に乗っ取られる原因にもなった。因みに古深名の他を排除する方法の根拠の元は、核だったようです。ニアンズと話した結果、無力化に成功しましたが』

 耶杜は、深く息を吐いた。

「……師舞は?」

 気分を変えるように、改めて尋ねる。

『さっき、東京の大久保に帰還しました。宇宙にまで逃げて行ってたらしいです』

 呆れた話だ。

「すぐこっちと連絡を取るように言ってくれ」

『はい』

 耶杜は大宮から東京に向けて出発した。

 赤羽まで来ると、瀬鹿の屋敷に入る。

 デザイナー・ベイビーが出迎え、彼を通して案内した。

 昼から夕方になる時間だった。

 瀬鹿は相変らず、ウィスキーをテーブルに置いて、ソファに座っていた。

「おや、耶杜。突然、どうしたのかね?」

 耶杜は腰から手錠を取り出した。

「為離鹿瀬、あんたを鹿等入眞殺害容疑で逮捕する」

 飲み込めなかったあいだに、瀬鹿は手首に手錠を枷られた。 

「……ほぅ。貴様、裏切ったか」

「ああ。遁暮会がこっちについた。あんたのフィクサー人生も、これで終わりだ」

 瀬鹿は、悔し気に目を見開きながら、無理やり苦笑した。

「たかが犬が。やってくれたじゃないか」

「犬は噛めるからな。舐めてもらっちゃ困る」

 耶杜はそれだけ言うと、瀬鹿を無理やり車まで引きづって押し込めた。




『ハイホ~、遡来乃ひなだよ~! 今回は、元アストロノミカ計画からサンシャイン復興会と鵠兆範呂のお話をするぞえ!』

 メタバースに、少女が現れる。

 汽乃日報芸術祭のおかげで視聴者が増えていた。

 彼等は離裏の能力で一時、鵠兆範呂の虜となっていたが、彼女が死んだためにその記憶だけが残り、何があったのかと殺到したのだ。

『元アストロノミカ計画は瓦解してサンシャイン復興会になったんだけど、主な参加者だった鵠兆範呂が急な死亡で、性格が変わったのよねぇ。彼が関係していた組織は、巣鴨プリズン系列のネオ右翼下にあったの。もう消滅したけど。そのおかげで、サンシャイン復興会は、新たな道を進みます! ただ問題は、元アストロノミカ計画に関わった衛星だけど、これはもうすぐ廃棄されるから安心して。ぺガに行っていたはずだったのに、鵠兆範呂のせいで地球周回圏に無理矢理還ってこさせられたんだって。大鎌の殺人鬼をみんな見たかもしれないけど、直接見たのは鵠兆範呂。だから彼は伝説通りに死んじゃったのよ』

 鵠兆範呂が死んだ。

 視聴者が薄い関心を持ったのはそれだけで、あとはどうでも良かった。

 同期視聴者数がどんどん減って、いつもの一桁台に戻っていた。

『じゃあまた、なにかビックリするような都市伝説があったら伝えるね~!! 特に大鎌の殺人鬼の件で!』

 ライブは終わり、遡来乃ひなの姿は視聴者の前から消えた。




 長野県警が合同捜査本部の会見を開き、失踪した正露堵の殺害者として、維庶飛輝(36)を逮捕送検したと発表した。警察はホテルグループ燈鹿総務次の渡師舞の証言の元、維庶飛輝容疑者を池袋の潜伏先で発見、逮捕していた。




「終ったね」

 テーブルを照らしたランプの下、セリウは疲れたように言った。

 目の前に並んだ料理を口にしながら、ラウは微笑む。

「なーに、こうしなきゃ、核をどう処理するの? あたしたちには代わりが幾らでもいるんだ。時期が早まっただけだよ」

 明るく言う。

 セリウは頷いた。

「たまには何か飲まない?」

「そうだねぇ、ギムレットで」

 頼まれたセリウはキッチンからタンブラーを持ってくる。

 今日のセリウはスコッチウィスキーだ。

「つか、時間を先取りされた分の任務は達成してるよ」

「それもそうだね」

 セリウは噴き出してしまった。

 自分がこれ程感傷的になるとは思ってはいなかったのだ。

「じゃあ、任務成功を祝って」

 ラウがタンブラーを向けた。

 セリウがグラスを当てる。

「乾杯」

 二つの探査衛星、通称「ニアンズ」は、ゆっくりと大気圏内に落下していった。

 同時に、各国の核兵器発射装置とのリンクが一本一本、途切れて行った。




 羽端は、元のぼんやりとした青年に戻っていた。

 サンシャインシティの近くに集まった三人は、彼を中心として星成機をつくっていた。

 各所に展示させられていた、元意端施設出身者を使った鵠兆範呂の作成物を集め、全てを中にいれて、衛星を打ち上げたのだ。

 元アストロノミカ計画とともに誕生した彼等は、計画完全消滅により、自由にはなった。

 だが、それは放逐も意味する。

 しかし、星を一つ上げることにより、全てを払拭しようとした。

 せめて、彼等のデータが衛星間に浸透し、またロゼッタ・ストーンという情報塊で地上に降り注いて世界中が気付くようにと。







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