第五十六話 訓練で性能確認→榊友斗視点→体育館フィールド
エデュケーター・エミリアが笑顔で簡易リンクフィールドを貼る。
簡易リンクフィールドに足を踏み入れた瞬間、電子空間の空気が肌をピリッと刺した。
新しい装備——ツインコード・アームズ。
腕輪の表面が微かに脈動していて、まるで早く試せと催促してくるみたいだった。
「友斗、早く使う!」
いつもはクールなカスミが隣できらきらした目を向けてくる。
いや、最近は結構感情出してるよな、カスミ。
「でも、無茶したら、つける」
白い首輪をちらつかせながらニヤニヤするのはやめてくれ。
絶対付けないからな。しかも首輪が二つになっているのは見ないことにした。
友斗はこめかみをトントンと叩き、ナチュラル・ハッキングをツインコード・アームズにする。
《脳内インターフェース接続完了。リンク:ツインコード・アームズ 第一制御層》
友斗はいつものナチュラル・ハッキングの要領でツインコード・アームズに接続する。
『友斗さん、普通にホログラム端末を使う要領で使えますよ』
「お、そうか。ついつい、ナチュラル・ハッキングを使っちまった」
リミナが気の利いた発言をしてくれる。
友斗の腕輪がデータ化されると白く眩い光と、漆黒の闇が生まれ、白い盾と黒い剣となる。
ヴァイスパリィとシュバルツラッシュは技名のつもりで使ってたからな。
なんかいい名前ないかな?
隣にいたレオに話しかける。
「レオ、この白い盾と黒い剣の新しい名前ないかな?」
「む? ヴァイスパリィとシュバルツラッシュはダメなのか?」
「あれは技名だからな」
「むう。ならば、ヴァイスガードとシュバルツブレイドはどうだ?」
「お、それいいな。頂き」
こうして名前はヴァイスガードとシュバルツブレイドに決まる。
それにしても武器を作るときは大概脳に負担がめちゃくちゃかかるんだが、それがないのはいいな。
慣れたら新しい武器も作り出せるかも?
『友斗さん、新しい武器を作るのは許可できません。先ほどの戦闘時のデータを参照しましたが、脳内にかかる負担が異次元過ぎます。データとしては普通なら何らかの後遺症を負ってもおかしくないほどです』
「嫌だ。治療ポッドに行けば治るだろう?」
『それは絶対ダメです。治療ポッドでも直せない脳細胞は存在します。友斗さん、これは貴方の自由を守るために言っているのです』
「ちっ、それなら仕方ねえか」
『はい。無茶なコードの書き換えは許可できません』
リミナはかなり神経質だな。まあ仕方ないと言えば仕方ないか。俺も毎回倒れてるからカスミが心配するしな。
「リミナは何ができる?」
『はい。私はナチュラル・ハッキングの負荷監視とマルチ・ナチュラル・ハッキングのリスク制御を担っています。マルチスレッド・スタビライザーは、複数の敵AIに同時にナチュラル・ハッキングを仕掛けられます。笠木カイにハッキングと武器の出力の同時攻撃をした際、友斗さんは限界を超えていました。このシステムを使えば、より多くの対象に安全に――といっても脳への負担は甚大ですが――ハッキングできます。しかし、これはあまりお勧めできません。更にお仲間のリンク率も可視化してお伝え出来ます。お役に立てるかと存じます』
「うーん。何か新しいことはできないのか?」
『私は友斗さんの健康と安全を第一に考えています。勿論他にもできることはございますが、これ以上お伝えするとそれをする可能性があるのでお伝え出来ません』
「ヴァイスガードとシュバルツブレイドは新機能はないのか?」
『白いヴァイスガードは物理+電子障壁としての機能があります。黒いシュバルツブレイドは電子体への干渉も可能です』
お、これは良いな。いつも生身で戦う時に手札がなくて困ってたけどツインコード・アームズのおかげで手札が増えそうだ。
隣のレオはグラビティ・ウェーブを連続で打つ試みをしていた。
「そっちもかなり良さそうだな」
「友斗、これは良いぞ。出力もかなり自由に出せる。鎧の隙間も守ってくれるし、戦いに幅が出る」
ルナはディアブロ・シャドウベールを試していた。
「ルナ、そっちはどうだ?」
「これは良いですわね。ステルス機能は勿論、残像やフェイク、足音や足跡も自由自在に出せますわ」
ルナは黒いマントを身に纏い、消えたり、出たりしながら銃を撃つ仕草を見せる。
はにかんだ笑顔で撃つ仕草は結構可愛いな。
隣でむくれたカスミが俺の傍でエネルギーソードを剣舞してるけど、ぎりぎりで俺に当てようとしてないか⁉
「友斗、私もナビAIを得た」
「おう、まだどんなナビAIかは決まってないか?」
「私の戦闘パターンや思考パターンを学習させてる所。でもユノとリンクした時みたいな使い方は出来そう」
カスミは俺にだけとびっきちの笑顔を見せてくれるのがいいところだな。
カスミの頭をポンポンと撫でると蕩ける様な笑顔を見せる。
ちょっとよだれが垂れててだらしがないぞ。
「友斗、こっちも見る、であります! サブグリちゃんが可愛い、であります!」
呼ばれてユノの方を見ると、クラスの女子に撫でられまくってるサブグリちゃんの姿が。
「キュ~♡」
ヤバイ。この子可愛すぎ!
持ち帰るわ。家で飼うの!
クラスの女子に取られそうになってるぞ?
「キュ⁉」
ユノはサブグリちゃんを抱きしめる。
「サブグリちゃんは、ユノの相棒、であります! 皆には渡さない、であります!」
その姿に、友斗は笑う。
ユノも、仲間ができて嬉しそうだな。
「サブグリちゃんはどんな性能を持っているんだ?」
「今回のクラス別対抗戦で友斗が担った、無詠唱の電子魔法の威力を挙げてくれる、であります! 具体的には今まで中級魔法くらいの威力だったのを上級魔法まで引き上げてくれるイメージ、であります!」
「お~! それはいいな。俺とリンクしたらもっと威力が増えるか?」
「それはそう、であります!」
『友斗さん?』
「お、おう。しないよ、緊急事態以外はな」
『ジー』
さっきまで堅物だった、リミナがちょっと緩くなったな。
『私もたまにはジョークを交えます』
脳内で不機嫌そうな顔をする、リミナはちょっと面白い。
まあ光の玉だから顔はなくてイメージなんだけどな。
「友斗君、僕もナビAIとゴーグルをもらったよ」
「おう。ゴーグルはどういう性能なんだ?」
「実は僕のナチュラル・ハッキングを補佐してくれる能力があるみたいでね。フィールドのコードの流れがわかるんだ。色々なUIも出て、分析能力を上げてくれる効果があるみたいだよ」
そりゃいいな。ショウのナチュラル・ハッキングが強化されるなら最高だ。
だがショウは俺と同じナチュラル・ハッキングを使っているけど、俺と同じく難病だったのか、気になるな。
「それは――いや、友斗君には話そうか。実は僕のはナチュラル・ハッキングとはちょっと違うんだよ」
「どう違うんだ?」
「良いかい? 友斗君のナチュラル・ハッキングは脳内のナノマシンが自然と脳内機能を引き上げたおかげでそうなったんだ。だから友斗君のナチュラル・ハッキングはまだ進化する可能性がある」
「何だって?」
「その点、僕のナチュラル・ハッキングは友斗君の能力の模倣なんだ。まあここら辺は難しい話だからね。もっと違う時に話そうか」
すごい話を聞いちまったな。俺のナチュラル・ハッキングはまだ進化するのか。ショウのナチュラル・ハッキングとどう違うのか、もっと聞きたいが――。
まあ今度学園寮でゆっくり聞くか。
「友斗! お前のお陰で俺の斧を使うスタンスに強化された盾も加わったぞ!」
青井ユウタが嬉しそうに盾を叩く。
「拙者は分身が使えるようになったでござる!」
ブライが複数の残像を作り出す。
「おお、お前ら、めちゃくちゃ強化されてんじゃん」
友斗は二人の肩を叩く。
クラス全体が強くなってる。これなら、次の戦いも――
いやークラス別対抗戦勝ってよかったな!
今は五月だが、八月には夏休みに入るし、その時は何しようかな~。
その後は学園別対抗戦や学園祭もあるぞ!
楽しみだなあ!




