第五十三話 A07クラス対A01クラスの熱戦→榊友斗視点→現在→空島リンクフィールド
「ユノ! 俺の後ろに隠れろ!」
「はい! であります」
「レクト! 攻撃だ!」
「僕に任せてくれ!」
葉山レクトのナビAIアクトがデータのようなホログラムを纏った杖に変化する。
「電子の神よ。敵に裁きを与えたまえ! ライトニング!」
葉山レクトの杖からユノに向かって魔法陣が展開される。
一瞬魔法陣から雷光が煌めき、轟音とともにユノに向かって迸る。
それは友斗を貫いて、ユノに直撃するかと思われたが……。
友斗はこめかみをトントンと叩き終え、電子の記号と数字の羅列に潜り終えていた。
キラキラとした電子の世界から白色に煌めく片手盾と一対の漆黒の光を帯びた片手剣を作り出す。
「ヴァイスパリィからのシュバルツラッシュ!」
左手に装着した白い片手盾で雷光を一瞬でパリィ。雷光は白い盾に拒絶されて消える。
その後シュバルツを意味する黒い一閃を葉山レクトにお見舞いする。
シュバルツラッシュは黒い斬撃を纏い、空気を切り裂きながら葉山レクトに向かっていく。
「ちぃっ! カバーシールド!」
笠木カイはナビAIアイアンとリンクして巨大な両手盾を作り出し、スキルで葉山レクトに前に躍り出る。
「うおおおお!」
シュバルツラッシュと巨大な両手盾がぶつかり合い、笠木カイは後ずさりするものの防ぎきる。
開幕してからの一瞬の攻防に観客は沸き立ち、歓声が爆ぜる。
うおおお!
なんだ、あの白黒の盾と剣は!
ユノちゃんを狙うなんて卑怯だぞ~!
ナチュラル・ハッキング――! 何でもありかよ!
そうなのだ。リンクフィールドさえあれば、好きなスキルを持った武器を作り出せるのがナチュラル・ハッキングの強みだ。
A01クラスの面々は沈黙する。
『いきなり戦況が動いた~! A01クラスはユノ狙いで攻撃を仕掛けたが榊友斗は完全に防ぎ切った~!』
『あの白黒の盾と剣は何か他にもスキルがあるかもしれませんね』
「最初からユノを狙うのはお見通しだぜ」
「やり返す、であります!
ユノはコードを書き換えて魔法のような事象を生み出す電子魔法と言われる戦い方を得意としている。
ユノは片手に浮遊する本を生み出すと、ページが何枚もめくれる。
リンクフィールドの物理法則のルールを書き換え、巨大な炎を生み出す。
左手に豪炎を生み出して、笠木カイに向かって撃ちだす。
(“コード、書き換え完了。制御温度上限解除、であります!”)
「火遁豪火炎の電子魔法術! であります!」
その豪炎は笠木カイの盾をあぶり続ける。
A01クラスの二人のいる空島リンクフィールドの塔の上は豪炎に包まれる。
「僕に電子魔法勝負を挑むとはいい度胸だね!」
葉山レクトは詠唱は必要だが、電子魔法術の魔法陣を得意としている。
「電子の神よ。我が敵に冷たい眠りを与えたまえ! ブリザード!」
魔法陣から冷たい冷気が飛び出し、豪炎を猛吹雪で冷やしていく。
『ユノと葉山レクトの魔法合戦だ~! 豪炎と猛吹雪が対立しあっています!』
『魔法陣は詠唱は要りますが、効果は大きい。無詠唱のユノがそれとほぼ同威力の電子魔法を放っていることに驚きです』
何故、ユノは魔法陣の電子魔法と張り合える魔法を打てているのか。
それは友斗の脳内のナノチップにハッキングして、友斗の演算能力とユノが持っている演算能力を同時に使っているからである。
勿論、友斗に許可は得ている。というか友斗から提案されて最初はユノも驚いたのだ。
その時友斗は、黒い片手剣を構えながら笠木カイに向かっていた。
——シュバルツラッシュ!
黒い閃剣が笠木カイの両手盾を襲う!
笠木カイは豪炎が消えたのを確認して、黒い連撃をパリィしようと待ち構える。
——だが友斗は白い片手盾を払うようにして、両手盾にぶつける。
「ッ! 何の真似だ!」
笠木カイはそれを両手盾で受けるが……。
「ピーッ、カイ様、ハッキングを受けています」
「なにぃッ!」
友斗は白い片手盾をぶつけてそこからナチュラル・ハッキングを仕掛けた。
狙いは一つ。
「カイ様、大量の囮データを送られて盾の形状を維持できません」
「何だと⁉」
これはレオが闇市場の売人クルドのアジトを探すときに使った手法に似ている。
レオからその手法を聞いた友斗は戦闘にも使えないかと可能性を探っていたのであった。
「スモーク&グレアってな」
これは囮データを大量に送り、本命の小さな信号を潜り込ませる手法だ。
そして、その小さな信号の意味は……。
「主導権を奪取されました」
「アイアン⁉」
これがナビAIのない友斗が導き出した、対ナビAI持ちとの戦いの方法だ。
ナビAIがないなら、相手も同じ状況にしてやればいい。
だが、乗っ取りはしても、相手のナビAIは勝手に使わない。
それが友斗の決めた答えだった。
「カイ様、武器の形状が作れなくなりましたが、それ以上のハッキングは仕掛けてこないようです」
「何だと? こちらの武器を勝手に使えばいいのに――舐めているのか、榊友斗!」
「舐めてなんていないさ。ちょっと邪魔だったから退場してもらったまでだ」
笠木カイは動揺していた。
(何だ、このハッキング……アイアンが、応答しない……!)
タンク役としてレクトを守る役目が果たせない。
屈辱と焦りが胸を満たす。
「クソッ……こんなところで……!」
――斬。
笠木カイのアバターが消える。
『なんと! タンク役の笠木カイが真っ先に倒されてしまった!』
『おそらく、榊友斗のナチュラル・ハッキングで何かをしたのでしょう。ナビAIごと無効化するとは――恐ろしい能力です』
笠木カイを切り捨て、一対二の状況に持ち込む。
葉山レクトは動揺する。だがエリートクラスとしての意地があった。
「僕は諦めない! 電子の神よ! わが身を贄として軍神を生み出せ! ビクトリーロード!」
突如、葉山レクトのアバターに軍神が纏われて、七色のコートを纏った、軍人のような格好になる。
これはリンク率が八十五%を越えているからできる、神降ろし的な電子魔法。
観客席はもう最高潮だ!
——瞬間、世界がスローになる。
ユノ目掛けて葉山レクトのアバターが向かう。
友斗はユノのカバーに入ろうとするが、ユノは自力で電子魔法を発動していた。
ユノは必死だった。
友斗が戦ってくれている。
自分も――役に立ちたい。
(ユノは、友斗の足を引っ張りたくない、であります!)
「友斗におんぶにだっこは嫌、であります! ホーリーワールド!」
ユノの周りに聖域が誕生し、結界が何重装にも張られる。
葉山レクトは物理型の軍刀を持った剣士のようなスタイルになったようだ。
パリィン!
軍神の猛攻によって、軍刀が結界を切り捨てていく。
十層はあったはずの結界が残り三枚まで割られていく。
だが友斗がたどり着く時間は稼げた。
こめかみをトントンと叩き、自身のアバターのスピードを二倍にあげる。
葉山レクトは後ろを振り向くが……。
もう遅い。
「チェックメイトだぜ?」
ルナが神無ヒバリに言われた言葉をそのまま返す友斗。
自身に振るわれる軍刀をぎりぎりでヴァイスパリィ!
そこからのシュバルツラッシュ!
葉山レクトの無駄のない剣線と友斗の高速化したシュバルツラッシュの黒い剣線のぶつかり合い。
黒と七色の虹のような剣の軌道に観客が酔いしれる。
葉山レクトの軍刀が友斗の首を狙う。
友斗はヴァイスパリィで弾く。
反撃のシュバルツラッシュ――だが、レクトも軍刀で受け止める。
火花が散る。
速い……! けど、俺の方がもっと速い!
友斗の連撃が加速する。
レクトの防御が追いつかなくなっていく。
『お互いの意地と意地のぶつかり合いだ~! どちらが勝つんだ!』
『クライマックスですね。お互いに拮抗していますが、いや、友斗の動きの方が早いです』
友斗! 勝って!
レクト負けるな~!
もう後一息だぞ!
観客たちの声援も飛ぶ中——数十合の打ち合いを制したのは……。
「これでとどめだ! シュバルツラッシュ!」
「ぐおおおおお!」
葉山レクトの神降ろしは数分しか持たない。
その点、恒久的に二倍の速さで動ける友斗は圧倒的だった。
だが脳に負担がかかり、後で治療ポッド行きなのは間違いないだろう。
葉山レクトの神降ろしの時間は終わり、友斗の黒い一撃がアバターを叩き斬る。
うおおお!
A07クラスの勝利だ!
友斗君イケメン!
ユノちゃん、可愛い!
様々な声援が飛ぶ中、友斗が両手の武器を消し、片手を突きあげる!
ユノは友斗の近くに駆け寄る。
「友斗! 勝った、であります! ユノ、役に立てた、でありますか?」
目をキラキラさせながら、不安そうに友斗を見上げるユノ。
「ああ、ユノのおかげだ。お前がいなきゃ勝てなかった」
その言葉に、ユノの顔がパッと明るくなる。
小動物みたいに友斗の周りを走りながら歓声を挙げる!
「この勝負! A07クラスの勝利だ!」
エデュケーター・コバルの一声で勝利が確定する!
『素晴らしいリンクバトルでした! 榊友斗は一人で二人を倒してしまう活躍ぶり!』
『本当に熱いバトルでした。ユノも魔法で相手を引き付けてサポート役に回っていましたね』
この勝負、俺たちの勝利だぜ!
もらえる賞品が楽しみだな~!
ナビAIがもらえるんだったらもっと俺は強くなれるぜ!
あ、でもちょっと脳みそが限界って言ってる。
友斗は床に倒れ、救助AIが呼ばれるのであった。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。




