第五十一話 ルナとヒバリの狙撃戦 天瀬ルナ視点→現在→城壁リンクフィールド
観客席は学生たちで満席だ。始まる前から非常に盛り上がっていた。
射撃戦楽しみ~!
ルナたん結婚して~!
ヒバリちゃん大好き~!
所々下心が出ている者もいた。
今回のリンクバトルは射撃戦。
静かな立ち上がりから始まると思われたが……。
満月が美しい城壁リンクフィールドに神無ヒバリの光弓の粒子が煌めいた。
『いきなりの神無ヒバリの光弓攻撃だ~! それも三本!』
『射撃戦が開始されましたね』
来ますわ――。
星々が輝く夜空に、光の弓が三本煌めいてルナに向かってくる。
照準を合わせて一射、二射、狙撃。
薬莢が落ちる音と大きな狙撃音が城壁リンクフィールドにこだまする。
三本目は弾道を予測しながら避けた。
すかさずヒバリを狙い撃つ。
「ディアブロ、お願いしますわ」
「照準補正完了——発射準備完了」
狙い撃つ――照準は神無ヒバリの頭。
あえて城壁から顔を出すようにしているのは挑発だろう。
――その驕りを穿つ。
観客席は静まり返る。
もう決着がつくの⁉
そんなリアクションが見えるようだ。
ドォオン!
スナイパーライフルの大きな発射音がこだまする。
光の軌跡すら残さず、音よりも早く弾丸が走った。
神無ヒバリの頭を撃ちぬく。
だけど……。
顔を出していた神無ヒバリのアバターは溶けるように消える。
やはりあのアバターは案山子でしたわ。
あの案山子はある一定時間、遠くからの射撃を引き付けて置く効果がありますの。
ですから結局壊さないと駄目なのですわ。
神無ヒバリのスキル『イミテーション・ターゲット』ですわね。
『あっと~! 神無ヒバリのアバターを撃ちぬいたかのように思いましたが、ただの案山子だったようだ~!』
『おそらく、何らかの効果を発揮するものですね。撃たざるを得ないという感じでしょうか』
「お嬢様、このままでは撃ち負けます。アーセナルモードに移行を」
「そうですわね。派手にやりなさい」
白髪に金色の瞳が満天の星空と満月の中に煌めいて映える。
ディアブロは分離・変形して多脚型無人砲台に変化する。白い機体と金色のフレームが鮮やかでとても綺麗だ。
「ディアブロ・アーセナルモ―ドですわね」
「お嬢様、これで制圧しますぞ」
「フフフ、これがあれば弓は怖くありませんわ」
ルナは少し驕っているようにディアブロには見えた。
だがそれを指摘している余裕はない。
四メートル程の機体が城壁リンクフィールドの城壁の上にそびえ立つ。
この機体は無人用なのでルナは中には乗り込めない。
向こうの城壁から光弓の曲射が浮かび上がる。
その一射はルナの城壁の上で弾け、光の雨のような千射となり、ルナを穿とうとする。
次はナビAIアークライトの『リロードフィールド』ね。
光の弓を曲射して、光の雨のような弓矢を降らせるヒバリの切り札の一つ。
ですがそれに対抗するためにディアブロ・アーセナルモードがありますわ!
「お嬢様、下にお隠れください。爺は迎撃を開始しますぞ」
「お願いしますわ!」
ディアブロは肩部についたミサイルポッドとガトリングで千の光弓を撃ち落とす。
ダダダダダダ!
ボン! ボン!
『ディアブロ・アーセナルモ―ドが光の雨を撃ち落としていく~!』
『ファンタジー的な弓矢と現代兵器の戦いのコントラストが美しいです』
観客席の歓声も爆ぜる。
熱気が城壁リンクフィールドにも届くかのようだった。
ミサイルポッドとガトリングで千の雨を撃ち落とすが落としきれないものある。
じわりじわりと城壁の体力を削っていることをルナとディアブロは気づいていなかった。
普段のリンクフィールドで城壁リンクフィールドが出ていないことが仇となった。
千の弓矢を落とした後、反撃に移るルナとディアブロ。
電磁ソナーで索敵しながらミサイルポッドで大量の案山子を破壊する。
ミサイルは城壁リンクフィールドの間に生えている大量の森林をなぎ倒していくが、ミサイルはバラバラに飛んでいく。
『イミテーション・ターゲット』が森林地帯に大量に設置されているようだ。
「これで『イミテーション・ターゲット』は全部壊したかしら?」
「おそらくそうですね。ですが段々と距離をつめてきていますぞ」
「関係ないわ。チッ、また光の雨の弓矢が飛んできましたわ」
もう二回目の光の雨の弓矢だ。
「むっ! これは⁉」
「まずいですわ! こちらの城壁が崩れる!」
城壁リンクフィールドは本来は『城取り』に使われるリンクフィールドだ。
そのため城壁には体力が設定されていて破壊できるようになっている。
城壁リンクフィールドの経験がないルナはそれを知らなかったのだ。
だが神無ヒバリは知っていたようで攻撃と見せかけて城壁を最初から壊す方にシフトしていた。
城壁が崩れ、足場が崩壊していく中、ルナは行動に移るしかなかった。
「ディアブロ! 飛んで逃げるしかありませんわ!」
「そうですな。一旦退くしかありません」
ディアブロ・アーセナルモードに飛び乗って壊れていく城壁から飛んでいくルナ。
だが――。
「ん。予想通り」
高い木の枝から一条の光の矢がルナに飛んでくる。
失策続きで対応が遅れていたルナは冷静に反応できずに、ディアブロ・アーセナルモードから撃ち落とされてしまう。
何とか空中で回りながら地面に足を付けるルナ。
だが、体力(HP)があるため、高いところから落ちても死なないが硬直は受ける。
「ん。チェックメイト」
木の枝の上から、ヒバリは落ちていくルナを見つめる。
ルナのアバターに狙いすまされた光の強弓矢が入り、ルナの体力が零になる。
ルナの敗因は二つ。
城壁から離れようとしなかったこと。
もう一つは――。
ディアブロ・アーセナルモードを信じすぎたこと。
城壁での戦いを諦めて、森林地帯での戦いに移れば得意のステルスモードやガンアクションで圧倒できただろう。
「私の驕りで……負けたのですわ」
悔しい。
友斗に、ショウに、良いところを見せたかったのに。
それなのに――ヒバリに完敗してしまった。
だが同時に、親友の成長を嬉しく思う自分もいる。
これが、ライバルで親友という関係。
「ん。これが私のスタイル」
またライバルに勝った。
だが――もっと強くならなければ。
榊友斗という"本命"が控えているのだから。
『今回のリンクバトルは~! 神無ヒバリのA01クラスの勝利だ~!』
『城壁をどこまで信用したかが勝負の分け目でしたね。ちなみにリンク率も常時攻撃の手を休めなかった神無ヒバリの方が上で、最後の一撃の時には八十八%を越えていました。天瀬ルナは八十%程だったのでこの差は歴然でしょう』
A01クラスの歓声が観客席から爆発する。
控室で見ていたエデュケーター・クラヴィスは顎髭をさすりながら呟く。
「フフフ。これで一勝一敗。さあ危機ですぞ、榊友斗」
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