第四十九話 秋月レオと九条リクトの激闘 秋月レオ視点→現在→空島リンクフィールド
「天才ハッカーと自分で称するだけのことはあるな――」
「驕りは捨てた。ライバルにいつか追いつくためにな」
『何という巧みな位置入れ替え! これはどういう現象でしょうか?』
『訓練用AIがしてくる位置入れ替えの技術を模倣したようですね。リンクフィールド上では肉体は消えてデータとして処理される。そこを突いて位置入れ替えをしたようですね』
『榊友斗はナチュラル・ハッキングをするなら、秋月レオはロジカル・ハッキングをしたというべきか~!』
実況の声がリンクフィールドにもこだまする。
アナライズ・ノヴァも少し興奮したように早口で解説をしていた。
レオは観客席の騒然とした空気を楽しんでいた。
今はこの観客のざわめきが心地いい。
友斗見ているか? 貴様が助けてくれたおかげで今がある。
A01クラスの意地を見せてくれ~。
A07クラス勝って!
観客の応援合戦も始まる。
九条リクトは両手槍を構える。
「僕は負けない! エデュケーター・クラヴィスに認めてもらうために!」
素早い!
先程の動きよりもさらに早く両手槍を構えて、刺突を繰り出してくる。
レオは大盾で弾く構えを見せるが――。
むっ!
フェイントか!
刺突からの爪先半回転。
側面に回り再び刺突を繰り出してくる。
『ラピス!』
『レオ様、パワーガードを発動します』
レオとラピスは念話をしつつ、新機能を発動する。
以前、クルドにラピスを乗っ取られかけたときに色々と改善を加えたのだ。
レオの周りに球状の結界ができて九条リクトの刺突と衝突する。
「チィッ! まだまだ! ランスロール!」
九条リクトは舌打ちをしつつ、弾かれた勢いを活かして薙ぎ払いを放つ。
結界は二回目の攻撃により消えるがバックステップをしたレオには届かない。
『何という激しい攻防! 目が離せません!』
『お互いの技が交差していますね』
実況と解説の声を聞きながらレオは次の一手を打つ。
「そろそろ俺様の攻撃も受けてもらおう!」
レオは前進。薙ぎ払いを振り切ったリクトには隙があった。
全身鎧は防御力とは反比例して軽い。
空中に飛び出して、リクトに上段から一太刀——。
ここでリクトはニヤッと笑う。
「かかったね。ミラーランス」
何とカウンター系統の能力を隠していた。
ここまで積極的に攻めてきたのはある種のフェイク。
まず、レオの片手剣に刺突を合わせて、受け流す。
つま先半回転して、得意の薙ぎ払い。
「ぐおおおお!」
レオは空島の縁ぎりぎりまで吹き飛ばされる。
何とか転がりながらも受け身を取る。
ここまでの攻防でお互いの体力は五十%程度になっていた。
『レオ様! 九条リクトが来ます!』
ラピスの念話でハッと顔を上げると、両手槍を構えて突撃をしてくるリクトが見えた。
どうする。いや、能力にはないがこれなら!
『ラピス。奴の到達秒数は?』
『二秒です』
「うおおお! シールドパリィ!」
二秒、一秒、今!
レオは先ほどの試合で御影ナオが見せた、シールドパリィを模倣し完璧なタイミングで刺突を弾く。
本来、ナビAIのスキルセットに無い技は出来ないが――模倣ならできる。
レオは完璧なタイミングで模倣して見せた。
『なんと、ここでシールドパリィだ~!』
『おそらく、スキルセットにはない技ですね。光のエフェクトが出ていませんでした』
観客の歓声は最高潮だ。
リクト様の攻撃をいなすなんて!
レオ君カッコいいかも。
そんな観客の声が響き渡る。
今度の隙は本物だ。
『ラピス、パワーチャージ!』
『いつでも行けます』
レオの全身鎧は青白い光を放ちながら流星のような速さで九条リクトにぶつかる。
九条リクトのアバターはダメージを受けながらひしゃげて吹き飛ばされる。
九条リクトのアバターは空島の外にまで飛び出していく。
『やったか!』
『レオ様。それはいけません』
「チャージランス!
落下を始めてから二秒後、九条リクトは光の閃光を放ちながら、下から飛んできた。
「それは反則技だな」
「奥の手だったのに、使わされてしまったよ」
お互いの顔には疲労とダメージが残る。
九条リクトの体力は三十%以下で、レオの体力は四十%程度。
そこまでの差はない。
「貴様、先ほどから疑問だったがナビAIはいないのか?」
「そうだね。僕は一人でも強い。ナビAIなんていらない」
「それでどうしてスキルを発動できる」
「僕の体は半AIと言ってもいいくらい改造されているんだ」
「何だと? それは違法チップではないのか?」
半AIとは自身の体を改造し、リンクバトルや生身でも独自のスキルを使うことができるサイボーグのような存在だ。
あまり推奨はされていないが法律的には認められている。
「ちゃんと合法の物を使っているよ。君たちナビAIに頼っている人間とは違うのさ」
その言葉を聞いたレオは少し悲しくなる。
ああ、こいつは少し前の俺様と同じだ。
「貴様は何もわかっていない」
「何だって?」
「人は一人では生きられない。AIや人間と協力することで何かを為すことができる」
教えてやろう。お前の弱さを。
そう決めた。レオはふてぶてしい笑みを見せる。
友斗の模倣ではないレオらしい笑みだった。
その笑みを見た九条リクトは顔を歪ませる。
今回のバトルで二回目の怒りをにじませた顔だった。
「クソッ! そのムカつく笑い方をやめろ!」
「何故だ」
「榊友斗もお前もそうやってムカつく笑い方をしやがる。エデュケーター・クラヴィスは俺たちA01クラスの事なんて見てやしない。いつもA07クラスの話ばかりだ」
「貴様にも感情はあるのか」
「感情なんてクソだ。一時の感情に支配されて人間は過ちを犯す!」
「フッ。それこそが間違いだ。貴様自身が今、感情に支配されているではないか」
レオの言葉に、九条リクトははっと気づく。
認めてもらいたいという感情。それこそが自分を縛っていたのだと。
九条リクトは端正な顔立ちを歪ませながら両手槍を構える。
もうお互いの間に言葉は要らない。
「チャージランス!」
九条リクトの顔に余裕はもうなかった。
愚直に槍でレオの顔を穿つ。それしか考えていなかった。
赤黒い光を放ちながら、レオに向かって突進する。
一方レオは冷静だった。
リクトのわかりやすい動きに対してカウンターを仕掛けるのみ。
『レオ様、三秒です』
『わかった』
三、二、一!
シールドパリィ!
だが九条リクトは突然チャージランスを止める。
突進を自由に止められるとは聞いていない。
「かかったね。チャージランス!」
半AIの改造により、九条リクトは通常では不可能な突進の制御を可能にしていた。
盾を振りかざしているので隙ができる。
「かかったね。チャージランス!」
観客席は割れんばかりの歓声が広がる。
リクトやっちまえ~!
レオ、負けるな~!
『チャージランスをフェイントに使ってから、再度チャージランス! 秋月レオは絶体絶命だ~!』
『ここが分水嶺です』
秋月レオは笑う。切り札は最後まで隠しておくものだ。
『レオ様、グラビティ・ウェーブを発動しますか?』
『ああ、最後の切り札だ。重力波で敵を吹き飛ばす』
レオの体から紫色の波動が放たれる。これはラピスの重力制御能力だ。
リクトはチャージランスの体勢を取っていたため、急激な重力変化に対応できず吹き飛ばされる。
そしてカウンター。
リクトのアバターに片手剣を一閃――。
リクトは体を上下真っ二つにされて、ポリゴンに消える。
「試合終了! 秋月レオの勝利だ!」
エデュケーター・コバルの宣言が体育館フィールド上に響き渡る。
リンクフィールドが解除されて、九条リクトの肉体が復活する。
電子のデータから体が再構成されたのだ。
九条リクトは何処か晴れやかな顔をしていた。
「負けたよ。完全に裏を取ったと思ったのにな」
「貴様は強かった。だが俺様はそれ以上に強い。ただそれだけだ」
「最後の紫色の波は何だったの?」
「フッ、秘密だ」
最後の紫色の波はグラビティ・ウェーブだ。最後まで取っておいてもう手札がないと思わせてのカウンター。
「今回は完敗だ。でも次は負けない」
「A07クラスの層が厚いことはわかっただろう。次も勝つ」
お互いに言葉を交わしながら握手を交わす。
独りよがりの強さに囚われていた九条リクトにも変化が訪れるかもしれない。
控室で見ていたエデュケーター・クラヴィスはどう思うだろう。
観衆がお互いに声援を送り続ける、最高のリンクバトルの始まりとなった。
控室で見ていたエデュケーター・クラヴィスは、ニヤリと笑った。
「フフフ。素晴らしい。秋月レオ、君も輝いているよ」
だが次は榊友斗だ。あの自由の象徴が、どう戦うのか。
次の戦いに出てくるのか?
クラヴィスの期待は膨らむばかりだった。
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