第四十話 レンの隠された才能 サンクチュアリ・モード 朝霧レン視点→現在→トウキョウ・ミッドライン
「ああ? お前は数日前に来た野良AIの傭兵スコープじゃねえか。なんでお前が出しゃばってくるんだ」
「そうだな。俺にはネオセントリック教団に攫われた恋人ハグを取り戻すという目標がある。だがハイスクール・シブヤ・エデュケーターの生徒たちには救われた。まあ恩返しだな」
それでも納得しないレンジャーXにスコープが闇市場の売人クルドに記憶を封じられて手先として使われていたことや秋月レオ、榊友斗達に救われて記憶を取り戻したことを説明する。
「なるほどなあ、だがこいつは俺も気に入ったからな。後で貸せよ」
「検討しておこう」
ひぃ! 何かレンジャーXにも鍛えられる流れになってる⁉
レンが一人で戦慄していたことは横で見ていたミレにしかわからなかった。
「よし、訓練場に行こう。今開いてるか?」
「ああ、案内しよう」
頭領のライガーの案内で地下メトロを改造したコンクリートに覆われた訓練場に向かう。
やばい、めっちゃ興味持たれてる。僕はまだリンク戦闘訓練しかしたことないのに。
頭が沸騰しそうなレンの様子を見て、ミレがレンの手を握り、声をかける。
「レン兄ちゃん、大丈夫。最初は私の言うとおりに動けばいいから」
「ミレ……」
「私を信じて?」
ミレのあどけない笑顔を見てレンは少しだけ落ち着く。
そうだ。僕は素人だけど強くなりたいって気持ちは負けない。
「頑張るよ」
一言ミレに呟く。その様子はスカジャンの面々に見られていた。
あまり興味を感じていなかった他のメンバーも考えを変える。
意外と面白いものが見れるかもしれないと。
訓練場は地下メトロの待合場をさらに下ったところにあった。
無骨なLEDの照明と灰色のコンクリートに覆われた広い空間だった。
簡易リンクフィールド装置も備えられている。
「まずはミレとの初リンクだ。その後、俺のデータを流用した訓練用AIと戦ってもらう」
「わかったよ」
レンは深呼吸を二回繰り返す。そしてミレの手を握り視線を合わせる。
まだ心臓がバクバクしてる。でもミレに任せれば大丈夫という不思議な予感があった。
スコープが指を鳴らすと簡易リンクフィールドが広がり、シブヤ・ジャンクション郊外のビル群とそのビルの屋上に風景が切り替わる。
「レン兄ちゃん、行くよ」
「うん。リンク!」
ミレの姿が電子の光を煌めかせながらレンに纏わりつく。
徐々に形を帯びていき、レンの学生服は光を纏って形を変えていく。
レンの髪は長くなり肩まで伸びて、ツインテールになる。
レンの学生服は電子の煌めきを纏い、ひらひらとしたピンク色と白を基調としたワンピースとスカートを靡かせる。手に握られるのは魔法少女のようなステッキと先にはホログラムのように揺らめく実体のない宝石。
変身中にミレの思考がレンに伝わってくる。
『レン兄ちゃん、変身の最後に決め台詞を言って』
『え? 恥ずかしいよ!』
『言って』
『えー』
レンは光が落ち着きを取り戻した頃にミレに言われた通り、ウィンクをしながら決め台詞をいう。
「魔法少女レン(恋)! 悪は私が討つ!」
キュピーン!
どこからか後光が差し効果音まで入る。
レンはもうヤケクソで笑顔まで決めていた。
「おー‼」
訓練場にどよめきが走る。
さっきまで真剣そうだったスカジャンの面々は驚きながらも喜んでいる。
「「……なんで魔法少女?」なんだ?」
リベンジャーとスコープのツッコミは置いておこう。
魔法少女の格好は中性的なレンの顔立ちに良く似合っていた。
拍手がやまない中、スコープの咳払いで場が鎮まる。
「格好の事は置いておいて訓練に移るぞ」
再びスコープが指を鳴らすと簡易リンクフィールド内にスコープのアバターが出る。
「今回は俺のデータを基にした訓練用AIと戦ってもらう」
「オッケー☆」
レンはミレとのリンクで感情が高ぶっていた。普段は言わないノリノリのセリフまで決めている。
まるで人格が変わったようだった。
「それではリンク戦闘訓練を始める!」
「かかってきなさい!」
その言葉に笑みを深める訓練用AIのスコープ。
両手にハンドガンを持つと素早く腰から抜き放ち、銃弾を撃ち始める。
迫る弾丸。
スカジャンの面々にも緊張が走る。
『レン兄ちゃん、アレを使おう』
『うん、アレだね』
「サンクチュアリ・モード!」
レンは持っていたステッキを掲げ、声高らかに叫ぶ。
半透明のピラミッド型の結界が発動し、銃弾を弾き飛ばす。
周りで見ていたスカジャンの面々が騒ぎ始める。
「あれは電磁結界か?」
「いや~魔法少女に変身して魔法を使っちゃうなんて可愛いわ~」
「……何かおかしい」
「データ参照。レンの周りだけ無音・無風になっている」
「ハッキングもできそうにねえなあ。あれは“不可侵領域”か?」
ライガー、ドクシア、リベンジャー、ブレイナ、レンジャーXが口々に話はじめる。
「そうか。ミレがレンを選んだ理由は……守りだ」
「どういうことだ? スパイディ」
スパイディが興奮しながら解説を始めるのでガンダが聞く。
「あの結界はハッキングを無効化している。つまりだ。オーバーライド・ゼロや巷に聞く”嫉妬”のネレイアの精神干渉も弾けるってことだ」
「なんだあ、そりゃあ!」
ガンダが驚き、話をそれとなく聞いていたスコープも笑みを深める。
その間にも訓練用AIのスコープがアサルトライフルに切り替え、銃弾を撃ちまくるが結界はひびが入る程度で壊れない。
「中々やるな。だが接近戦もできないわけじゃないぞ」
外のスコープがレンに言うと、訓練用AIのスコープは笑いながらアサルトライフルを手元に置き、瞬時に走り始める。
『レン兄ちゃん、この結界は物理的な攻撃に弱いの。接近戦に切り替えよう』
『え? でも僕、近距離戦闘は苦手だよ』
『私に体の主導権を任せて。ここは私の番だよ』
魔法少女レン(恋)は結界を解除すると訓練用AIのスコープの格闘を鋭くいなす。
右、左、フック!
それらをすべていなし、反撃のアッパーを魔法少女レンは訓練用AIのスコープの脇腹に沈める。
少し九の字になった訓練用AIのスコープの様子を見て、また周りが話し始める。
「おそらく、ミレが体を動かしてるな」
「ああ、あんな動きはレンには出来ねえ」
「ミレとのリンク率が高くないとできないことよ~」
「解析完了。レンとミレのリンク率八十五%。通常、初リンクは五十〜六十%。これは規格外の数値」
「はっはっは。なかなか面白いじゃねえか。朝霧レン」
最後のセリフはレンジャーXのセリフだ。
「でもサンクチュアリ・モードはミレの能力なのか? ガンダ、どうなんだ」
「ミレにはそんな能力はねえよ。レンの力に違いねえな」
「でも、どうしてそんな能力があるってわかったんだ?」
頭領のライガーとガンダが話す。
「さあなあ。でもここに来る前にミレが言っていたぜ。レンは純粋で素直な心があるって」
「なるほど」
魔法少女レンは訓練用AIのスコープののけぞった顔に渾身の右ストレートを放つ。
だがニヤッと笑った訓練用AIのスコープはそれを顔面で受け止め、膝蹴りを魔法少女レンに入れる。
『グフッ!』
『ごめん! レン兄ちゃん。ちょっと油断した』
『……』
だが魔法少女レンは吹き飛ばされながらも空中で宙返りして、ニコッと笑う。
その姿は何処か神々しさを感じさせるものだった。
「~♬ ラ~ラララ~ラ~♬」
『レン兄ちゃん? 何で歌ってるの』
『……』
レンからの反応がない。リンクフィールド内にレンの美声が響き渡る。
周囲も無言でレンの声に聞きほれている。
ミレはどうするべきか悩んでいると突如映像が流れ込んでくる。
これは……? 末来の断片?
そうだったんだ。みらいお姉ちゃんがレン兄ちゃんを助けるように言った理由。
それはレンが持つ気高い精神と純粋な心から生まれるサンクチュアリ・モードだけじゃない。
末来の断片を見て、その未来を実現させる能力。
フラグメント・ソング。
レンの脳内にはオーバーライド・ゼロに立ち向かう友斗たちと並び立つ自身の姿が映っていたのだった。
**
「初リンクでこれだけ動けるのは上出来だ。だが、まだ甘い。接近戦の反応が遅れている」 スコープの言葉にレンは頷く。まだまだ強くなれる、という確信があった。
訓練はこれ以上ヒートアップすると危ないということで中止になったがレンはスカジャンの面々に好意的に迎えられた。訓練自体はレンの優勢だったが訓練用AIのスコープも本気を出そうとしていたので危ないという判断だった。
訓練が終わった後、我に返ったレンは自身の魔法少女の服装を恥ずかしがりながら、ふと疑問を持った。
あの時、僕は何を見ていたんだろう……?
だが、その記憶は靄のように曖昧で、思い出すことができなかった。
ミレはフラグメント・ソングの事は誰にも言わなかった。
でも心からレンを助けてよかったと思っていた。
訓練が終わった後我に返ったレンは自身の魔法少女の服装を恥ずかしがり、ガンダやレンジャーXにからかわれていたが。
サンクチュアリ・モードとフラグメント・ソング。
この二つはいずれ起こる戦いの鍵となるだろう。
ミレは喜びに震えていた。
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