第三十一話 仲間たちの奮闘 白鳥カスミ視点→過去→シブヤ・ジャンクション郊外
何となく授業の休憩中にレオが一人でにやにやしているところを気にしていた。
大体、生徒は一緒の時間に学生寮に帰るのだが、レオの姿はなかった。
「レオ、寮にいない」
「わたくしも今日の秋月レオは様子がおかしいと思いましたわ」
「心配、であります」
学生寮の食堂スペースで話していると友斗とショウとアカリが喋りながら来る。
「アカリ? お前はいつになったら卵の殻を入れずに中身を割れるんだ?」
「アカリの場合、握りつぶすからね……」
「友斗様、ショウ様、これは愛情を込める過程で力を入れてしまうのです♡」
「おめえの場合は愛情じゃなくて力感センサーバグってるだろ!」
ちょうど、三人が来たので、レオがいないことを話す。
ピコーン!
カスミのホログラム端末に救援信号が届く。
レオが記憶と感情のカートリッジを扱う闇市場の売人のアジトに一人で向かっているとのことだった。
「これはまずいな。エミリアに連絡しよう」
「レオ君、何で一人で行ってしまったんだ」
友斗とショウが深刻な顔つきで話す中、カスミとルナとユノも困った顔つきになる。
「確か、レオ君って元財務省の大臣の息子さんですわよね?」
「レオ、お坊ちゃま」
「レオ、いつも気難しい顔をしている、であります」
アカリには学生寮に戻ってもらう。私も戦えます! と言って涙目を見せてくるのには困ったが。
五人は職員室を訪れて、エデュケーターにも知らせる。
「困ったな、私はちょうど手が離せない案件を抱えているんだ。どうするか……」
エミリアは珍しく困った顔をしていると後ろからダンベルを抱えたエデュケーターが登場する。
「エミリア、どうしたんだ? そんな気難しい顔をしていると筋肉が分解されちまうぜ?」
「AIの生体筋肉はそんなやわじゃない! というか……コバルか!」
「なんで、名前を忘れているんだよ!」
「何となく影が薄くてな」
ガーンと肩を落とす筋骨隆々のエデュケーター・コバル。
「今、遊んでる、時間ない」
「おうおう、そりゃそうだな。良いぜ、このコバルがついていってやるよ」
「コバル、強い?」
「ああ、こいつは筋肉馬鹿だが戦闘の時はとびっきり役に立つ。馬鹿だが」
「なんで、馬鹿って二回言うんだよ!」
時間がないので学園の空中車を使い、コバルの運転でシブヤ・ジャンクション郊外の所まで向かう。
シブヤ・ジャンクションを丁寧に運転した後は、エアレーンを制限速度を越えたスピードで爆走する。
「コバル、運転、荒い」
「ああ、すまんすまん。なんかお前らといるとテンション上がっちまってまうんだ」
ルナは友斗のエモーショナ―が関係していると確信するが無言だった。
救援信号が送られた場所にたどり着き、エアカーを地面に降ろして付近の様子を覗う。
「救援信号の場所はここ」
「どうやってレオを探すか、であります」
友斗は珍しく神妙な顔をすると、眼鏡をかけているふりをして、くいっと縁を持ち上げる仕草をする。
「こういう時は現場の聞き込みからするって方法がある」
「なるほど、詳しいね。何から知ったんだい?」
「ショウからこういう方法もあるって教わったんだ。何でもナチュラル・ハッキングに頼るのは危ないしな」
四人は本当にそんな古い方法が正しいのか、と疑うが、ショウが同意したのでそれで探す。
その方法は原始的にして有用。
六人で聞き込みを開始すると、すぐに赤髪の青年が何かを探していたという情報が得られた。ネオン街の片隅の占い婆から証言が得られる。
「その子ならわしが占ったぞい。あちらの廃工場がたくさんあるエリアに行ったさあ」
地図を書かれたメモを渡されて、五人とコバルは顔を見合わせる。
「婆さん、なんでそんなに詳しいんだい?」
コバルが聞くと、占い婆はしわくちゃの顔を歪ませてこう言う。
「わしの孫によく似ておってのう。世話を焼いてしまうんじゃよ」
占い婆はそれを言った後、少しだけ哀愁を漂わせた。
しわくちゃの顔には生きてきた壮大な人生を感じさせた。
占い婆はメモに電話番号を書いてよこしてきた。
「何かあったら助けてやるぞい」
それを見て、浮浪者が驚いている様子も見えた。
「気を付けなさい。ディープスカイの構成員がお主らを追っておるぞい」
「ディープスカイだって? ネオセントリック教団の下請け業者とも言われる犯罪組織じゃないか」
コバルが難しい顔をしながら呟く。
安全を期して、乗ってきたエアカーで六人は移動することにしたのだが。
「エデュケーター・コバル。後ろから違法改造されたエアカーが三台追ってきてる」
「マジか。それは参ったな。ハイスクール・シブヤ・エデュケーターのエアカーには武装がついていない」
「友斗とショウのナチュラル・ハッキングならやれる」
ショウとコバルとカスミが話していると友斗は難しそうな顔をする。
「まだ、ナチュラル・ハッキングをすると、痛みが走るんだ。長くは使えねえ」
「じゃあ、僕のナチュラル・ハッキングで妨害をする。その間にエデュケーター・コバルが振り切るってのはどう?」
「そりゃあいいぜ!」
コバルは五人にシートベルトを締めた確認した後、自動運転モードからマニュアルモードに変更する。
ブルゥウウン! ブルゥン、ブルゥン!
重低音をまき散らしながら、電動エンジンと重力制御装置を揺らすエアカー。
「ヒャッハー! 撒くぜ撒くぜ!」
コバルのテンションが最高潮になり、天高く、重力制御装置をふかしながら昇り始めるエアカー。慌てて後ろの三台が車体に付けられたマシンガンを撃ち始めるが、小刻みに左右上下の重力制御装置をふかし、鉛色の銃弾を躱していく。
車中の六人には強烈なGがかかるがコバルがお構いなしだ。
「ぐぅうう、ナチュラル・ハッキング!」
眼鏡をくいっと持ち上げる仕草も忘れてショウがすぐに数字と記号の空に意識を潜らせる。この空にハッキングできる物は……空中を飛ぶ無人ドローンと後ろから迫りくる違法改造されたエアカーだけ。
ディープスカイの一台のエアカーのファイアウォールを潜り抜け、一時的に電動エンジンと重力制御装置を停めた!
一台は空中に斜めに上がっていく姿勢からエンジンが止まり、空中から落ちていく。
ガァッシャァン! 下のネオン街の建物に墜落していく。
これで一台。
次は無人ドローンにハッキング。もう二台のエアカーの進行路に何台もの無人ドローンを配置。マシンガンが無人ドローンを破壊するが爆発し、その反動でカートリッジがまき散らされ、一台のエアカーが落ちていく。
もう一台が食い下がるように着いてくるが、コバルは縦横無尽に空中を駆けながら、その追跡を振り切ろうとする。
廃ビル群をスレスレに飛び、ビルを一周したり、あえて地面すれすれを跳んだりとマシンガンを狙わせる隙を与えない。
友斗はショウの隣でこめかみを叩きながら、電子と原子の世界に飛ぶ。
「持ってくれよ、俺の体」
夜の宵闇と数字と記号が入り混じる視界の中、友斗はあることに気づく。
「そのマシンガンの狙いをつけてるのはオートだよなあ?」
一時的にマシンガンの制御層を乗っ取り、追ってくるエアカー自身に狙いを定める。
「犯罪組織は許せねえよなあ?」
ババババババン!
マシンガンがついている車体自らを銃弾が食い破り、後ろでエアカーが爆散する!
「ヒャッハー! きたねえ花火だ!」
コバルの絶叫がシブヤ・ジャンクション郊外の空に鳴り響く。
「よし、廃工場付近に向かうぞ!」
「おう!」
「うん!」であります」
六人は空をエアカーで爆走しながらレオの助けに向かう。
レオ、普段はちょっとうざいけど、でも嫌いじゃない。
カスミは空を見ながら、少しだけそんなことを考えていた。
空を覆う黒雲が少しだけ晴れ、夜空が見えていた。
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