第三十話 レオの追憶 クルド視点→現在→シブヤ・ジャンクション郊外
「ギャッハッハ! この子はあたしのもんだよ!」
クルドはレオをお姫様抱っこすると、頬ずりしながら拘束用の機械に括り付ける。
「レオ様に何をするのです!」
「おや、この子のナビAIかい? お前にはセックスロイドでもなってもらって後でご主人様と共に可愛がってあげるよ~!」
「貴様!」
「おやおや、主人に似て、口が悪いAIだね」
醜い笑みを見せるクルドは鼻歌を歌いながら、レオを拘束用の機械にセットする。
これをこうして、こうすればっと!
レオの脳内の記憶がホログラム映像に映し出される。
「さあ、最初はやっぱりこの子の記憶を覗こうかねえ。さあどんな鬱屈やトラウマを抱えているのかな~! ウヒヒ」
レオの脳内の記憶が記憶を読み取る機械によって映し出される。
これはレオの幼少期の記憶だった。
「やーい! お前は本当に意気地なしのライオンだな!」
「レオ君、こんなこともできないの? かっこ悪い」
秋月レオは子供の頃は引っ込み思案で勉強も運動もできなかった。
プリマリースクール(小学校)でサッカーをしているとき、キーパーをさせられて、わざと顔面目掛けてボールを蹴られる。子供の純粋さは時に鋭いナイフになる。
「うえーん!」
「レオ様! お前たちは何をしているのですか!」
「うわ――! またメイドAIが来た!」
「いつも、ナビAIに守られてレオ君カッコいい――!」
子供たちはボールを放り出して散り散りになって逃げる。
「レオ様、もう遊びはやめましょう。私が相手をしてあげますから」
「でも遊ばないと後でいじめられるんだ」
ラピスはべそをかいているレオの顔をハンカチで拭きながらこういう。
「レオ様、強くなりなさい。その名にふさわしいライオンになれるように」
「う、うん」
ラピスは小さいレオに目線を合わせて、頭を撫でる。
レオとメイドAI、ラピスには家族愛があったのだ。
レオの理解者はメイドAIだけだ。
レオの母親はレオが生まれてすぐに他界しており、レオの家にメイドAI、ラピスが派遣されてきたのは片親だったからという背景がある。
だがプリマリースクールでレオがいじめられていると父親が知るとレオを呼び出し、ゴルフのドライバーを持ち出してメイドAIを殴り始める。
「お前はAIなどに頼っているからいじめられるんだ! わしがこのメイドAIを壊すところを見ておれ!」
「お父様! やめて! ラピスをいじめないで!」
「なんだその名前は! ラピスなどではない。ただのメイドAIだ!」
その時レオは愕然とした。いつも厳しい父親だったが、自分を慰めてくれると思っていた。でも違う。お父様は、いやこいつはもう父親なんかじゃない。
その頃から、レオは人間のことは信用できないと見切りをつけ、ネットワーク関連の知識やプログラミングを勉強するようになった。よりAIに依存するようになったともいえる。
ボコボコになったメイドAI、ラピスを他の使用人に言って廃棄される前にデータを抜き出した。そしてネットで投資を早くからし始めたレオは新たなAIの開発ができるまでに至った。
そうして作り出したのがナビAIとなったラピスである。
「俺はAIしか信用しない。だからラピスと一人で戦う、そのつもりだったんだ」
最後にレオの独白が流れていた。
「ギャッハッハ! こいつは話すも涙、聞くも涙って話だねえ」
何故か光悦とした表情を浮かべるクルド。
いたいけな青年の鬱屈した記憶を見て興奮していたのだった。
何故このアジトに一人で来たかの理由もわかった。
尚更、この子が愛しく思えてきたねえ。
ったく、最初はなかなか催眠がかからないから焦ったけどね。
笑い声は催眠波のトリガーなんだよねえ。
でも数回浴びせないと効かないのがめんどくさいところ。
この青年に記憶と感情のカートリッジを投与してもっと自分好みの人格にしてしまいたい。どうせならあたしとの幸せな記憶を捏造して、依存させてもいい。
「次は記憶を見るのはやめて、記憶と感情のカートリッジを投与しようかねえ。いや、私との幸せな記憶を今から作ってやろうかい」
クルドが顎に手を当てて考えていると……。
後ろに三人の生き残った構成員が来る。
「なんだい? 今あたしは忙しいんだよ」
「あの青年の知り合いがこのアジトを嗅ぎつけたらしいわ」
「ここは子守をする場所じゃないんだけどねえ」
クルドはわざとらしく肩をすくめて見せる。
踊る女AIと閃撃のナイフ使いAIとスナイパーAIが指示を待つ。
「あんたらだけで何とかなるだろう? ストリッパー、ジャック、スコープ?」
「それが……その中に榊友斗も居るらしいわ」
榊友斗、おいおい。SNSの有名人じゃないかい!
クルドは喜びながら、醜い笑みを浮かべる。
クルドは榊友斗と赤髪の青年を自分のお気に入りの人形にしてやろうと考えていた。
「ギャッハッハ! 私の将来は安泰だねえ!」
レオを見るとうわごとで何かを呟いている。
「助けて……」
「ギャッハッハ! 助けなんて来ても無駄ぁ!」
ブツッ!
突然アジトの電気が停電して真っ暗になる。
クルドたちは暗視機能の視覚に切り替えるが……。
いる。闇夜に乗じて自らのアジトに来た客が。
クルドは闇の中で口角を歪ませながら、考える。
最高の客人のもてなし方を。
「まだ使ってない秘密兵器もあるからねえ」
その呟きにストリッパーとジャックとスコープは顔を見合わせる。
クルドは顔を醜く歪めて新たな客人を迎え入れる。
新たな供物にするか、記憶を抜いて自分好みの人形にするか。
どちらにせよ、楽しみだねえ、どんな風にあがくのか。
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