第二十七話 憧憬と苦いトラウマ 秋月レオ視点→現在→ハイスクール・シブヤ・エデュケーター
学園内にネオセントリック教団の仮拠点が見つかってから三日が立った。
「おい! また友斗がネオセントリック教団の仮拠点にダメージを与えたらしいぞ!」
「榊友斗様……! 最初は今どき学ランなんて古いって思いましたが、ハーフ顔と金髪が相まってイケメン!」
「今回の話はSNSに上げるのは禁止らしいけどな。上げたら学園退学って相当学園側がぴりついている証拠だぞ」
学園内は榊友斗の話で持ち切りだ。秋月レオはあの日、クソ親父に呼び出されていたため、学園探索に行けなかった。いや行こうと思えば行けた。
だが、AI倫理学担当のエデュケーター・クラヴィスの指示で行かなかった。
レオは苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。
自分のクラスに戻ると、クラスメイトにひそひそと噂話をされる。
「秋月レオ、めちゃくちゃ機嫌悪そうだな」
「そりゃそうよ。友斗をライバルって公言しているからね。でもライバルってよりは嫉妬対象?」
「なんで学園探索に行かなかったのかな?」
秋月レオは自分の席に着くと音を立てて椅子を引っ張り、フンと鼻を鳴らす。
何とでもいえばいい。ネオセントリック教団を訓練用AIのシステムに引っ張り込んだのはレオだ。指示されたことについての目的は知らないが……AIを忌み嫌う実家への反抗とAI至上主義に対する憧憬があるから従った。
クラスメイトは気まずそうに話をやめて目をそらす。
忌々しいことに榊友斗は一週間の休学中だ。体のダメージを癒すためらしい。
カスミやルナとユノは事件のことについては喋らないものの友斗をほめる話をするとニコニコとしている。
ショウは……何を考えているかわからん。何故レオのアシストをしたのか。
奴はどんな目的で動いているのか……。ネオセントリック教団との戦いではかなりの戦果を挙げたと噂話になっているが。
友斗のことを認めていないわけではない。同じ学園としての誇らしさもある。
だが、それとこれは別なのだ。
ぐるぐると思考していると頭の中に声が響く。
『レオ様、あまり考え過ぎはよくありません』
この声はレオのナビAIのラピスだ。昔、クソ親父に捨てられたメイドAIを密かに確保してデータを抽出し、ナビAIとして再建した。
『レオ様がお優しい方なのは私が一番知っています。レオ様は榊友斗に後れを取る人物ではありません』
『そんなことを言っても、俺様は現に後れを取っている』
『いつか必ず、何かを為す時が来ます。ですがネオセントリック教団に協力しているのはいただけません』
『うるさい』
ラピスとは思考だけで会話ができる。これは勉強はできるレオのリンクダイブ知識の高さとリンク相性の良さから生まれた技術だ。
頭の中でクソ親父がラピスをゴルフに使うドライバーでラピスを叩き壊した記憶がフラッシュバックする。
『貴様はAIに依存しようとするから弱いのだ! もう金輪際、この家にAIなどおかん!』
『お父様! やめて! ラピスをいじめないで!』
レオは幼少期の頃は気弱で近所の子供たちにいじめられていた。人間の醜さを知り絶望していたころに話し相手や時にいじめから守ってくれたのがメイドAIの頃のラピスだ。
壊されたときにはクソ親父を殺してやろうと思った。だが非力な子供のレオにはそれもできない。人間よりもAIが世の中を管理するべきだと思うのは当然の帰結だった。
『ラピス。お前だけが俺の救いだ』
『ええ、いつもそう言って下さりありがとうございます』
そう言いながらもレオは何か遅れを取り戻す方法はないかと考えていた。
そうだ。記憶と感情のカートリッジを売る売人が闇市場にいると聞く。
そいつを捕まえれば、友斗より目立てるのではないか?
子供じみた発想だったがよそそうに思えた。
レオがふんぞり返りながらニヤニヤするのはクラスメイトやカスミ達に見られていたが。
**
宵闇のベールがシブヤ・ジャンクション郊外に降りて、繁華街にネオンが煌めき、怪しげな雰囲気を醸し出す。廃ビルや電柱にてかてかした文字で記憶と感情のカートリッジ売ります、とだけ書かれた紙がたくさん貼られていた。
その他にもネットで人気な配信者や芸能人のポスターが貼られていたり、ホログラム広告のNEO みらいちゃんの動画が流れている。空を飛ぶ配達用の無人ドローンの籠には山積みのカートリッジが置かれていた。
『間違いないな。やはり闇市場の売人はシブヤ・ジャンクション郊外に根城を持っている』
『レオ様、危険です。私のサポートでも危機を切り抜けられない可能性があります』
『うるさい! お前は黙ってみていればいいのだ!』
『レオ様……』
口うるさいラピスとの念話を強制終了し、目を付けていた闇市場に向かおうとするレオに後ろから声がかかる。
「おやおや、こんな所に学生が来るもんじゃないよ?」
「何だ、貴様は!」
繁華街の片隅に水晶を机に置いた老婆がいた。しわしわの皮膚には積み重ねた時間が透けて見える。
「お主は一人で進めば死に、仲間と進めば生きながらえると出ておるぞ」
胡散臭いババアだ。レオは無視して進もうとするが、ラピスが再び念話をしてくる。
『このお方は……裏世界のドンと言われる占い婆と呼ばれる人物に酷似しています。レオ様、どうか再考してください』
う~ん。ラピスがそこまで言うならと占い婆の所に戻る。
「金は払わんぞ」
「ひっひっひ。年を重ねた者の言葉は聞いておきなさい。今回だけ無料で占ってやろう」
「貴様は、裏世界のドンなのか?」
「どうだろうねえ?」
占い婆はしわくちゃの笑顔を見せると水晶に手をかざし始める。
不思議と水晶の中に渦巻きができて、レオも興味を持ち始める。
この老婆が何者でもいいが、無料なら話を聞いてやろう。そんな心持だった。
「お主は記憶と感情のカートリッジを売る売人を追っておるようじゃのう」
「むう。そんな当てずっぽうな質問には引っかからん!」
わかりやすいレオの動揺に老婆はしわくちゃの口角を上げる。
「お主は孤独に生きていると思っているようだが、案外味方はいるものじゃぞ?」
「何だそれは!」
レオは気分を悪くし、立ち去ろうとする。
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