第二十一話 余韻と癒し 榊友斗視点→現在→ハイスクール・シブヤ・エデュケーター
戦火の残る東京を背景にしたリンクフィールドが解けていく。
教会の煌びやかな装飾とステンドグラスに世界が包まれていく。
「何とか勝ったな」
「私たちの勝利。ブイ」
カスミがブイサインをみんなに見せつけるので、五人もそれに習ってブイサインを送る。
六人はクスクスと笑う。
「フフフ、こういうのなんかいいですわね」
「青春、であります」
「こんな危険な青春送りたくないよ」
「全くだ。さあみんな帰るぞ。遠足は帰るまで、だ」
エミリアが最後に喋って、帰る支度をする六人。
友斗は立ち上がろうとするが、体に電流のような痛みが走って立つことができない。
「友斗、私、抱っこする」
「恥ずかしすぎるからやめてくれ……」
それを受けて五人がまた笑う中、エミリアが友斗をお姫様抱っこする。
「さあ行くぞ!」
「エミリア、耳赤い」
「ずるいですわ!」
「ユノはショウを抱っこする、であります!」
「「しなくていいよ!」わ!」
友斗とショウのツッコミが入るが、友斗は体が動かないため抵抗できない。
死んだ魚の目のようになった友斗はエミリアに運ばれる。
隣でギャーギャーとカスミとルナがうるさかったが……。
**
「体がいてえ! 後アカリ、お前は抱き着いてくるな!」
「何を言っているんですか♡ アカリの愛で友斗様のけがを癒してあげるんですよ♡」
「何を言ってるのかわからないのはこっちの方だよ! 治療ポッド内で抱き着くな!」
「友斗君、朝からうるさいよ~。ふわぁ」
「ショウ、お前もなんか言ってやれ!」
「……末永くお幸せに」
「ちがーーう!」
友斗はエミリアにお姫様抱っこされて、寮内の治療ポッドに直行した。
プロトコル・オーバーライドは危険すぎると判断されたため、禁止となったが友斗自身はまた危ない時に使うつもりでいる。
アカリは友斗が運ばれたと聞いて、すぐに治療ポッドに来て、ずっとこの調子だ。
だがアカリの目に涙のような光が溜まっていたのは気のせいではないかもしれない。
治療ポッドの隣には忠犬ハチ公ならぬハチポチ号が隣に来て心配そうにしていた。
友斗がけがをしたと聞いて、友斗の両親は学園内に来て世話をすると言い張っていたが恥ずかしすぎるからと言って、電話で説得したらしい。
友斗は今回の戦いで自分の能力が万能ではないことを知った。同じくナチュラル・ハッカーのショウに対策を聞いてみるのはいいかもしれない。
それにしても、ラブもオーバーライド・ゼロも厄介な相手だった。
七つの信律の幹部は他に六人いる。そいつらがどんなことをしてくるのか想像もつかない。
強くならなくちゃ、と友斗は遠い目をしながら考える。
カスミとルナとユノは治療ポッドの近くに机を持ってきて、ギャースカ言っている友斗とアカリを見ながらお菓子パーティーをしている。
「うーん、カルバーのプロテイン入りチップスは絶品ですわ~」
「これ、美味しい。レイワのチョコスナックもいい」
「ユノは飲めるゼリーが美味しいと思う、であります!」
治療ポッドの隣には秋月レオもおろおろとした顔をしながら友斗を眺めていた。
起きて、歯を磨いたショウはレオに声をかける。
「やあ、レオ君。君も来たんだね」
「ら、ライバルがけがをしたと聞いて、どんなざまをしているか見に来ただけだ!」
「フフ、素直じゃないんだから」
ショウは優しげな顔を見せた後、一転してレオの耳元で不穏な一言を囁く。
「君だよね? ハイスクール・シブヤ・エデュケーターの訓練用AIにネオセントリック教団の幹部、“色欲”を引き入れたのは?」
「な、何を言っている! 俺様ではない!」
「声が大きいよ。良いんだ、その後、監視ログを通常のハッキングで破ったように見せたのは僕だから」
それを聞いて眉を顰める秋月レオ。
「何故お前が? お前は榊友斗側の人間だろう」
「物事ってのはそう単純じゃないのさ」
「俺様はお前のことがわからん」
「君が教団やAI統制機構側の人間にならないことを祈っているよ」
「……」
そう言ってショウは秋月レオから離れる。なぜ秋月レオが三分間のセキュリティの空白を作った後、それを友斗に擦り付けるように友斗の監視ログを書き換えたのか。
それはショウにしかわからない。
「そう言えば、他の行方不明生徒は見つかったが朝霧レンだけは見つかっていないのですわ」
「それ。気になってた」
「ユノは、AIの少女も気になるであります」
そうなのだ。禁書庫内の地下通路を右に曲がっていくルートは結局学園の調査中となっている。朝霧レンと謎の少女は一体どこまで行ったのだろうか。
ちなみに地下通路を左に曲がったネオセントリック教団の仮拠点は調査が進み、危険な空間として閉鎖されている。学園内にその空間ができたのは数年前とのことだが誰が手引きしたのかはわからない。
「AI統制機構かネオセントリック教団が旧図書館棟を改造したのは間違いないのですわ」
「問題はどっちがやったのか、であります」
「AI統制機構、旧図書館棟、扉開けてた。警備ロボット、ネオセントリック教団。つまり、この二つはグル?」
「エミリアが数年前にエデュケーターとして入ってきた人がいるって言ってましたわ」
三人は一旦無言になり、ネオセントリック教団の恐ろしさを考える。
今回は勝てたが、友斗やショウのナチュラル・ハッキングが万能ではないことを知った。
ショウがナチュラル・ハッカーという点も気になる。
エミリアがエデュケーター会議で怪しいエデュケーターを追い詰めると意気込んでいたがおそらく成果は得られないだろう。
「朝霧レンは何をしているのかしら?」
「気になる」
「シブヤ・ジャンクション郊外に行ったのは確か、であります」
朝霧レンは一体どうなったのだろうか?
ハイスクール・シブヤ・エデュケーターは日が陰り、曇り空に包まれていた。
六本の専門講義の塔は雲の中に飲まれていく。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を★★★★★にしてくださると作者が大変喜んで更新頻度が増えるかもしれません。よろしくお願いします。




