第二十話 仲間たちの戦い 綿貫ショウ視点→現在→ネオセントリック教団 仮拠点
カスミとユノとルナが人形データ兵と戦っている頃、ショウとエミリアはオーバーライドと情報戦を繰り広げていた。
リンクフィールドにルナとカスミの偽物が現れる。
フィールドの時間が遅延したり、加速したりする部分ができる。
「ショウ、ルナのエリアに時間遅延がかかってる!」
「今コードを書き換えるよ!」
ルナのエリアの時間が元の流れに戻る。
ルナがショウにサムアップを送ってくるのでショウはちょっと笑いながらサムアップで返す。
ショウは近寄ってきたデータ人形兵を蹴り飛ばして、時間を稼ぐと眼鏡を持ち上げナチュラル・ハッキングでデータの記号と数字の中に潜っていく。
伸びてくるコード触手をガシッと掴んで引き寄せながら、先ほど作り出したウイルスを流し込む。
『グオオオオオオオオオオ!』
オーバーライド・ゼロの分体にまでウィルスは進行し、中のプログラムをめちゃくちゃに書き換えようとする。AIでも痛みを感じるようなウィルスなので性質が悪いものだ。
『この程度!』
オーバーライド・ゼロの脅威は今まで何千人もの人間の演算能力を取り込んできたことによるスーパーコンピューター染みた演算能力とプロトコルの硬さだ。
そのため、ショウ個人の演算能力で作り出したウィルスではオーバーライド・ゼロのプログラムの破壊にまでは至らない。
逆にショウの掴んでいるコード触手から逆ハッキングを仕掛けようとしてくるので素早くコード触手を離す。
「中々プロトコルが固いね。エミリア、どうしようか」
「そうだな……私にナチュラル・ハッキングして、AIの演算能力を利用しろ。奴の喉元に届くとっておきの武器を作り出せ」
「それは、いいです、ねぇ!」
ショウはエミリアに近寄ってくる偽ルナの虚像を殴り飛ばして、眼鏡を持ち上げる。時々虚像に潜んでコード触手を伸ばしてくるので趣味が悪い。
《脳内インターフェース、接続完了。リンク:エミリア。第一制御層》
「手短に済ませます。エミリアの演算能力をお借りします」
「早くしてくれ! 感覚が気持ち悪い!」
ショウはエミリアのエデュケーターの通常のAIより強化された演算能力を使い、オーバーライド・ゼロの分体に届きうる猛毒のウィルスを作り出す。
それは深淵に潜む虚無からこちらを見つめる怪物のような不快さとオーバーライド・ゼロの中の人格たちを檻から解放するためのもの。
「グうううう」
エミリアがうめく中、ショウは0と1と記号を組み合わせ、エミリアの中でウィルスを培養し、とうとう作り出した。
ショウのリンクフィールド内の体から紫色の焔が噴き出す。
『な、なんだ、それは!』
オーバーライド・ゼロはショウの異変に気付き、人形データ兵をショウの元に向かわせる。
狙撃兵もショウの頭部を狙い、銃弾を放つが……。
「効かないよ」
銃弾はショウの紫色の焔に蒸発させられ、何故かスナイパーの手元の銃器が燃え始める。
その焔はスナイパー自身も燃やし始めるとスナイパーは味方のはずの人形データ兵に狙いを定めて撃ち始める。
ゾンビ映画のパンデミックのような光景が広がっていく。
「名付けてエミリアたんの人格開放ウィルスってどうかな?」
「絶妙にきもいわ!」
人形データ兵は同士討ちをしたり、お互いに頷いてオーバーライド・ゼロに向かっていくものもいる。コード触手を出していたオーバーライド・ゼロはそれすら燃やされることに気づいて、攻め手を失っていく。
『クソっ! こうなれば逃げるしかない!』
オーバーライド・ゼロは燃える人形データ兵やコード触手と接続を切り離し、自身の位置情報を書き換えて逃げようとする。
『……大将? それはちょっとカッコ悪いんじゃねえか?』
『な? 貴様は誰だ!』
『……俺はアンタのために教団の衛兵として戦場にまで出た。だが最後にはデータだけの存在にされちまったんだ』
『そんな奴知らん!』
『……俺の名はグランド。あんただけ逃げるなんて許さないぜ』
『グオオオオオオオオオオ!』
五人にはわからなかったが、傭兵グランドの助けもあり、オーバーライド・ゼロは紫色の焔に燃やされていく。
『貴様らのことは覚えたぞ! 特に眼鏡のお前!』
「嫌ですね。僕は目立たず生きていきたいんですよ」
「こんな屑に覚えられるのは嫌ですね」
「オーバーライド・ゼロ、お前たち、絶対、潰す」
「わたくしも同意見ですわ」
オーバーライド・ゼロの像が紫色の焔に燃やされてデータの藻屑となった。
戦場に静けさが戻る。人形データ兵も消えてしまった。
「そんなことよりも友斗が気になる、であります」
ユノの一言にハッとする四人。
オーバーライド・ゼロの像があったリンクフィールド内の所に倒れている友斗に走って近づく。
「友斗、しっかりして!」
カスミが友斗の体を揺さぶろうとするがショウが待ったをかける。
「待って、友斗君の体から白銀の炎が出てる」
「これは……何かのウィルスか? いやウィルスでもないな」
「解析すると、快楽を痛みに変換するコード、であります」
「友斗、何があったのでしょうか」
五人は友斗の傷だらけの体に絶句する。
「おそらく、色欲の幹部にやられたんですかね」
「でも、友斗、起こさないと」
カスミは友斗の体に意を決して触れる。
「#$%&!」
友斗の体に触れると想像を絶する痛みがカスミを襲う。
だがカスミは離れるつもりはなかった。
「起きて、起きて! 友斗、死なないで!」
カスミは痛みに耐えながらも呼びかける。
友斗、すごい。こんな痛みに耐えながら戦ったんだ。
私にはできない。
「友斗、しっかりするのですわ!」
「友斗君! 君は本当にすごい。ここで死んでほしくない!」
「友斗、またエデュケーターとして授業をさせてくれ!」
「ユノはもっと友斗のことが知りたい、であります! もっと感情を揺さぶられる体験を一緒にしたい、であります!」
五人の願いはやがて、電子の海から特別なデータを作り出す。
いや、これは朝霧レンと共にいる少女からの贈り物かもしれない。
柔らかな陽だまりの光が空襲が終わった東京の曇り空から差し込み、友斗に当たる。
「んうう? 俺は倒れて……何が起こったんだ?」
「友斗! 友斗!」
「友斗君。早く自分の肉体のプログラムを書き換えて! そうじゃないと現実に肉体情報を引き戻せない!」
「ん、おう」
友斗はぼやける頭で自身の体にかけていたプロトコル・オーバーライドを解いた。
「友斗! 友斗……うう、ぐすっ」
「なんだ、カスミとルナ、泣くなよ」
「だってぇ」
「ひぐっ、うぅ、わたくしは泣いてなどいませんからね!」
驚いたことにエミリアやユノまで泣きそうな顔をしていた。
「みんな心配かけたな」
「本当に心配した、であります……」
「エデュケーターとして、お前に一週間の休養を命じるからな! グスッ」
ショウは眼鏡を外し、公安監査室としては失格だなと自分を恥じていた。
だが今だけは友斗の友達としていたい、と思った。
空襲が終わり、リンクフィールド内の空は晴れやかな表情を見せていた。
ボロボロになりながらも立ち上がる友斗の顔は晴れやかに見えた。
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