第十四話 禁書庫内 榊友斗視点→現在→禁書庫
禁書庫内は紙の匂いと埃っぽいが荘厳な空間だった。本棚や古文書らしき本が天井に高く積み重なっている。時折風が吹くような幻聴とそれに合わせてホログラムがノイズを走らせる。
「見てくださいまし。ホログラム化された書物もありますわ」
ルナが鋭い指摘をする
デジタル的なホログラムに映し出された触れる文書もある。
友斗はこれはおかしいと感じた。
「外の旧図書館棟にはこんなのなかったぞ。つまり禁書庫は後から作られたということが考えられるな」
ユノとエミリアは本に触れながら禁書庫内の本をどのように読むのかというシステム面が気になっていた。
「禁書庫が後から作られたということは検索機能くらいはあるはずだぞ」
「それが見つかれば、ネオセントリック教団について何かわかるはず、であります」
カスミとショウは残された痕跡を探っていた。
「ここ、小さい女の子の足跡」
「そうだね、僕らくらいの生徒の足跡もある。あ、この先に隠し通路がありそうだけど閉まってるね」
「小さい女の子、禁書庫の管理AIだった?」
「それは鋭いね。うーん、多分そうかな」
ちょっと様子がおかしいショウにカスミは疑問を持つが何も言わなかった。
少し落ち着いてから友斗はこめかみをトントンと叩き、電子の海に潜る。
紙の匂いと古い映画のフィルムが動き出すような感覚の中、禁書庫の中央にあるデジタル的なホログラムにアクセスする。
友斗は0と1のコードを潜り抜けナチュラル・ハッキングに成功する。
するとそこには白のワンピースを着た六歳くらいの少女が立っていた。
「こんにちは。貴方誰?」
「榊友斗だ。お前は?」
「わたしはね、ミレ!」
「ミレ? 独特な名前だな」
「フフフ、そうだね。ここに何しに来たの?」
「俺たちは行方不明になった朝霧レンの行方を追ってここまで来たんだ。後はネオセントリック教団のことも調べたいしな」
「レン兄ちゃんならあたしの本体と一緒!」
「マジか! けがはないのか?」
「大丈夫だよ」
時折、ミレの声が二重に聞こえる瞬間がある。
ミレはポリゴンを電子の海から出現させると、泥団子のようにこね始める。
それはやがて一冊の本になって、友斗の前に鎮座する。
「それは何なんだ?」
「ネオセントリック教団の禁書庫内の情報だよ。これに触れるとネオセントリック教団の歴史と追憶が見れるけど……生身のあなたには情報量が多いかも」
「うーん、でも見てみたいんだ。何とかならないか?」
「友斗兄ちゃんは……脳内にナノマシン化した電子チップが組み込まれているんだね。ならこのプログラムを取り込めば記憶容量とは別に禁書庫内のデータを閲覧できるようになるかも」
要は、禁書庫内のデータにアクセスできる友斗専用のプログラムをメレは今作ったことになる。
友斗は気づいていなかったがこの少女はただのAIではないことは明白だ。
「友斗兄ちゃんは素直でいい子だね」
「お? おう。そうだな」
「よしよししてあげたいけど、レン兄ちゃんのことが心配だからそろそろ戻らなくちゃ」
「朝霧レンは地下通路からどこに行ったんだ?」
「地下通路の分かれ道を右に行ってシブヤ・ジャンクション郊外に行ってるよ。これはお願いなんだけど友斗兄ちゃん達は左に行って欲しいんだ」
「なんでだ?」
「そこにハイスクール・シブヤ・エデュケーターの内部のネオセントリック教団の仮拠点があるからだよ」
ッ! その言葉に友斗は体が恐怖と興奮に包まれるのを感じる。
「私の力だけでは、仮拠点はつぶせなかった。だからあなたたち六人にお願いしたいの」
「おう。任せとけ。絶対潰してやるからよ」
「他の行方不明生徒もそこにいるからね。まだ時間はあるから、教団の歴史と追憶を見る時間はあるはず」
友斗は少しおかしいことに気づく。この少女はまるで未来でも見ているかのように情報を知っている。それに言及すると……。
「私はミレだからね♡ そろそろ行くね?」
「おう。朝霧レンのことは頼むぞ」
「勿論♡ 貴方のみらいに祝福を♡ 後盗み見は良くないよ♡」
ん? 何の話だ? 本を持って、現実世界に戻る友斗。
友斗はナチュラル・ハッキングを終わると急にうずくまったショウが苦しんでいることに気づく。
「ショウ! 大丈夫か?」
「友斗君、う、うん。何でもない」
「ショウ、どうしたんでありますの!」
「大丈夫だから……」
ここで友斗はショウがナチュラル・ハッカーである可能性を思い出す。
だが同じナチュラル・ハッカーである友斗に気づかれずにハッキングできるのか? と疑問に持つ。
小声でショウに話しかける友斗。
「ショウ。お前、ミレにハッキングしたろ?」
「う、鋭いね。彼女は恐ろしい存在だよ。あの子はおそらく……」
何かを言おうとしてまた頭を押さえ始めるショウ。
「ダメだ。何かされたみたいだ」
「ショウ! 大丈夫なのか」
「……ちょっと休めば何とかなる……みたいだ」
「じゃあしっかり休んどけ」
ショウの介抱はルナがやってくれるとのことで、エミリアとユノを呼んでもらった本やミレについて話す。
「なるほど、不思議な少女だな。だが早く地下通路に行った方がいいのではないか?」
「ショウが回復するまで待った方がいい。後この本も気になるしな」
「ユノも、読む、であります」
三人はそれぞれの方法でネオセントリック教団の歴史と追憶にアクセスする。
そこにはどんなことが乗っているのだろうか?
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