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畑と、千年の魔女との出会い

田舎の空気は、都会では決して味わえない澄んだ匂いがします。

そんな空の下、ライルは新しい暮らしを始めようと畑に向かいます。

けれど、慣れない鍬と硬い土に悪戦苦闘。

そこで現れたのは、千年を生きる魔女セレス。

第2話は、ライルとセレスの“最初の出会い”を回想しながら描きます。

王都を離れて三日。

背負い袋ひとつと心細さだけを抱え、俺は小さな村にたどり着いた。

地図にも載らないほどの辺境。だが、畑と森と空の広がりは、あの息苦しい石畳の街よりも、よほど「生きられる場所」に思えた。


朝の空気はひやりと冷たく、吐いた息が白く揺れる。

土の匂い、風に運ばれる草の青い香り。遠くから鶏の鳴き声が重なり、どこかの家から薪のはぜる音とパンの焼ける匂いが漂ってくる。

それらすべてが胸にしみ込み、王都で押し殺していた呼吸をようやく取り戻させてくれるようだった。


俺は与えられた古びた小屋の前に立つ。

壁には無数のひびが走り、屋根には苔が厚く張り付いている。床板はきしみ、窓枠は歪んでいた。

それでも、俺の胸に広がったのは失望ではなく、奇妙な安堵だった。

――ここには、誰も俺を追い立てる者はいない。


「……よし。今日からここで、生き直すんだ」


声に出すと、不思議と胸の奥が少し軽くなった。

荷を下ろし、借りた鍬を手に畑に向かう。夜露に濡れた土が光り、踏みしめるたび靴底から冷たさが伝わってきた。


だが、鍬を握る手はぎこちない。

王都では剣を振ったことはあっても、土を相手にするのは初めてだった。

思い切って鍬を振り下ろす。


ガンッ!


土に弾かれるように腕に衝撃が走り、情けなくよろめいた。

額に汗が浮かび、呼吸はすぐに乱れる。

何度も振り下ろすうちに、土は少しずつほぐれていくが、俺の腕はしびれ、背中は早くも張り詰めていた。


「……これが、畑仕事か」


剣の稽古よりもずっと、身体の芯に響く重さ。

それでも、空は澄み、鳥は囀り、土の湿った匂いは心を落ち着けた。

王都では決して得られなかった“生きている気配”が、ここには満ちていた。


膝をつき、額の汗を拭う。

目の前には、まだ形にならない畝が並んでいる。

それでも胸の奥で、小さな声が響いた。


――悪くない。


そう呟いたとき、不意に脳裏に蘇るのは、あの出会いの朝だった。


陽の光を浴びて揺れる銀白の髪。

森を思わせる緑のローブ。

そして、百年単位の時を宿したような碧眼。


「随分と下手な耕し方をするのね」


背後から聞こえたあの声を、俺は今も鮮やかに覚えている。


あの日、俺はまだこの村に来たばかりで――。


あの日、俺は慣れない鍬を振るい続けていた。

畑の土は固く、何度も弾き返されるたびに手のひらは赤く染まり、息は荒れ、胸は早鐘を打っていた。

それでも諦めたくなくて、肩で息をしながら鍬を握り直した瞬間――背後から声がした。


「ふふ、力任せじゃ駄目よ」


女の声。

振り返った俺の視界に飛び込んできたのは、光を受けてきらめく銀白の髪だった。

長い髪は朝日に透け、淡い青や紫を帯びて揺れている。

深い森を思わせる緑のローブ。その裾を揺らしながら立つ彼女は、ただの村人には見えなかった。


「……あ、すみません。畑を荒らしてしまって」


思わず謝る俺に、彼女は唇を緩めて首を振る。


「謝ることじゃないわ。あなたは王都から来た人でしょう? まだ手に土の匂いが馴染んでいない」


その一言に、胸が跳ねた。

どうして、俺が王都から来たと分かったのか。

見透かすような瞳は深い碧色。歳は二十代半ばに見えるのに、その奥には百年単位の時間を閉じ込めたような静けさがあった。


「俺のことを……?」


問いかけると、彼女はあっさりと名乗った。


「私はセレス。この森の奥に住む魔女。――千年ほど、この辺りを見守ってきたわ」


その口調はあまりにも自然で、冗談にしては落ち着きすぎていた。

千年、という言葉の重さに息を呑む俺をよそに、セレスはしゃがみ込み、土をすくって見せる。


「ほら、この土は硬すぎるの。芽が出ても根が張れないわ」


指先ですりつぶすと、土はさらさらと風に散った。

彼女の仕草はまるで古い友人のように自然で、俺は呆然と見入ってしまった。


「どうすればいい?」


我に返って尋ねると、彼女は目を細めて笑った。


「まずは石を拾うこと。小さな石でも根を邪魔するから。次に堆肥を混ぜて土を柔らかくするの」


声は淡々としているのに、不思議な温かさが宿っていた。

命令でも説教でもなく、ただ導くように。


言われるままに石を拾い始めると、セレスも黙って隣に腰を下ろし、ひとつひとつ石を摘み上げていく。

魔女と名乗った人物が、土まみれになって一緒に石を拾っている――その光景に、思わず笑いが漏れた。


「……魔女って、こういうこともするんだな」


「魔法は便利だけれど、畑は人の手で耕す方が確実よ。土は気まぐれだから」


肩をすくめる彼女に、自然と笑みが返る。

魔女という存在が遠いものだと思っていたのに、目の前の彼女は驚くほど人間らしかった。


「あなた、いい笑顔をするのね」


唐突な言葉に胸がどきりと跳ねる。

視線をそらす俺を、彼女はただ小さく笑って見つめていた。


夕陽が傾き、畑に二人の影が長く伸びる。

そのとき、胸の奥に小さな安堵が生まれた。

王都では決して得られなかった、静かで穏やかな時間。


──そして俺は、この日初めて「ここでなら生き直せるかもしれない」と思った。


日が落ちると、森の空気はぐっと冷えた。

小屋の前に小さな焚き火が灯され、ぱちぱちと木が弾ける音が静かな夜に響く。

橙色の火が風に揺れるたび、セレスの横顔も淡く照らされては陰に沈み、まるで彼女が炎の一部であるかのように見えた。


鉄鍋の中では、干し肉と豆がくつくつと煮えている。

漂う香りは、王都の香辛料とは違う素朴さを持ちながら、空腹をぐっと刺激した。

鍋の蓋を持ち上げた瞬間、湯気が立ちのぼり、肉の塩気と豆の甘みが混ざった濃厚な匂いが鼻をくすぐった。


「ふふ、素直なお腹ね」

俺の腹が鳴る音に、セレスは小さく笑う。

その笑みに赤面しつつも、木の椀を受け取ると、温かさが手のひらにじんわりと広がった。


匙をすくって口に運ぶ。

柔らかく煮込まれた豆はほろりと崩れ、干し肉の旨味と溶け合って舌を包む。

塩気は強すぎず、むしろ体に染み渡るような優しさがあった。

喉を通った瞬間、胸の奥に溜まっていた疲れがふっとほどける。


「……うまい」

気づけば、声がこぼれていた。


「大したものじゃないわ。ただの保存食」

セレスは肩をすくめて見せた。

だが、その表情には小さな誇らしさが滲んでいて、俺はそれに気づかぬふりをした。


二人で並んで焚き火を囲み、しばらく無言でスープを味わった。

けれど、その沈黙は居心地が悪いものではなく、ただ炎と森の音が会話の代わりをしてくれているようだった。

火の粉が空へと舞い上がり、夜の帳へ消えていく。


セレスがふと呟く。

「あなた、まだ顔が硬いわね。王都で何があったのかは聞かないけれど……ここでは急がなくていいのよ」


焚き火の光を見つめる横顔は、どこか遠い時を思わせた。

千年という言葉の重みを思い出し、俺は胸がざわつく。

彼女の言葉は説教ではなく、ただ「生きてきた時間」そのものから滲み出たもののように響いた。


「……ありがとう」

自然とそう口から出ていた。


セレスは微笑み、焚き火の炎に目を細める。

「土も、種も、時間をかければ応えてくれるわ。人もきっと同じよ」


夜風が吹き、木々がざわめく。

その音に包まれながら、俺は久しぶりに心から息を吐いた。

王都で押し殺していた孤独が、ほんの少し溶けていくような気がした。


焚き火が小さくなり、闇が濃さを増す。

木の椀を両手で抱えたまま、俺は空を仰いだ。

そこには、王都では絶対に見られなかった無数の星が瞬いていた。


「……ここでなら、やり直せるかもしれない」

独り言のように呟くと、隣のセレスがあっさりと応じた。


「そうね。土を耕し、種を撒いて、育つのを待つ。それだけでも、人は案外強くなれるものよ」


その横顔は炎に照らされて静かに揺れ、銀の髪は夜風に踊る。

その瞳に宿る星の光を見つめながら、俺は「魔女」と呼ばれる存在を初めて近くに感じた。


この焚き火の夜、俺は確信した。

彼女と共に過ごす日々が、俺にとって新しい命の始まりになるのだと。


焚き火の炎が落ち着き、辺りは橙から深い藍色へと染まっていった。

薪のはぜる音も次第に小さくなり、森の夜気がじんわりと広がる。

俺は木の椀を膝に抱えたまま、しばらく黙って火を見つめていた。


セレスは隣で長い髪を指先に絡めながら、何も言わずに空を仰いでいる。

琥珀の瞳が星明かりを映して淡く光り、風に揺れるその姿は、やはり人ではない何かを思わせた。

けれど不思議と、俺はその沈黙に救われていた。


胸の奥に溜まっていた言葉が、ふと口をついて出た。

「……王都では、息が詰まっていたんだ」


セレスは小さく瞬きをし、視線をこちらに向ける。

「息が……詰まる?」


「競い合って、蹴落として、奪い合うばかりで……。生きてはいても、呼吸ができないみたいだった」

声に出すと、胸の奥にこびりついた重さが少しだけ削れるような気がした。

「朝、目が覚めるたびに胃が縮んで、仕事に向かう足が鉛みたいに重くなって。……そんな自分が情けなくて、それでもやめられなくて」


焚き火の赤が弱まり、影が揺れる。

言葉にした途端、王都の石畳や狭い部屋の匂いが蘇り、喉がひりついた。


「……だから、逃げた」

最後の一言は吐き捨てるように零れた。

逃げた。それは事実であり、同時に自分自身を責める呪いのようでもあった。


沈黙。

けれどセレスは責めるでも笑うでもなく、ただ焚き火に手をかざしていた。

その横顔は静かで、風に揺れる銀の髪が炎の光を受けてきらめいている。


「……正直ね」

しばらくして、彼女は柔らかく口を開いた。

「千年生きても、自分をそこまで曝け出せる人は多くないわ」


「曝け出す、なんて……そんな立派なもんじゃない。ただ……苦しくて」


「いいのよ。それで」

セレスは首を振り、微笑む。

「逃げたから、こうして生きているのでしょう? それは弱さじゃないわ。むしろ、生き直すための強さだと、私は思う」


その言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。

「……強さ、か」

自分には最も縁遠い言葉だったはずなのに、セレスが言うと嘘には聞こえなかった。


「人は、土と同じよ」

セレスは足元の畑へ視線を向ける。

「踏まれて硬くなった土も、時間をかければ柔らかさを取り戻す。雨が沁み込み、風が撫でて、また芽を抱けるようになる。あなたも同じ」


「……俺も、また芽を出せるだろうか」

自分でも驚くほど弱々しい声だった。


セレスは俺を見て、静かに頷いた。

「もちろん。あなたの中には、もう芽吹き始めている」


その瞳に映る自分の姿は、確かに王都で押し潰されていた頃の俺とは違って見えた。

焚き火の炎に照らされた頬は赤らみ、手にはまだ土の感触が残っている。

それは、生きている証そのものだった。


気づけば俺は深く息を吐いていた。

吐き出した空気は夜気に溶け、肩の力が抜けていく。

こんなふうに、誰かに受け止めてもらえる時間を、どれだけ渇望していたのだろう。


「……ありがとう、セレス」

声が震えた。

けれどその震えを隠そうとは思わなかった。


彼女は小さく笑い、火を見つめたまま言った。

「礼なんていらないわ。私はただ、この土地と同じように見守っているだけ」


風が吹き、焚き火の火の粉が夜空へ舞い上がる。

それはまるで星へ還っていく小さな命のようで、俺はその軌跡を追いながら、胸の奥に温かな灯を抱いていた。


──この夜、俺は初めて「ここにいてもいい」と思えた。

千年を生きる魔女の傍らで、王都では得られなかった安らぎを感じていた。


焚き火が小さくなり、薪が赤い炭火へと変わっていく。

俺は空を仰ぎ、思わず息をのんだ。


──王都では決して見られなかった光景。


夜空いっぱいに、星々がまるで川の流れのように広がっていた。

瞬く光の粒は数え切れないほどで、まるで手を伸ばせば掬えるのではないかと思うほど近く感じられる。


「……すごい」

言葉が漏れる。

石畳と灯火に囲まれた都会では、夜空はいつも煤と煙で濁っていた。

けれどここでは、まるで別世界だ。


セレスは星を見上げ、穏やかに微笑んだ。

「この村に来た者は皆、最初に星を見て同じことを言うのよ」


「……本当に、息がしやすい」

深く吸い込んだ空気は冷たく澄みきっていて、肺の隅々にまで沁み渡るようだった。

胸を押さえていた重石が少しずつ溶けていくのを感じる。


そのとき、不意に風が吹いた。

森の木々がざわめき、畑の苗が一斉に揺れる。

葉擦れの音に混じって、どこからか鈴のような音が響いた気がした。


「……今の、何だ?」

思わず辺りを見回す。

だが焚き火の赤だけが心許なく揺れて、森の奥は深い闇に沈んでいる。


セレスは驚いた様子もなく、星空を見上げたまま答えた。

「……この辺りでは、時折“因果の揺らぎ”が起きるの」


「因果の……揺らぎ?」

耳慣れない言葉に、思わず聞き返す。


「人の営みや自然の流れが、ほんの一瞬だけ、ずれるのよ。説明はできないけれど……あなたが聞いた鈴の音も、その一つかもしれないわね」


さらりと口にするが、その声にはわずかな含みがあった。

まるで、それを軽く扱うべきではないと暗に告げているようで。


「……怖くは、ないのか?」


「怖いものではないわ。ただの“兆し”よ」

セレスは振り返り、俺に柔らかい微笑みを向けた。

「畑に芽が出るように、森に花が咲くように。小さな揺らぎもまた、この土地の息づかいなの」


言葉の意味はすぐには飲み込めなかった。

けれど、彼女の声に不思議と安心させられる。


風はやがて止み、森は再び静けさを取り戻した。

だが俺の耳には、まだあの鈴のような余韻が残っている気がする。


「……なんだか、不思議だ」

胸に手を当てる。

心臓は確かに俺の鼓動を刻んでいるはずなのに、その拍動に星の瞬きが重なっているような錯覚を覚えた。


セレスは静かに立ち上がる。

「さあ、小屋に戻りましょう。夜露で風邪を引くわ」


彼女の言葉に促され、俺は未練がましく星空を振り返った。

その瞬間、ひときわ大きな流れ星が尾を引きながら天を横切った。

長く、鮮やかに。


「……!」

言葉を失う。


セレスは一瞥し、まるで予想していたかのように小さく頷いた。

「ほらね。因果は、時に目に見える形で訪れる」


「……願い事をする暇もなかった」

悔しさ混じりに呟くと、セレスは小さく笑った。

「それでいいのよ。願いは焦らずとも、いつか形になるわ」


そう言って小屋へ歩き出す彼女の背を追いながら、胸の奥に小さな火が灯る。

それは不安を完全に消すものではなく、けれど確かに前を照らす微かな光だった。


──あの鈴のような音と、流れ星。

説明できない出来事は、まるで新しい日々の幕開けを告げる合図のように思えた。


小屋の扉を閉めると、外の冷気が遮られた。

焚き火の匂いを残した衣を脱ぎ、藁を敷いただけの寝床に身を沈める。

粗末なはずなのに、都会での石造りの寝台よりもずっと心地よい。


「……ここでなら、眠れる」

小さく呟き、まぶたを閉じる。


耳に届くのは、薪の燃え残りがはぜる音と、風に揺れる屋根板のきしみ。

そのすべてが子守歌のように優しく響き、やがて意識は深い眠りへと落ちていった。


──静かな寝息。

ライルが夢の中へ沈んでいくのを確かめてから、セレスはそっと立ち上がった。


窓を開けると、夜風が銀の髪を揺らす。

月は丸く、白い光を森と畑へと降り注いでいた。

あの青年が眠る小屋も、柔らかな光に包まれている。


「……よく眠っているわね」

囁きは夜気に溶け、星々の川へと吸い込まれていく。


セレスは窓辺に腰を下ろし、静かに瞼を閉じた。

思い出すのは、今日の出来事。

鍬を握る手が震えていたこと。

土にまみれ、汗を流しながらも笑顔を見せたこと。

そして、焚き火の前で素直に「うまい」と呟いたこと。


ほんの些細な仕草の一つひとつが、彼女の胸に温かな灯をともしていた。

──千年という時を生きてきても、人の子の表情に心を動かされることはあるのだと、改めて気づかされる。


けれど、その温もりに触れるたびに、胸の奥に小さな痛みも宿る。

これまで幾度も繰り返してきた光景だからだ。

人は成長し、笑い、やがて老い、土へと還る。

セレスだけが変わらずに残り、記憶だけを積み重ねる。


「……また、同じなのかしら」

吐息のような呟きが夜に滲む。


窓の外では、畑の苗が月光を受けて淡く輝いていた。

その揺れ方は、まるでまだ見ぬ未来を告げているかのように映る。

因果の揺らぎ。先ほどの鈴の音や流れ星も、その一端なのだろう。


セレスは胸に手を当て、そっと目を閉じた。

「……いいえ。きっと違うわ」

言葉は誰に向けたものでもなく、ただ自分自身を宥めるように。


ベッドではライルが寝返りを打ち、かすかな笑みを浮かべていた。

夢の中でも畑に立ち、鍬を振っているのだろうか。

その無防備な横顔を見ていると、千年を生きる魔女の胸にも、ひとときの安堵が宿る。


「おやすみなさい、ライル」

触れることなく囁きだけを落とす。

彼の時間に干渉しすぎてはいけないと、自分に言い聞かせながら。


月光の下、魔女の瞳は遠い過去と、まだ見ぬ未来を映していた。

──都会から逃げた青年と、千年を生きる魔女。

畑と小屋から始まった奇妙な日々は、確かに今、動き出したのだ。


窓の外で、森を渡る風がふたたび鈴のような音を運んでくる。

それは夢と現実の境を曖昧にしながら、小屋の中に静かに溶けていった。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

第2話では「ライルとセレスの初めての出会い」を、少し回想のように振り返る形で書き直してみました。

都会で押しつぶされかけていた青年が、土を耕し、魔女に声をかけられる──そんな小さな瞬間が、物語の大きな始まりにつながると感じています。


次回は、畑の続きと“村の人たちとの関わり”を描く予定です。

ライルの暮らしがどう広がっていくのか、ぜひのんびり見守ってください。


それでは、次もどうぞよろしくお願いします。

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