水の音符
火もつかない穏やかな海辺に睡ろう
シュレッターのゴミ袋が破れる音がして
紙屑が雪のように舞い上がる夜空を見て
何も燃えない穏やかな夜があると
わたしはあなたに手紙を出したい
ダムの管理室から書いているみたいに
押し寄せる水の音だけに耳を澄ませば
本当に向かいたい場所に行ける気がする
水の音符がゆれて
わたしは海岸線を車で走った
夜の美術館に着く
霧雨が降っていた
石畳が外灯に照らされていて
水の音符が光っていた
ただあなたを想っても許されるような
人生の水の瀨にまで辿り着いて
あたたかな雨に包まれながら石畳を歩く夢をみた