ぼくとおばあちゃんの大ぼうけん!
お読みいただきありがとうございます。
「小説家になろう【冬の童話祭2025】」参加作品(短編小説)です。
十二月のある日の土曜日。
ゆうとくんは、公園で友達と一緒に、サッカーボールで
遊んでいました。お腹が空いて来たので、家に帰る事に
しました。
「バイバイ。またね」
「バイバイ」
「バイバイ」
ゆうとくんは、右、左を良く見てから手をあげて、
横断歩道をわたりました。
すると、つえをついたおばあさんが、困った顔をして
立っていました。
ちょっぴりはずかしがり屋なゆうとくんは、
迷いながらもおばあさんに、声をかけました。
「あっ、あの…どうしたのですか?」
「あぁ。スーパーに行きたいのだけれど…
まだ、この町に来たばかりで、良く場所が分からなくてね」
スーパーはゆうとくんが、いつもお母さんと一緒に、
良く行く場所でした。
「ぼく、知ってる。こっちだよ」
「えっ、案内してくれるのかい?」
「うん」
「助かるよ。ありがとう!」
おばあさんと一緒に、ゆっくりと歩き出したゆうとくん。
「何を買いに行くの?」
と聞くと…
「昨日、病院から退院して来たおじいさんのために、
お茶と果物を買いに」とおばあさんは、
答えてくれました。
「良かったね!ぼくのお父さんは、お医者さんなんだ」
「そう。それは、すごいね」
「うん。お父さんは、すごいんだ!だから…ぼくも大きく
なったらお医者さんになって、病気で困っている人を
助けてあげたいんだ」
「えらいね」
「ぼくの家は、この近くなんだよ」
「あら、そう。じゃあ、ここで…」
「スーパーは、もう少し先だよ」
ゆうとくんは、引き続きおばあさんと一緒に、ゆっくりと
歩いて…右、左と良く見てから、手をあげて横断歩道を
わたり、コンビニを右そして、花屋さんを左に曲がり
ました。
「着いた。ここがスーパーだよ」
「本当だね!すごく助かったよ」
「どういたしまして。おばあちゃんも、気をつけて帰ってね。さようなら。」ゆうとくんは、笑顔で手をふりました。おばあさんも、笑顔で「さようなら。本当にありがとう!」と言って手をふってくれました。
ゆうとくんは、来た道を戻って家に帰りました。
「お父さん、お母さんただいま!」
「お帰り」
「お帰り。お腹空いたでしょう」
「うん」
ゆうとくんは、手を洗って急いでイスに座ると、
手を合わせて「いただきます」と言って食べ始めました。
お昼ご飯を食べながら、お父さんとお母さんに、
おばあさんの事を話しました。
「だから、帰って来るのが遅くなっちゃって…
ごめんなさい」
「ゆうと、えらいぞ。良い事をしたな」
「がんばったわね」
お父さんとお母さんは、にこにこ笑顔です。
その日の夜。
ピンポン。
チャイムが鳴りました。
お母さんは、夕食を作っているので、
お父さんが、げんかんに向かいました。
しばらくすると、笑い声が聞こえて…
「ゆうと。こっちにおいで。」
「はーい!」
宿題をしていたゆうとくんは、急いで
げんかんに向かいました
「ゆうと、お客さまだよ」
「えっ、ぼくに?」
「こんばんは」
あいさつをしようと声のする方向を見て…
ゆうとくんは、おどろきました。
「おばあちゃん!」
げんかんにいたのは、ゆうとくんが道案内をした
おばあさんでした。
「ゆうとくん、今日は本当にありがとう」
「どうして、ぼくの家が分かったの?」
「おじいさんに、今日の事を話したら…
とてもよろこんでね。どうしてももう一度、お礼を
伝えたくて…名前も住所も分からなかったんだけど、
お家がこの近くと聞いていて…庭にサッカーボールか
あったから…」
すると、お父さんが…
「実は…おじいさんを知っているんだ」
「えー!どうして?」
ゆうとくんは、またびっくり!
「おじいさんは、ゆうとくんのおとうさんに、
助けてもらったの。これは、おじいさんと私から。
ゆうとくんへのお礼です。どうぞ」
「良いの?」
「もちろん!」
ゆうとくんは「おじいちゃん、おばあちゃんありがとう!」と大きな声で言って、おじぎをしました。
「こちらこそ。今日は本当にお世話になりました」
お父さんそして、少し後ろからお母さんも、おばあさんに
笑顔でおじぎをしました。
「お父さんそして、ゆうとくんにも助けてもらえて…
ゆうとくんは、きっと…お父さんのように優しい
お医者さんになれますよ。がんばってね」
「うん。ありがとう!」
「さようなら。またね」
「さようなら」
おばあさんは、笑顔で帰って行きました。
夕食を食べた後、もらった箱を開けてみました。
中には…クッキーがたくさん入っています。
「わぁーおいしそう!みんなで食べよう!」
ゆうとくんは、クッキーをお父さん、お母さんと
一緒においしく食べました。
「しかし、ゆうとが道案内をした人が、お父さんの
知っている人だったとは…びっくりしたよ」
「本当は、ぼくもドキドキしたんだ。だけど…
おばあちゃんが、すごく困ってたから…声をかけたんだ」
「そうだったのか。頑張ったからおばあさんを助けられた。それは、すごい事だ。お父さんは、うれしいよ」
「うん。おじいちゃんにも、おばあちゃんにも…
ありがとうって言ってもらえて…
ぼくも、本当にうれしかった」
「お父さんもだよ。おじいさんの家は、ケーキ屋さん
なんだ。ゆうとが頑張って、おじいさんも元気になって…
このクッキーは、本当においしいよ」
「本当ね。お母さんも、すごくうれしかったわ」
「ぼく、これからもがんばるよ。そして…
お父さんのようなお医者さんになるんだ」
うれしい気持ちそして、みんなの笑顔を手に入れた
ゆうとくんの大ぼうけんは、これからも続きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。