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排水路

 6クレイル(km)ほどの泥道区間やけど、ソクリョー言うんが結構かかってもうた。

 言うてもウチはそばにイブちゃんがおるさかい、魔力の心配はあらへんし水蛇使(つこ)とるだけ、楽なもんや。


 タケオが何やら紙にデンタク言うんを使(つこ)て書き物しよって、セッケーズ言うんを見せてくれたけど、(えぇ)の他はさっぱり読まれへんねん。


 まあええわ。大体のことは聞いたよって。


「クレア。

 両側行くで。どうせ下りや、道の両側、1歩分(はな)して聞いた通りの丈夫な溝や。

 イメージでけてるか?」


 クレアが頷くんを見て、「ほな、行くで」

 ウチはクレアの土魔法に合わせてイメージと魔力を被せるだけや。


 クレアの土魔法は大体の厚み、形くらいの制御しか、まだ出来(でけ)へんねん。

 細かい寸法言うか、調整と魔力の後押しがウチの役目や。

 ウチ単独では、イブちゃんの魔力借りたかてショボイ土魔法ではどうにもならん……

 あれ?

 これリペアで行けるんちゃう?


 あー、でもクレアが加わってくれよったんがずっと楽かあ。色々手分けできるもんなあ。


 あかんあかん。余計なこと考えてる場合ちゃう。今は集中や。


 路面に立った位置から見える範囲やから、200メルキ()行っとらん代わりに、魔力の消費もグッと少のう済んだ感じや。

 あと2回はおんなじ要領で行けそうやな。


「さあ、次行くで」



 3回やった深さ30セロト(cm)の下り区間は肩慣らしみたいなもんや。

 この先は水路の勾配を付けて、壁の高さが足りなくなって行くんを、地面に合わして伸ばして行かなあかん。

 クレアに細かいこと言うてもそこまで余裕無さそうや。ここはウチが。


「次から壁、高くするんだよね?

 あたし、上手く合わせられるかなあ」


「かめへんかめへん。

 ウチがあんじょう合わせたるさかい、クレアは土魔法の発動だけしっかりやってくれよったらええねん。

 それよりな?

 これリペアによう似とるで。

 作るもんがちゃうし、調整が細かいよって距離は稼げへんけど。

 これ距離を(なご)かったら、頭パンクしそうになるもんなあ」


 リペアもクレアが乗っかった方が、楽に行けるんちゃうやろか?

 ウチはそう思ったんや。


 最初の1回は1メルキ()に1セロト(cm)

 次からは少し緩うてもええ言うことやけど、なんでやろか?


「手前の勾配がきついからな、こっちの緩い水路の水を押し込むんだ。

 それでもなかなか流れないから雨が強いと、ここで溢れるんだ」


 よう動かん水に、勢いよう下る水がぶつかるん?

 それやったら、えろう跳ね散らかしそうやなあ。


 まずウチは水蛇を道路の端に走らせた。

 勾配を見るためや。

 1回分の180メルキ()

 あれ?

 そしたら2メルキ近くも下がるん?


「これ、案外早く暗渠になってまうんやないか?」


「そんなか?

 見て来た方がいいな」


 平らっぽい場所は道路の勾配が分かりにくい。

 タケオの計画では桝が付くんはまだ先のはずやったんやけど。


 言うてる間にクレアが走って行った。


 ガラケーが鳴って、

「こっちの蛇の頭は1メルキより少し高いよ?」


 んん?

 てことは……

 ややこしいなあ!

 地面がこっちより既に1メルキちょい低いんやから、2メルキ下がっても溝は1メルキにはならんってことか?

 これ、()うてる?


 タケオが絵に描いて見せてくれよったんやけど、大丈夫そうやった。


 クレアはもうこっちに向かって走っとるし。


 両側の溝を作って、次からは勾配が緩うできる。

 確かめ確かめ進んで3回目やった。

 途中で壁が足らんようになったんは10セロトや。

 最初の予定通りやったらちょい戻って桝なんやけど、どないする?


「1回は1回だ。少し深いがそのまま作っちまうか」


「壁、(たこ)なるけど、ええん?」


「いいだろ、そのくらい。

 次は桝と横断の暗渠な。

 それでいい時間じゃねえか?」


 ウチが見上げると空の(ひぃ)さんがだいぶ傾いて来とる。

 タケオの言うた通りええとこやな。


 「桝」言うんは1辺1メルキ半の、下に落っこちるような四角い穴やった。

 登り降りするハシゴを作ったり、ドロダメ言うて、溝より20セロトも低う底作ったり。


「これ、落ちたら怪我じゃ済まんよなあ。

 蓋をするか、縁を高く手摺みたいにしておくか。

 それと排水溝との接続に格子は付けられないか?」


 こんなおっきな見えてる穴に、落ちるようなアホがおるんかいな?

 そう思たけど、タケオが怒り出しよった。しゃあない、(たこ)しといたろ。

 格子の方はせやなあ、太なるけどええんか言うたら溝の幅がそこだけ太なってもうたで。

 なんやカッコ悪いやん。


 後で聞いたら大水で古い友達が水浸しの道歩いてて、マンホールとか言う見えへん穴に落ちて亡くなったんやて。

 下から噴き上げた水で掛けてあった蓋がずれとったらしいて。

 それはそれでしゃあないんやけど、対策はしとくもんやて真面目な顔で言われてもうた。


 はあ。


 明日は暗渠の続きや。

 見えへんところに土魔法や。それも面白(おもろ)そうやないかい。

 

   ・   ・   ・


 朝になってタケオが言い出しよった。

「なあ、暗渠だけど、ここから一回り大きくしてもいいか?」


「なんや急に。

 どないしたん?」


「断面が一緒だと、大雨の時に飲めないんじゃないかと気になってな」


「飲むってなんや?」


「2本の水路の水を流せるかって事だ」


「自分、心配症やなあ。

 そんな大雨でこんな田舎道通るんがおるんかい?」


「まあまあ。

 お爺ちゃんは色々あるんでしょ?

 できるだけ言った通りにしてあげようよ。ね?」


 暗渠やけど、10メルキほどの道路横断を昨日やってるさかい、戸惑うことはあんまりあらへん。

 見えへんとこに、道のカーブなりの暗渠(こさ)えるんがちょい難しいくらいや。

 まあ、暗渠は一本だけやし。

 水蛇、上に流して目当てにしたろ。


 やって見るとクレアの土魔法、見えへんとこの空洞が分かるんやなあ?

 次のんやる時に、終わりの場所はここやって当てよった。


 ウチは土の中の水使(つこ)たんやけど、粘土みたいに水の通らんのんがあると、そこから先が見えへん。

 レンガ壁一枚向こうで苦労しとったんが……

 ってあれか?


 あの時、間に入っとったんが空気やからか?

 ウチが水気のない粘土苦手なんと一緒で、見えへんとこの空気はあかんのやろか?


 繋ぎのとこだけしっかり2人で見てな、水蛇目当てに何回か暗渠を伸ばしてったんや。


 途中の低みには、割り込むみたいに桝掘り下げて、暗渠は延々と続くんや。40回以上やで。


 これ見てたかてちいとも面白(おも)ろいことないで?


 ほんでもなあ。

 とうとう分岐の桝や、長かったなあ!


 ここも道路横断入れて向かい側の水を拾わなあかん。


「ねえメグちゃん、この桝すっごく深いよ?

 大丈夫なの?

 ちゃんと谷に水流れる?」


 クレア、案外ビビリや。

 深い言うたかて3メルキもないくらいやん。

 ウチの前に槍1本持って立つ、いつものクレアとはちゃうクレアがおるんやなあ。


「なに言うとるん?

 タケオが作りよった(えぇ)見たやん。

 細かいとこまでウチも分かれへんけど、深さはこんなもんやで?

 ここから谷の斜面の手前で水路が顔出すはずや、心配要らん。

 それより、横断やってまうで!」


 まず道路向かいに桝を掘るやん?

 そこへ向かって暗渠の箱を地中で繋ぐんや。

 深さはこっちの暗渠と同じ、大きさも同じや。


 これでいよいよ、谷に向かってラストスパートやな。


「おーい、昼飯にしないか?」


 タケオ!(きい)抜けるわー!

 腹減ってんのはウチも一緒やけど!


「魔物肉、まだなんかあったっけ?

 しばらく狩、してないよねー。

 そろそろなんか狩りたいな」


「ウチもそれ賛成やわ」


「お前たち、食い気一直線だな」


 言うてみたものの、干し肉の在庫しかあらへん。

 この頃はこればっかりや。


「よーし!

 これ谷まで繋いだら、この辺の赤丸、皆狩ったろか?」


「いいねいいね。小さいけど結構いるみたいだから!」


 そうと決まれば後の作業は速いんや。

 暗渠は谷の斜面のすぐそばまで伸ばしたった。

 だって残りいくらもあらへんのやもん。

 接続は桝一つで済むしなあ。


 ここまで暗渠を大きいしたったよって、斜面の接続のとこだけ幅を取りたい言うてタケオがわがまま言いよる。

 ウチはまあたクレアに宥められて、でけてる分の修正やん。


 まあ、大した手間でもないんやけど、何やろな、あんま面白(おもろ)ない。


「ここはこれでええんか?

 直すんやったら今のうちやで?」


 タケオが頷きよった。

 さあ狩の時間や!


   ・   ・   ・


 何や小物ばっかりやないかい!

 イッカクネズミにシルバーフェレットなんて、何頭居ったかて食うとこなんか、そんなあらへんで!

 フォレストボアが1頭おったよって2、3日分の肉にはなったけど。


 ウチがプンスカするもんやから、タケオが何や申し訳無さそうにしとった。

 イブちゃん置いて林の中、クレアと駆け回っとったさかいなあ。

 危のうてタケオやら連れて行かれへんもん、しゃあないやんか。


 あ。クレアが上手いこと宥めてるわ。

 宥め役やなあ。ウチも自重せんとあかんやろか。


   ・   ・   ・


 朝や。今日は最初の桝に戻って皿型やで。

 暗渠になってもうたとこは、肝心の道路の水を拾とらんからなあ。


 地面を幅1メルキ、厚さ25セロトに固めて大きな皿溝を作るんやけど、高さは道路の端からちょい低いくらい。

 桝との接続は横長の穴を開けて、水が桝の中へ落ちるだけの隙間を残す感じやね。


 何でこんな形かタケオに聞いてみたんや。


「このくらいの段差ならこの緩衝帯に馬車の出入りができるから」やって。


 道の外へ馬車を出してどないするねん?

 このツッコミは言わんといたった。


 その日は皿型で終わりやんか?

 (めえ)で見えるとこは、イメージがしやすい分距離が伸びるんや。


 ほんで続きや。

 流末に近こなる場所や。湿地が左の方にあったんやけど、3クレイル(km)くらいは勾配もあってこっちの谷の方が近いんや。

 これ放っとくと、溢れて街道が水浸しになるんは誰でも分かる。


 それを拾って残りの泥道が6クレイルちょいや。

 湿地は1箇所に水をようさん集めて流すと抉れてまう言うて、集水路を5本も間離(あいだはな)して並べたった。

 それも真っ直ぐ拾うんやのうて、突き当たりに蓋して左右違う場所から流し入れる言う、念の入れようや。


 どこまで効果あるか分からへんて本人も言うとったけどな。


 とにかくこれで泥道の改修は終わりやった。

 ここだけで6日もかけたんや、(なご)使って欲しいなあ。


 最後の方では感覚が掴めて来たみたいでな、リペアもどきをクレアが使うようになったんやで!

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