魔法少女メグ
新春4話目!
「なあメグ、どう思う?
あたしはあっちの森に行ってみたい!」
「なら行ったらええやんか。
イブちゃんに乗っとるんや、どこでも行けるやろ」
「ほら、メグも賛成してる!
行くよ、タケオ!」
賛成ちゃうんやけど、まあ、どうでもええわ。
ウチはトリップの続きや。
・ ・ ・
「あんた、ガリガリやないの。
ちゃんと食べなアカンで?」
お婆はんはウチの体を風呂場で洗いながら言いよった。
そないなこと分かっとる。
誰が好き好んで半日他所の片付けやら掃除やらで真っ黒になって、僅かなカネもろて、そんでもひもじい思いする言うねん。
そんでも雨露凌げる家があって、ろくに知り合いもおらへん、このタイラルクで行くとこなんかあらへんのや。
「ここな、ワテの家ちゃいますねん。
昔の弟子の子がな、何や祭りに誘うてくれて。
ワテはこの北にあるトーヤマ言う村の近くに家があってな?
明日には戻るつもりやってん、あんたも来るやろ?
静かでええとこやで」
その弟子の子言うんはどこにおるんや?
他人やないかい、他人の家で好き勝手しとってええんかいな?
変な人やなあ?
「あ!それでな、クズオやったか?
このタイラルクでは確か、孤児を養のうてる家に補助が街から出るんよ。
一人月に銀貨10枚やったはずや。
たぁだ、それだけもろても毎日2食、食わせたら半分にもならへんからなあ。
他にもなんぞ目的があるんやろなあ」
クゼオやし。
6人で小金貨6枚かあ。大金やな。
この1月でウチたちに寄越したんは銀貨7枚ぽっちやから、あとはクゼオの懐行きかい。
けど、大の大人がそれっぽっちで食えるんやろか?
来るたんびに酔っ払っとったし、お婆はんの言う通り、他にも何ぞやってるんやろな。
それにしてもお婆はん、話がコロコロ変わりよる。
「ウチ、そないなこと分からへん」
それから、大人の着るような大っきな寝間着を着せられて一緒の布団で寝た。
とうとうここん家の人は見んままやった。
翌朝、目が覚めたら、どこやら分からんで、えろうまごついたで。
ウロウロしとったらお婆はんに見つかって、連れて行かれたんは居間。
これが居間やで。
あんな何にもないだだっ広いのんは居間やない。
長椅子があって飾り棚もあって、両脇にカーテンのある大きな窓から陽が差しよって。
ダブダブの寝間着のまま椅子に座らされて、お婆はんが運んで来よったトレイには昨日とは違て、朝ご飯が載っとった。
朝ご飯やで?
随分長いこと会うてなかったなあ。
「さあ、食べやん」
行儀悪いでとか言われながら、ウチ、ガツガツ食うてもうたわ。
味なんか覚えてへん。腹に入るだけで幸せやった。
食ってもうて、皿の上が空になってくんが悲しいくらいやってん。
「そないな顔せんといて。
ワテのとこは3食やから。
また、お昼にな?」
それからなんぼか体に合う服着せられて、サンダル履きでタイラルクの街に手引かれて買い物や。
買うたんはウチの着替えやった。服が3着、下着に靴下、靴に背負う形のバッグ。
買うた物はそのバッグにみんな入りよった。
それだけ買うんに、何軒も回ってウチはクタクタやん。
何であないに何軒も見て歩くんか分かれへんけど、買うてもらうんはウチの服やから、文句も言わんと付いて歩いたで。
「もうちょっと頑張ってんか。
美味しい店に連れてったる」
美味しいってもしかしてお昼?
お昼ご飯なん?
ウチが犬やったら、尻尾がぐるっと回って腹を左右からパシパシ叩いとるんやないやろか?
お婆はんが言うた通り、お店の料理は美味しいて、ウチのほっぺは緩みっぱなしやった。
朝食うたんがあったから、ここでは味がよう分かった。
あの味は今もよう覚えとる。
何食うたかまでは覚えとらんのやけどなあ!
それで、街の家に戻って借着を脱いだら買うた物を着た。
とうとう家の者は一人も会わんと、乗り合い馬車に乗ってトーヤマ村に向こたんや。
ほんま、どないなっとんのやろか。
あの時はそう思たけど、今ならちょっとは分かる。
知っとる者は、このお婆はんに関わって機嫌損ねるんが怖いんや。
多分やけど放っとくんも怖いから家だけ好きに預けよったんやろ、今やったらそやないかとウチは思ってる。
トーヤマ村は山合いの村やった。
川がそばを流れて、狭い畑があって道はそこで行き止まりやった。
ぐるっと木の柵が囲んでおって、家は50ちょっとあるやろか、250人ほどの小っさい村やった。
お婆はんは村長やと言うお爺はんに挨拶したあと、西の狭い門から川沿いに歩いていきよった。
馬車がやっと1台通れるくらいの狭い道を1時間や。
陽が暮れる前に道を折れて山へ分け入る。
山はそう大きゅうなかったよって、いくらも行かんと頂上やった。
そこは広く木の無い場所で、ポツンと如何にもお屋敷って感じの建物が一軒建っておった。
ウチの師匠、サナエはんのお屋敷やった。
ウチはここで8年、15歳になるまで修行をすることになるんや。
・ ・ ・
「ワテはなあ。
木が好きなんや。
樹木はええでぇ。地面からこの世界を巡る力を得て、それを天に向かって放ってくれるんや」
何を言うとるんやって思うやろ?
ウチは今でもこの言葉はよう分からん。
けど師匠はこの考えで、あの山のてっぺんを切り拓いて、あの屋敷をあそこに建てたんや。
生半可な話やないんは分かるで。
ほんでな、修行は色々あったけど、細かいこと言うてもしゃあない。
1個1個、言われたこと、でけることをやって、やれんことはつぶす、その積み重ねやから。
魔力を増やす方法言うんもあるにはある。
けど、何人も育てる中で合う者もおれば合わん者もおる言うことが分かって、お弟子はんには皆それぞれ見つけたったらしい。
ウチの場合も7年目にこれならどうや言うて、効果があるかは今検証中や。
ずっと続けて3年目やから、ぼちぼち増えてるような気はするんや。
師匠の歳?
ウチも聞かんようにしとるんに、自分、ええ度胸しとんやな?
ウチは絶対、200超えとる思てるよ。
あの屋敷かて築100年じゃ利かんもんなあ。
他のお弟子はんには会うたことないで。
全部やあらへんけど、どの辺におる言うんは聞いたけどな。
ウチが知ってるんは8人だけや。他にもようさんおるらしいけど怖くて聞けへん。
優しいお婆はんや思て、うっかりした事聞いたら大変や。
ウチはいっぺんで懲りた。
って!
トリップ中に何ビビっとんのや自分?
それでウチの得意魔法やけど、実は水魔法や。
限度はあるけど、水を生み出せる。
そして動かせるんや。
「土を凍らせてなかった?」
氷?
あれは動き、止めてやると凍るんやで?
コツがあるんやけど何でかは知らん。昔のお弟子はんが見つけたんやって。
逆をやるとお湯になるんやで。
他には初級までやったら火もいけるし土も大丈夫や。
風は弱いなあ、涼む程度やなあ。
「雷はどうなんだよ」
得意やて自分で言うてるけど、雷はちゃうんやで。
あれはな、空中に霧みたいなごっつう細かい水をようさん浮かべるんや。
で、むちゃむちゃ掻き回すとパリパリが始まるんや。
そこまでは師匠が教えてくれよった。
「うっかり近寄ると火傷するでえ」って言うてたなあ。
火傷って何や?
そうウチは思たんや。
パリパリがどこまで行けるか見となるやんか?
幸いウチは、距離がそこそこ離れとっても水のコントロールが出来るんや。
まあ、そう仕込まれたんやけど。
そんなわけで、誰もおらんのんを確かめて、高い上空でやってみた。
凄かったで。
ビカァ!ドカン!やからなあ。
やったウチが一番ビックリしたわ。
黒雲が高いほど威力が出るんや。
その分魔力を使うし溜める時間もかかるんやけどな。
上級クラスの魔力が要るんはもう、自然の雷と変わらんで?
違いはウチのは単発で、狙ろた辺りの背の高い物に落とせるくらいやろか。
それ考えたら自然の雷のあの連発は物凄いんがよう分かる。
もちろん師匠にはコッテリ絞られたで。
山二つ向こうでも音と光で大騒ぎになった言うてなあ。
15歳になってその夏やったなあ。
「魔女のワテが育てた弟子はアンタで……
何人目やったかいな?
ちょっとボケがきたんかいな、今度集めて数えてみたろか。
まあええわ。
もうメグも一端や。
今使こてる杖はもう合わん。
新調したよってこっちを使い。
追々は自分で作れるようになるんやで。
あとはえーと、これや。
魔女の正装と言うたら鍔広黒帽子にケープ、とんがりの靴や。
餞やから持って行き」
「師匠!今までおおきにや!
で、ウチ魔女になるんか?」
「魔女言うんはの。
威厳が必要なんや。
メグは威厳が足らんよってそうやな……
魔法少女と名乗っとき。
それとな、魔力が上がるほど歳とるんが遅なるみたいなんや。
アンタの外見はしばらくそのままやで。
変わるんは、太るか痩せるかだけやな」
ウチはこの時また、師匠の歳に疑問を深うしたんや。
歳とるんが遅いって、あの見かけ70過ぎになるんに何年かかったんやろか?ってな。
あとな、師匠は黒や言うてたけど、あれ、紺やねん。
目大丈夫なんやろか?
黒っぽいのがええ言うことにしといたろ。
「なるほどなあ。
それで魔法少女って訳か」
ん?
「何でそこで合いの手が入るんや?」
「メグがなんか語り出すから聞いてたんだけど?」
目を開けるとウチはタクシーの後席に収まって、停車中。
「何?
ウチ、語ってたん?
どっから聞いたん?」
師匠のことバラしたら何されるか分からんで!
「得意魔法が水だってところからだよ。
すごいんだね水魔法って!」
んー?
要らんこと言うてないやろなあ?
「せやで。水魔法は凄いんや」
「なあ、メグ。出せる水って空中の蒸気を集めてるのか?」
「ジョウキって何や?」
「蒸気を知らないのか。
お湯を沸かすとだんだん量が減るだろ?
あれは水が空気の中に飛んでいくんだ。
空気が冷たいと湯気が見えるんだが、あれも蒸気だな」
「そうなん?
タケオって学者はんやったん?」
「いいや。
俺はタクシードライバーだ。
職業運転手だよ」
「それ、前に聞いたよ」
クレアが言よるけど、ウチ、そんなん聞いとらんで。
「よう分からんけど、その蒸気やったらどないて?」
「雷の狙いの話だ。
的の方から集めた水を糸みたいに伸ばしていけば雷を誘導できると思ったんだ。
だが、その水の元が蒸気だったら電気が通らないから上手くいかんなと」
電気て何や?
「よう分からんけど、水の糸でお迎え言うんはオモロいなあ」
「雨の日だったら、雨を集めてお迎えすれば上手くいくと思うんだが」
「雨かて水なんは一緒やないんか?」
「あれは空気中の不純物を取り込んでるはずだ。電気を通すから蒸留水とは違う」
何やフジュンブツて?
ジョーリュースイ?
まあた違うのんが出て来よったで。
「フジュンブツて何や?」
「まあ細かい塵、土の細かいやつとか花粉、胞子なんかだな。
それを核にして蒸気が水になるって話だ」
聞いたかてよう分からん話やなあ。
「ジョーリュースイはどないや?」
「それはお湯を沸かして時に出る、湯気を集めて水に戻した物のことだな。
不純物が入ってないから、その水は電気を通さない」
湯気を水に戻したら一緒ちゃうんか?
やっぱり電気言うんがよう分からへん。
「ううー。
頭、爆発しそうや。
ウチには分からへんで!
こう言う時はやってみるに限るで!」
10分後に次話行きます




