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アビリティ

4話目!

 窓から見上げる月についてクレアが教えてくれた。


 空には6個の月がある。

 青い月、赤い月、緑にオレンジ、真っ白な月に暗い月の6個が空の同じ辺りを通るそうだ。

 今見えているのは青い月で、薄い青色の半月だと言うんだが、小さいのか暗いのか、指差す先に目を凝らしても俺の目ではよく見えない。


 その後に出て来た白い月ははっきり見えた。


 焼肉の晩飯から片付けをして、眠くなるまで前席にクレアと二人並んでカーナビについて検証している。

 オークの3D表示とか、よく分からないことがあったからだ。


 理由としちゃ、僅か1日の付き合いだが、助手席にクレアを乗せて旅をするのも楽しそうだと思ったってのもある。


 さてカーナビだが、まずアルファベットで20文字はあったような製造メーカーのロゴと名前が消えて、代わりに「イブちゃんカーナビ」と表示されていた。


 なんじゃこりゃだがまあそれはそれとして、メニューにある機種情報の欄では

 LV4.0

 機能一覧

  1、地図表示

  2、案内機能

  3、地図更新

  4、索敵情報

  5、モンスター情報

  6、メンバー情報

 とある。


 アニメでやってた「すてー……?」

 半透明のプラ板みたいのに、自分の性能が数字で出るって言うやつだ。

 それと同じようなのが画面に出ている。


 カーナビとゲームの画面。


 似たようなものか。


 LV4.0とあるがまあそれはどうでもいいだろう。

 一覧の上二つは通常のカーナビ機能だ。

 3の地図更新も、web更新とか言うやつで聞いたことがある。

 この世界に、インターネットなどないだろうことを気にしなければだ。

 しかし白紙の画面から通った道を自動記録ってのはちょっと見ないか。


 後の3つは見たことも聞いたこともないものだ。


 4の索敵と言われれば、オークが赤い丸で表示されたやつだろうか。

 周囲の魔物が表示できるのであれば、それはそれで助かると言うものだ。

 あの後、ポリゴン表示になって膝にバツ印があったのは、5のモンスター情報なのかとも思う。

 あれは正直、助かった。けどもっと説明があれば良いとも思うところだ。


 なおカーナビは日本語表示でクレアには読めない。

 今日のところは俺が全部文字を読み上げている。


 さて6のメンバー情報とは?


 メニューに戻って上から見ていくと、確かに「メンバー情報」と書かれたボタンがある。


「メンバーって、あたしとタケオのことかな?」


「そうかもな。

 でもたまたま一緒にいるだけのような気もするな」


「そうだよね。家族ってわけでもないし。

 あたしが助けてもらったのは確かだけど」


 いろいろ言ってても埒が明かないので、内容を見てみよう。


 押すと表示が切り替わり、

 オーナー :飯山健夫(68歳)(NON)

 タクシー :イブちゃん   (Lv2)

 メンバー1:クレア(16歳)(Lv7)


「何だこれは?

 クレアも登録されてるな。

 これは俺か。

 オーナー :飯山健夫(68歳)(NON)」


「タケオて68だったんだ」

 何をそんなに驚くのかと思えば、60過ぎの人が滅多にいない。

 そしてそんな人は外に出るだけの体力がない。

 クレアによるとそれがここらの常識だそうだ。


「いや、そこはいいから。

 それよりLvって?

 あ。レベルか?ゲームなんかで出るやつ」


「ゲームって?」


「まあ遊びだ。

 説明は難しいな。俺はそんなにやってないし」


「ふうん?」


「レベルってのは、モンスターを倒したりすると、強くなるんだ。

 体力だったり、魔力だの攻撃力、防御力。

 知力なんてのもあったか」


「あたし、オークが死んだ時強くなったよ?」


「何だって?

 この世界にはゲームみたいなレベルアップがあるのか?」


「さあ?

 何その…ゲーム?レベルアップ?」


「うーん……クレアの項目を見てみよう」


 そこにはクレアの能力が数値化されて並んでいた。

 聞くとこれまでイッカクネズミやゴブリンを倒して、ちょっと強くなれた感じはあったと言う。

 そう言う現象は冒険者の間では結構聞く話だそうだ。


 ところが今日のオークは違った。

 前回の成長感の何倍も強いもので、急に体調が悪くなったのかと思うくらいだったとか。


 HP、MP、その他何種類か並んでいるが、馴染みのない俺が見てもさっぱりだ。

 HPが60、MPは26とあるが、多いのか少ないのかも分からない。


 下の方に槍術1 とあったので槍は得意なのだろう。


「クレアって魔法が使えたりするのか?」


 な訳はないと思うが、確かMPは魔力量だったと思う。

 ダメ元で聞いてみた。


「ギルドで調べて貰ったけど、ダメだって」


「そうなのか?

 じゃあMPは魔力じゃないのかな?」


 ていうか、魔法、あるんだ!



 タクシーはイブちゃんで登録されたようだ。

 Lv2と言うんだが……

 うーん。見ても分からん。

 防御結界と柔走行ってのが下に書かれている。

 これはあれか?

 加速や減速にめちゃくちゃ気を使って運転したからか?

 タクシーの性能ってより、俺の運転技術じゃないの?

 防御結界ってのは多分イッカクネズミや狼を弾いたやつだろう。


「何か、アビリティ追加ってのがあるな」


 アビリティが何か分からないが押してみると、

 ジャンプ、タイヤ径変更 の二つが表示されていて選べるようだ。


「ジャンプってなんだろう。

 クルマはジャンプなんかしないんだが。

 タイヤ径か。

 大きくすれば車高が上がるから、枝を乗り越えられるか。

 けどタイヤハウスに引っ掛かるんじゃないのか?」


 タイヤハウスと言うのは、ボディの一部をへこんだ形状にして、タイヤが収まるようになってる部分のことだ。

 クルマによってタイヤのサイズが決まり、それに合わせたタイヤハウスに設計される。

 大きな改造になるのでそう簡単にはできない。シャシどころかボディまでいじるなんてな、やるなら専門の改造工場じゃないと。


 うーん。こんなこと、できるんだろうか?




 昨夜はそんなことがあって、今朝起きたら雲がちな朝焼けの光の中でグレイウルフが2頭、近くで死んでいた。


 オークの血臭に寄って来て、タクシーに突っ込んで弾かれたって感じだ。

 被せた土が一部荒らされていたので、生き残りは収穫があったと言うことらしい。


 結構な騒ぎだったろうに、車中で呑気に寝ていた俺たちの危機感のないことを嘆くべきだろうか。


 クレアは周囲に気配はないと言うが、カーナビの索敵を入れて見る。

 確かに近くに大きいのはいない。

 小さい反応は2つあってそこそこ離れているからすぐの危険はないようだ。


 クレアはグレイウルフの毛皮と魔石の回収に行った。

 俺はタイヤ径変更というのを試してみる。

 タイヤハウスを見ると擦らず大きくできそうなのは、半径で4cmというところだ。

 その目一杯のサイズ変更を掛ける。


 変更しても、車中からは何の実感も感じない。

 降りてみると、あれ?

 タイヤハウスの隙間が変わってない。

 んー?

 もう一回やって見よう。

 ジャンプの方はグレーに変わっていて今は押せないみたいだから、タイヤ径は選択されているよな?


 タイヤ径8cmの増大でいいんだよな?

 確かに変更した。


 降りてみる。

 やっぱり変わってない……あれ?

 タイヤが大きくなってる?

 ボディとの隙間は変わってないのに?


 腹の下を覗き込むと確かに大枝との間隔が空いていた。


「おおー。やったね」


 これなら抜けられるかもしれない。

 早速、前進にギアを入れ、じわっと前へ。

 ドスンと左後輪が枝に当たり、スリップ感がある。

 無理に回すと穴を掘って埋まるだけだ。


 すぐにバックに切り替え、ゆっくり後ろへ。

 60cmくらいで今度は右の前輪が当たった。

 同じ事を2回繰り返して、前輪の当たる反動を利用するように素早く前進に切り替え、ごく軽くアクセルを踏み込む。


 そうすると2回の往復で踏み固められ、グリップを増していた地面はその軽い加速に耐えてくれた。

 枝を左後輪が半ばまで乗り上げた所でスリップ感が返る。


 ここで無理に回さないのがこういう場合のコツだ。無闇にアクセルを踏むとタイヤと同じ大きさの穴を掘るだけなのだ。

 その穴にはまってしまえば、もうにっちもさっちも行かない。

 さあもう一回だ。


 今度は上手く乗り越えた。続いて右の後輪が当たるはず。

 枝を乗り越えた所でスピードが若干だが上がっている。

 できればこのまま乗り越えてしまいたい。


 俺の願いが通じたのか、右の後輪は一発で枝の丸みを踏み越えた。

 その後、更に前へ数m走らせ、自然に止まるように俺は停車した。


「タケオ。さっすが!

 押そうかと思ったけど上手く抜け出せたね!」


「何年この商売やってると思ってる」


「100年!」


「んな訳あるか!」


「剥いだ毛皮積むから待ってて。

 けど魔石が出ないのはなんでだろ?

 グレイウルフだから期待してたのに。

 そういやイッカクネズミにも魔石がなかったんだった。

 あたしが倒したわけじゃ無いから良いんだけどね。

 それよりもさ、今日は大漁だよー」


 俺のツッコミなんか、ほぼ効果なしだ。

 まあ嬉しそうで何よりだが。


 タイヤはこのままで行くか。

 大きい方が何となくだが、地面のグリップがいいような気がする。

次回はいよいよ町へ行きます。

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