テルクレフト通信
人物紹介 (本編はこの下にあります)
セトラーニャ セトラーニャ探査分隊 船長
カラギッティ 分隊員 機器担当
ナイケックト 分隊員 渉外担当
カリカタル 分隊員 機関担当
それぞれ種族はレッグス 年齢不詳
SC806星系4番惑星 テルクレフト山頂 溶岩洞窟内に故障した探査船を置き探査中
飯山健夫のタクシー召喚は転送装置の誤作動によるもの
その際タクシーの電子回路を改造 アップデート可能とした
現在は惑星を覆う網状エネルギー流に付いて観測中
メアリが索敵画面が青いと言い出してから、毎日のようにロププテラーが飛来する。
毎回襲って来るわけではないが、上空で旋回されると鬱陶しいことこの上ない。
とは言え落とした3頭のロププテラーは、高値が付きそうで嬉しいっちゃ嬉しい話なんだ。
メグがロププテラーから漂うように上空へ登る青い光を見たと言っていたのも気になる。
一発目の雷がすり抜けたように見えたとも言っていた。
俺が見たサンドドールの頭からも似たような光が上へ伸びていた。
あれと係わりがあるんだろうか?
「やっぱり青い網が架かってるせいじゃないの?
あいつらの通り道だとか」
なるほどと思わせるクレアの意見だが。
そうかも知れない。
「今日も来たみたいですよ!」
やや広域にしているメアリの索敵はクレアより発見が早い。
いつも通り北西方向の上空を警戒する。
広域にしているだけあってこの回には姿を見せず、次の架橋作業に向け移動して。
索敵画面を見せてもらうと結構近い?
俺たちが移動した分、後ろを通る感じで光点が移動している。
「なんか逸れてる?
気を付けて見てて」
それより気になるのは3つのワームらしい光点だ。
南東方向だったな。
俺とステスで2対1で分け合って解体に回すと、メアリが
「ロププテラー止まりました。5ジ方向です。
ちょっと離れてます、これどのくらいだろ?」
「光点を長押ししてくれ。
メニューが出ないか?」
「あっと、距離出ました。
320メルキ!」
「ちょっと遠いな。
止まったってことは地面に降りた?」
「全然動いてないです!」
じゃあやっぱり降りたんだ。
「5ジになんかおるで!」
上からメグの声が降ってくる。
砂漠は山や丘は無いけど風で移動する砂丘がある。
そこの砂斜面を登れば見えるんだろうか?
だが俺ひとりで行くわけにもいかない。
「アレが動かんのやったら先、桁架けてまうから待っとき!」
作業は10分かからない。
終わるとバタバタとタクシーに乗り込んで移動だ。
荷車を外し砂丘をフセーチで乗り越える。
空しか見えなかった前方が、砂丘の幾つもの畝を見渡す広い視界に変わる。
そして眼下には広い窪地のような場所に、翼を半開きに下を向いて歩き回る黒い影、ロププテラーが居た。
「何してんだろ?」
「鳥が地面の餌を突いてる?」
ああ、そう言われるとそんなふうに見えるか?
あのでかい図体で?何を突いてるんだ?
斜面を下って近付くと、足で何かを踏み付けクチバシで引き千切るように裂いて、上へ放るように飲み込んでいる。
青黒い体液を散らす砂色の皮。
「アレ、なんか見たことある」
ステスが言う。
俺もそんな気がする。
毎日狩ってるアレじゃないのか?
「どうもそうみたい。
ワームの群れを餌にしてるみたいよ」
メアリが指す索敵画面にはまだ光点が並ぶ。
地中の、見えていないニストワームだろう。
たまたまなのか、俺たちが集めるニストワームを狙って飛来してるのか?
「どうする?」
「ウチら狙って来たわけちゃうけどな、アレ」
「別にいいじゃない。
アレって高値付きそうだし」
クワッ
「あ、気付かれた?」
メアリが言う。
翼を大きく広げこちらを威嚇するように伸び上がるロププテラー。
でかい!
メグとクレアがスライドドアを開けて降りる。
俺も運転席から外へ出た。
クレアはもう槍を構えている。
メグの方は地下の水を上げるのにもう少しかかるか。
俺は急いで槍をハンガーから外した。
翼を半開きに戻し強く羽ばたくロププテラー。
砂塵が巻き起こって押し寄せる。
砂つぶがピシピシ結界に弾かれ攻撃と認定されたようだ。
視界が一面砂になったところでドンと!軽い衝撃があって、砂塵が収まっていく。
さらにばさっと言う音が左前方から。
砂の目潰しからの突撃だったらしい。
蹲るように砂に伏せるロププテラーは片翼が曲がって見える。
弾かれ落ちた時に折れたのか。
「なんや青いのが見えへん?」
それは俺がサンドドールに見た青い光だった。
いつのまにか空は曇っていてはっきり見える揺れる紐のような光。
「索敵でここだけ青が強くなってます。
なんだろこれ……」
メアリが助手席から言った。
鈍色の空から青く太い光の柱が降りてくる、目の前の光景に外に居る俺たち3人は声も出せない。
長く感じたがそれは一瞬だったらしい。
「青い点が消えました。
ああっ、他の赤い点も消えてます」
「あれ、ほんとだ、消えちゃった。
ずっと見てたのに」
ミトアの声だ。
けど消えたって何が?
「ロププテラーどこへ行きおった?」
「ニストワームもいなくなってる」
俺も視線を窪地へ向けたがそこにはなんにもなかった。
「あちゃあ、素っ空振りやん!」
「ほんとに何もないね、どうなってるの?」
「さっきの青い柱が全部持ってっちゃったのかな」
「けどやで、何の断りもせんと総ざらいってなんやねん」
「メグ、言ってもしょうがないだろ。
天に向かって唾吐くようなもんだ」
「なんや、天に……
自分の唾が顔に落ちてくるやん、ええ加減にしとき!」
「ハイハイ、漫才はその辺でね。
帰るよ!」
・ ・ ・
すごすご戻って釈然としないまま架橋は続行、あの方面のニストワームはほぼ索敵から消えた。
で、その夜のこと、狭い車内に聞き慣れない「ピロリン」が響く。
クレアがスマホを見て「動画配信?」と呟いた。
「いつぞやのアレやろか?」
なんだよアレって?
メグがクレアと顔を見合わせ
「ええんやないか?」と言った。
「でも誰が出るんだろね。
おじいちゃん来るかな?」
二人で笑い合う。
クレアの操作で『配信』とやらがはじまった。
ブウゥン。
低い音が車内を満たし、ルームミラーの位置に淡い光球が現れた。
「何だ?ルームミラーが光ってる?」
「慌てんでええよ、タケオ。
テルクレフト山から来てくれてん。
ええと、なんて名やったか」
「わたしはナイケックト。
今いる場所はテルクレフト山の山頂だ。
今回はこの惑星を覆う網について検証するため連絡をしている」
軋みの混じるやや高い声が車内に響いた。
「おまえたちの居る場所は、その網から地上に根を下ろす特異点に当たる。
今日起きたことはその特異点に対し、なんらかの干渉を行うことができるかの実験だ。
特異点を通じて我々は地上の生物のサンプル採取を行うことが出来た。
その場におまえたちが居合わせたのは想定外だった。
この特異点に対する干渉は、今のところ我々の端末の一つである車両の近隣でしか起こせない。
であるから今回の移動で実験を行えたのはその第一歩となる」
「なんや、ウチらの獲物横取りしたったんはおまんらかい」
「横取りではなく採取である。想定外であると説明した」
ウググと唸るメグをクレアが宥める。
「今後もこのような特異点との邂逅の機会には協力を願うこともあろう。
まだ確定では無いが、特異点を経由して車両の移動が可能になるやもしれない。
それほどの可能性のある実験であったことを申し添えておく」
「移動って前にカーナビのアビリティに出てた『ジャンプ』か?」
「そんなんあったん?
ウチ見たことないで?」
「結構前から出なくなった。
使わないからかなって思ってた」
「それはこちらの先走り、言わば手違いだった。
まだどうなるか分かってはいない」
「サンプル採取と言っていたがああ言うのはまだ必要なのか?」
「継続して必要となる。
食糧の備蓄は優先されるのだ」
「タケオの身体が若くなった時から、ずいぶん間が空いたようだけど?
それってどうなってるの?」
「そちらの言葉に合わせると、地上のものとは時間の流れがやや異なる。
我々も他にすべき事があり優先されるものも別にある。
これで答えになっているか」
まったり生きている上に、他でお忙しいってか。
「そろそろそちらの魔石が消耗する頃だ。
連絡を終える」
途端にビーッと鳴る警告音。
俺の前の計器ボードにEMPTYの警告出ていた。
「あーっ!
魔石、こっちの使ってんのか!」
「多分こっちのもよ。
前回はスマホでやり取りだったけど、魔石はかかってないはずだから、その分は向こうでやったんでしょ」
「でも1セロト魔石5個も入ってたんですよ?」
「なんやそれ、燃費悪!」




