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ゼレンシア

 やっとテオドラ砂漠の出発点に戻ってきた。

 メアリがカーナビの旗上げを頼りに、荷車を埋めた位置まで誘導する。


 ないと不自由だってのに何で埋めたんだったか。


「やっといてよかったね、目印なんか何にも分からなくなってるし」


「せやなあ。岩の削れかけが3本集まっとったはずなんやが、みな崩れてもうてるよって」


「タケオが登録しといてくれたからね。ありがとう」


 なんて礼を言われてもやったのは子供だった俺だ。

 今となってはまるで実感がなくて、何と返して良いやら。


 けど、何で俺が元はジジイだって教えてくれなかったんだろうな?


 クレアとメグにこそっと聞くと、

「あー、せやなあ!

 何遍か言お(おも)たこともあるんやけどなあ?」

「うん。

 でもね、すっかり子供なんだよ?

 ヒネたとこなんて欠片もないんだもん」

「あれは言えへんやったで」「絶対ムリ!」

 なんて返事が返って来た。

 子供の記憶自体、なんか曖昧だし今更だがな。


「もう少し先、あの辺りかなあ。

 本当にわかんなくなっちゃってますね」


 大体の位置まではカーナビで突き止めた。

 メグが降りてその辺を歩き回る。


 荷車にはいろいろ付与魔法をかけたので、上を通ればその残滓が分かるんだって。


「ここやな」

 そう言って地面に隠しから取り出した短い杖をメグが向ける。


 埋める時はクレアの土魔法で大雑把に土を被せていたが、掘り出すとなると細かい作業になると思うんだけど。


「まあ見ててみい」


 杖を構えてからちょっと間があって、5メートル四方くらいの土がむずと持ち上がる。

 膝下くらい上がると角が崩れて周りに広がる。

 あれは多分、水の網で根こそぎ上げているんだ。

 水は砂地の下の方にいくらでもある。

 それを表面まで持ってくるのに少し間があったってとこだ。


 そのあとは周りにくっついていた砂が、下にできた空洞へ向かってザラザラと流れていって、荷車の側面がすっかり姿を現した。

 曲げて作った枠板、それを飾るように3本の丸棒。

 あれはおれの予備の槍の柄だ。

 黒く変色した4つの木車輪が出てきて、荷台の上にはかなりの砂が載っている。


 メグが杖を振り前側を持ち上げる。

 ザザと砂が穴の中へと流れ落ちる。

 荷台には帆布のシートをかけてあるから、あれを捲ればそれだけで上は綺麗になる。


「まわりごと皆あげたんやけど、やっぱりしんどいで」

 なんてメグが言ってたけど、そこでドヤ顔してるのは広い鍔の下から見えてるから。


 側面に付いた砂をみんなで払い落とす間に、クレアが近所の砂山を幾つか使って平らに埋め戻していた。


「まだ湿っぽいけど、直ぐに乾くよ。

 ニズドワームの皮を積み換えちゃおうか」


 そう。イブちゃんの後ろには20匹程の皮が梱包されて吊られていた。

 4点で吊って余り揺れないと言ってもゴワゴワのニズドワームだから、地面に擦るほども大きな梱包になってしまっていたんだ。


 積み替えが終わると

「ゼレンシアに向こて出発と行こうやないの。

 まあず、宿と美味い飯やで」


「それに美味しいお酒も待ってる!」


 イブちゃんはゼレンシアヘ向けて走り出した。


 メアリはカーナビの画面をずっとつついている。

 何をしているのか聞いてみた。


「カーナビの画面に見える青い線は、広域にすると網目模様になっています。

 あれが何なのかまだわからないけれど、画面を撮影したものを比べると、数日ほどでも結構形が変わっていることが分かるんです」


 俺もスマホの画像と見比べてみる。

 確かに線の曲がり具合とか位置が変わっている。

 けれどテルクラフト山頂らしい場所に、網の結び目が来る点だけは変わらないように見える。


 それに俺がジジイの記憶を取り戻したきっかけのサンドドール。

 あれの頭から上空に伸びていた青い紐も何だったのかわからないが、何か関連があるような気がするんだよ。


 そんな話を助手席の背もたれ越しにメアリと話し合った。


   ・   ・   ・


 ゼレンシアには大きな商業ギルドの買取り所がある。

 前回も泊まった宿に予約を入れるために寄って、まっすぐにギルドへ向かう。

 今回は主にワームの皮、他に小さいけれどトカゲとヘビの革、サソリの毒腺なんかが多い。

 傷むものではないけれど、宿に泊まるなら帆布一枚で荷台に積みっぱなしってのも物騒だったりする。


 広い倉庫の通路を行ったり来たりで、売れるものは全部売った。

 クレアによると今回の売値は金貨1枚に届いたそうだ。


 宿へ着くとまずお風呂と食事。

 ここのお風呂はあまり広くない。

 精々3人も入ればぎゅう詰めだけど、砂漠でよごれて埃っぽい状態じゃ、ご飯も美味しくない。

 夕飯は例によってクレアが5人前とか平気で頼むので、俺はそこから目についたものを取り皿にもらうことにした。


「あ、そうだ!

 タケオ、イブちゃんのキー、返しとくよ!

 なんか、遅くなってごめん!」


 ああ。

 習慣ってのは恐ろしいな。

 身体が子供だってのもあるが、元は俺一人で運転が当たり前だったんだっけ。すっかり忘れていたよ。

 いやまあ、これでも職業運転手なんだが。


「あー!いいなー、タケオ、それ、イブちゃんのキー!」

 ステスがそう言って騒いでメアリに叩かれていた。

 ラトルが「見せて見せて」とせがむやら、食卓はひと騒ぎ。

 それも料理がテーブルに運ばれるまでのこと。


 しばらくぶりで賑やかな夕食だった。


    ・   ・   ・


 翌日は政務庁を訪ねる。

 オネシス評議のヤーライさんから提案書が届いているはずなんだ。

 どのくらいの協力が得られるのか、それを聞きに行く。


 政務庁はゼレンシアの北側、商業地域とは大きな通り2本を挟んだ場所にあって、いかにも官庁街って感じの、お堅い雰囲気の建物が並ぶ。

 どの部署が担当やらわからず、そこで聞き回ってたどり着いたのが調達課と言う部署だった。


「話は聞いています。

 その件については丁度明日の議会で審議される予定です。

 課内での検討は終わっておりますので、予算が承認されれば協力できるでしょう」


「魔石の数はどれくらい揃いますか?」

 よそ行きメグが窓口に尋ねた。


「ええと、市場調査の結果ですと調達可能な数は1セロト魔石、2000個ほどですね。

 承認が降りてからでないと他町からの取り寄せはできかねますので。

 承認が降りましたら、見込みでは数日で3000個は集められるかと」


「合わせても5000ですか、桁が一つばかり足りませんね」


「それについては連絡を受けておりますが、何分市場にも在庫がない上、評議会の承認なしに動けないのです。

 承認が降りましたらできる限り収集致しますので、お待ちいただければと思います」


「不足の魔石の一部は私どもで稼ぎ出しますが、今のところ全く足りそうにないんです。

 当座、3日待ちますので出来るだけの手配をお願いします」


 メグがそう締め括って俺たちは政務庁を後にした。


 これはまた魔石狩りの流れか。

 そうやって確保した分は、申告すると買い取り扱いになるから損はない。


「今日はゼレンシアの街を回るわよ。

 砂漠ばっかりでしばらくまともな買い物してないんだもの、あちこち見て歩きましょう」


「せやな、オネシスからこっち、仕事がようさんあった割に使う場面があらへんやったし。

 (おぜぜ)言うんはようけ稼いだらその分使(つこ)て、他へ回すもんや。

 おまんらも欲しいもんがあったら言うんやで。

 たいがい何とかしたるさかい」


「わ、ホント?!」「色々見ちゃう!」「ラトル、甘いおやつがいい!」


 おいおい大丈夫か?そんな風呂敷広げて?

 などと言う俺の心配はとんだ杞憂だった。


 貧乏性は俺も自覚があるんだが、メアリ以下4人の子供は貧乏性どころか、正真正銘の貧乏人、そもそもお金の使い方を知らない。

 何かを手に取るだけでもメグとクレアの顔を窺って、値段の高い物には近寄りもしない。


「だって……

 触って壊しちゃったら大変だもの……」

「服とか引っ掛かるかも、汚しちゃうかもだし……」

「絶対弁償なんてできないし……」


 結局クレアが仕方なさそうに勧めた菓子屋で色々詰め合わせて貰って、イブちゃんの座席で食べたくらい。

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