闇の魔女
人物紹介 (本編はこの下にあります)
サナエ 年齢不詳 魔女
身長 155cm(推定)
多くの弟子を持ちアクトベル東方のトーヤマ村近くの山頂に居を構える
弟子は30人に及ぶ
サタス 黒ヘビ型使い魔 年齢不詳
サナエの弟子のひとり(?)
「フッフッフ!
この混沌としよる世界ももう見飽きてもうたで!
どないか悲惨な滅びをくれたろうかい!
闇ちぅ闇を統べる、この闇の魔女があらゆるものを微塵に砕いて見せようやないか!」
灯りの一つもない大広間。
大きな椅子に座るのは黒装束の小柄な老女。
その前、数段の台座を隔て下に畏まるのは大きな黒い蛇だった。
「闇の魔女はん、お腹立ちはご尤も。
せやけど、ここはもうちぃと待って下はるわけには参りまへんやろか?」
「何や、おのれ。
使い魔のくせしよってからに、ワテに意見しよるんか!
分を弁えい言うとるんがまあだ分からんのんか!」
真っ暗闇の中と言うのに老女の周囲に、幾本もの細い紫電が疾る。
「へえ、お腹立ち、えらい済んまっせん!
それでもでんがな、堪えたってください。
お願いですよって」
「おのれはそない言うがやで?
あぁの異形の者どもが、天嶮に巣喰いよってから何年経つ思とるんや。
ワテもええ加減に辛抱堪らんでぇ?」
はあ、今日はまた、えらいノリのええこちゃで。
闇の魔女でっか?
先週も悪い魔女ゴッコ、やったばかりやちぅんに。
蛇の姿の使い魔はそれでも律儀に答える。
「へえ、よう解っとります。
もうじき148年になるとこでおます」
「そこまで解っとってからにまあだワテを止める言うんか!
あの天嶮諸共、微塵に変えて見せたる言うとるんじゃ!」
このお婆はん、どこまで本気やら判らへんのが厄介なとこなんや。
ワテみたいな使い魔は機嫌とってナンボやねん、何とか間持たして機嫌よう寝て貰わんことにはなあ。
「ですがやで、お師匠はん、言わはる天嶮、言うたらテルクレフト山でっせ?
テルクレフト山は綺麗な山でんがな。
あれが無うなってもうたら、この屋敷からの景色もずいぶんと寂しいもんになりますやろなあ」
「ふん!
そないなもん、また作ったらええんや!」
何や今日は無茶苦茶言いよるなあ。
やっぱり弟子の一人も居らんのんが寂しいんやろか?
「そないですか。
ですけど、あのテルクレフト山はメグクワイアはんが好きや言いよった山ですよって……
一時とは言うもんの、無うなってもうたらどないな顔しよりますか……」
「うぐぅ、それは……
心配要らへん、メグは今テオドラ砂漠や。
それも奥の方やってなあ、テルクレフトやらよう見えへん。
なあ、使い魔。
あの異形ども、この頃目に余る思わへんか?」
やっとお師匠はん、素に戻らはったで!
今日は長ぅやったなあ!
この師匠はん、悪いお人やおまへんのやで?
たあだ、何ですやろ、長う生きてはりますよって…なあ?
「そないですやろか?
今までが大人しぃ過ぎたんやないかと、ワテは思とりましたんやけど。
あの大きぃなたまごがでっせ?
空の上からテルクレフト山の洞窟目掛けて飛び込んで来よったんは、ワテよう覚えてまっせ。
あないなよう判らん大きぃな力、持っとってからに、なあんもせんと150年近くも静かぁにしとる言うんが、ワイはおかしい思とります」
「せやかてや。
メグのパーティにハンパに手出しよったやんか」
あ。こらあかんわ。
タケオはんとか言う爺はんに手出したんがあいつらやて、どこで知らはったんや。
ワイ、内緒にしとったんに。
大体あいつら、ナンボ致命傷や言うたかて、記憶まで巻き戻すんが、どこに居るちうねん。
まあ言うたら、ここの者やあらへんよって、勝手も分からん、遣り様も判らんで、あんじょう出来んやったんも解らんでは無いんや。
「それですけどなあ。
タケオはんの記憶やったらもう戻らはってますのんや。
子供だった記憶の方がなんぼか怪しいらしいて、難儀しとる様でっせ?」
「ほな何かい、結果言うたら身体だけ若返ってもうて、タケオはん丸儲けちぅ事かいな?」
あ、そこ気付かはりますのん?
てか、タケオはん?
誰ぞに敬称みたいもん付けよるんは、ワイ初めて聞いたやん。
なんぞあるんやろか。
「そない単純な話やない思いますけど、そうなりますかいなあ」
ワイ、こないに軽う言うてますけど、かなりビビってますで?
何でや言うて、お師匠はんの外見がでっせ?
ナンボ魔力のある分、老けるんが遅なる言うてもや、外見で60代言うたら女子の身としてはどないやちう話や。
「使い魔!
内心や言うたかて、聞こえとるで!
なんぞ埋め合わせさしたるよって、覚悟しときい!」
ほれみい、なるべく小っさい考えしたったんにバレてもうた。
それでもや、ワイがメグクアイアの話振ったからやと思うけど、お師匠はん、口を噤んでもうて、何やら物思いや。
思えばこの主人に仕えて何世紀か経ってるんや、ワイも長い付き合いになったもんやなあ。
ワイ、今は大きな蛇の姿やってん、元は言うたらカニですのんや。
それも手のひらに乗るような小っさいカニや。
最初はなんで拾われたんかよう解らんやってん、お師匠はんの髪飾りやらにされとってん。
それから色々あったでえ、ってワイのことはどうでもよろし。
せや、弟子の話やった。
皆独立してもうたけど、お師匠はんの弟子言うたら20人じゃきかへんのんや。
何人かは先に逝ってもうたんも居るやって、あちこちに散って皆一端の魔法使いで通っとる。
ワイの兄弟弟子でもあるんやけど……
あれれ?
メグクアイア・ゼーゼルやったら、丁度30人目の弟子やなかったかいな?
そらお師匠はんの思い入れも一入なんがよう解るなあ。
あの子はホンマに手がかかったでえ。
けど、手がかかった分、新しいことを発見しよるんもあの子ならではちうやっちゃ。
魔法銀の線束で火柱を上げる、結界魔法を弄っとるか思たら3つの村を驚かすような爆音や。
雷魔法かてそうや。
年若い言うんに当時で威力を倍に上げよった。
他にも水網やったか?
誰が水で物動かすなんぞ考え出すちうねん?
お師匠はんもあの子の杖には苦労しとった。
何せ突拍子もない事を始める子やさかい。
今どないしてるかなあ?
ワイもお師匠はんの側に居らんでええんやったら、顔見に行きたいもんや。
まあた、なんぞビックリさせられるんやろなあ。
「サタス!おまん、あやつらが頻りに天空を気にしとるんに、気付いとるか?」
「へえ、よう機械仕掛けの使い魔飛ばしてまんなあ。
あないな高い空の上は息するんもままならん言うんに、ようやるもんでっせ」
「ワテが見たところやが、テオドラから南の海に向けてようさん飛ばしとるようや。
何をしとるんやら調べたって」
「へえ、賜りました」
「ああ、それからや。
その艶々しい黒やけど、闇の魔女の使い魔としてどないや?
こう、漆黒言うんか?周りの光を皆吸い取ったろ、くらいの気概見せんとなあ!」
今度はワイの外皮でっか?
そんなんどないでもよろしに!
あちゃあ、まあだ闇の魔女ゴッコ続くんでおますか?




