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テオドラ砂漠橋

 180kmを予定している砂漠の橋も支柱を配置して道半ば。

 先日のワームラッシュで、45リットルと書かれたビニル袋に入れてひと抱えの魔石を集めてしまった。


 1cm魔石で1千個近いのを、1日で集めたんだから無茶苦茶だ。

 それまで4日掛けて1千個有る無しのペースだったから、あれには驚いた。


 ほとんどはイブちゃんのMS容器からの掻き出しだけど、最初に倒した分はふつうに体内に魔石が残ってる。

 その300匹程の解体が一仕事だった。


 でもまあ、メグの魔力枯渇なんて珍しいものも見られたし。


 砂漠を橋の支柱を配置しながら突き進むこと9日。

 ゼレンシアはまだまだ遠い。


   ・   ・   ・


 メアリがカーナビに強い反応を見つけた。

 進路からは1キロ程離れているのに、ハッキリと危険警告の表示が出てるのがメアリの肩越しに見える。

 あんなのは初めてみる。


「ウチ、そんなん初めてやで。

 一体何がおるんやろか?」


 メグは後部座席(3列目)で、魔物名鑑を隠しから引っ張り出して予想を始めたようだ。

 砂漠ってことである程度絞れるって言ってる。


 でもあの様子じゃ支柱が先か、狩るのが先かって感じだなあ。


「多分この辺りやないか?

 ようし!早速行ってみよやん!」


 やっぱりかー!しかし何を予想したんやら。


 クレアはすぐさま進路を右に取る。

 うねる砂丘の急傾斜をいくつか超える。

 こう起伏が大きくては、近くに行くまで何が相手かなんて分からない。


 クレアが砂丘を乗り上げ車体がやや下向きになった時、

「ねえ、なんかとんがりが見えるんだけど、あれ、何?」

 と聞いてきた。


 みんなでフロントガラスの向こうを見る。


 そこにあったのは砂のとんがり山。

 乾いた砂ばかりの砂漠でかなりなだらかではあるけれど、尖った円錐形に見える山の頂上は僕らのいる砂丘よりも高い。


「どないしたらあんな形ができるんや?」


「カーナビの赤い点ってあれみたいです」


 画面ととんがり山を何度か見比べていたメアリが言う。


 メグが僕を押し退けるように背もたれに体を割り込ませてカーナビを覗く。


「ほう。大きいやん。

 これまたお初やなあ」


 その時カーナビ画面の赤丸が、ズクンと膨れるのがメアリの肩越しに見えた。


「お、お?どないした?」


 次の瞬間、ズズンと目の前が真っ暗になって、体が前へ大きく振れる。


 車体はやや上向きに止まり、砂は結界のドームに沿ってザザと流れ落ちる。


「うっわ、びっくりしたー。

 でっかい砂の塊が飛んできたよー」


 いきなりのことで僕には見えなかった。

 運転席のクレアには見えたらしい。


 直接当たりはしないものの、砂の勢いで防御結界ごと押し込まれたようだ。


「砂投げて来よるんか。

 相手はなんやろ?

 クレア、砂丘削って潜って行けへんやろか」


「どうしても近づこうっての?

 砂の下に潜ったら埋められたりしない?」


 言ってる間にもう一発砂塊が飛んで来る。

 クレアがイブちゃんを後退させて砂丘を盾どった。


 同じくらいの高さでアレだもんなあ。

 低いところで砂塊を喰らったらどうなるんだ?


「埋まり方にもよるやろけど、ようさん砂被るんは難儀やなあ。

 (せえ)の高い三角の盾なんかどうや?

 飛んで来よる砂をこうスパッと」


 メグが顔の前に手刀を構えて見せる。


「横から飛んできたりしないよね?」

 クレアが言うのは当然の疑問だよ。


「さあ?そんなん分からへん。

 まあずやってみることや」

 あ、いつものメグだ。


 何をこんな寄り道みたいことに僕らが必死になってるかって言うと、橋の基礎を作る魔石が不足してるんだ。

 ニストワーム達の分布は砂漠のどこでも一緒じゃないらしい。


 ここ数日、集まるニストワームが極端に減っている。

 ラテラで大量に狩ったとは言え、日々減って行く魔石在庫に、どこかでオネシスに戻らなきゃかなあ、なんて話も出てる。


 砂丘を登り降りして数日かけて戻っても良いんだけど、面倒なのは確かだし。

 手近に魔石があるなら集めたいよね。


 そんなところへ見つけた魔石の気配だし。


 クレアがかなり大きな三角の盾を砂を固めて作り、クレーンで前に持ち上げる。

 あんな重そうなものを吊っても、イブちゃんは前に傾いたりしない。


 おかしいと思うのはいつものことだけ、今それを突っ込んでる場合じゃない。


 イブちゃんは砂丘の頂点を越え下を向く。

 三角盾に空いた二つの小さ穴、銃眼みたいなものと思って貰えばいいけど、クレーンで盾を吊り上げ、とんがり山のてっぺんが見えるように調節。

 山頂が綺麗なとんがりじゃなくって、少し崩れて見える。


 砂塊はあの辺の砂を飛ばしてるんだろうか。

 それで崩れて見える?


「来るよ!」

 ハンドルを僅かに切ってクレア言う。

 数瞬遅れてドズズウンと衝撃が襲う。

 銃眼の穴からフロント辺りに砂がぶち撒けられ、車体が大きく揺れる。


 キャアと悲鳴はメアリの声か。


「ウチが言うた通りやろ!

 このままや!」


 今のは想定通り正面から来た。

 上手く砂弾を逸らし僕らに被害はなかった。


 それから数発同じようにやり過ごし行けるんじゃ?なんて思った頃。


「こっち!」


 クレアがハンドルを右へ切り車体が左へグッと傾く。


 引き攣った声音でケラケラ笑うのはステスかミトアか。

 ラトルの声ではないと思う。


 砂丘の斜面を下ってる最中に方向を変えれば、そりゃあ傾くよな。

 問題は何で右へ切ったのか?


 ドズンと鈍い衝撃があって車体の傾きが一瞬持ち直す。

 どうやら右へ切ったことで砂弾を躱したってことらしい。


「今の右の方から飛んできた!」


 クレアが叫び今度は左旋回、車体は逆へ大きく傾いだ。

 途端にズバッと正面を砂の大波が叩く。

 車内の悲鳴が交錯する。


 その騒ぎも収まらないうちに、後輪が衝撃と共に跳ね上がる。

 どうやら砂弾はイブちゃんの足元を抉ったらしい。

 こっちの砂斜面の形が急に変わればそりゃまともには走れない。


 クレアはハンドルを正面に戻した。


 イブちゃんの姿勢が前下がりで安定したのも束の間、クレアが

「あわ、これ、やばいんじゃ……」と言いかけ、ハンドルを僅かに左へ切る。

 その直後だった。


 イブちゃんは左右に踊るように跳ね回り、転げるんじゃないかと思うほど右へ大きく傾いた。


「こらあかんで、盾を切り離すよって全速で突っ切るで!」

 助手席のメグが砂弾の飛び散る音に負けじと声を張り上げた。


 砂のカーテンで視界の悪い中それでも分かるのは広範囲からの砂弾がここらに殺到しているらしいこと。


 左右に翻弄される中、

「ええで!

 突っ走ったってえ!」


 その途端、鼻先が持ち上がる勢いで加速を始めるイブちゃん。

 後方に砂弾が幾つも砂飛沫を上げ、それが僕らを追いかけてくる。


 クレアの切るハンドルに従って、イブちゃんは転がるように左右に大きく傾く。

 時々それとは関係なく後輪が跳ね上がる。


 あれは砂弾がごく近くに着弾して砂丘の斜面が弾けたんだと思う。


 土砂降りの砂の雨を突き抜けるようにしてイブちゃんは走った。


 もうずいぶん離れたんじゃ?

 そう思った時だった。

 世界がぐるりと回ったのは。


   ・   ・   ・


 気がつくと僕は、半ば砂に埋まってうつ伏せに寝ていたんだ。

 目に映るのは一面の砂色。

 陽の当たる砂がほわっと暖かい。


 顔に当たる風は結構冷たいのに不思議な感覚だ。


 起きあがろうと手足を動かそうとした途端、身体中が痛む。


 ありゃ? なんでこんな全身痛いなんて事に?


 そこで砂のとんがり山に挑んで、砂弾から逃げ回った記憶が戻ってくる。


 あの後どうなったんだ?


 シートベルトは締めてたし、なんでこんな砂の上に放り出されてるんだ?

 窓もドアも開いてなかったのに……


 まさか! タクシーは無事なのか!?


 俺のタクシーがバラバラになって砂漠に散らかってる絵が浮かぶ!


 あれは協会の補助金でやっと買い替えた俺の虎の子だぞ?

 前のクルマで何年辛抱したと思ってる!


 ……あれ?

 俺、さっきまで子供じゃなかったっけ?


 痛む体を押して腕を動かす。

 首はずっと横向きだったんで、上体を砂から引き剥がすと筋が攣るようだ。

 浮かせた首を左右に振ると、髪から砂がバサバサ落ちる。

 頭皮にささりこんだ砂が気持ち悪いが、それは我慢するしかない。


 いくらか視界が上がって周囲を見ると、近間に一本の砂の柱が立っているのに気がついた。

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