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メランの街

メランの街までは比較的平坦な街道だったのでスムーズに辿り着くことができた。

町の城門を通ろうとする人で列ができている。列に並びながら観察していると何か見せてフリーパスで通っている人と横の机に誘導されている人がいた。机では書類を書かされてお金を払っているようである。

「なんと言って誤魔化そう」

僕は言い訳のストーリーをいろいろ考えたが、問題はこの子である。

もしかしてロリッ子を連れているということで犯罪者扱いされないだろうか。

インデックスを検索しても流石にそんな情報までは載っていない。

どうしようと考えているうちに順番が来たようで「次の人」と呼ばれる。

前に出ると「ギルド証かその他の通行許可書を持っていますか」と門番のような人が聞いてくる。

ぼくがかぶりを振ると「ではあちらの机へ」と指さす。

列を外れて設置されている机の方に向かう。

そちらには事務官のような人がいて手招きしている。


事務官は「街に入るには通行料として1人銀貨一枚必要です。また、またに登録をお願いします」という。

事務官は机の上に置かれていた紙を見ながら「お名前は?」と聞いてくる。僕は「ダイチ」とだけ答える。

インデックスを見ると姓を名乗るのは貴族階級ということらしい。僕は貴族ではあり得ないので下手に姓を名乗ればややこしいことになりかねない。それでもう名前だけで押し通すことにした。

「で、こちらに来られた目的は?」

「冒険の旅」

何か言われるかと思ったが、これはあっさり通過したようである。

「どちらから来られましたか?」

「王都」

これは真っ赤な嘘だがまさか女神の方から来ましたとか言うわけにもいかない。

事務官は何やら書類に書き込んで「ではそちらのお嬢さんですが」と矛先を変えた。

お名前は?「メラニー」

目的は?「冒険の旅」

どちらから来られましたか?「王都」

と僕と同じように答えてゆく。

これで終了かなとホッとした時、事務官は「で、ダイチ様とこのお嬢さんの関係は?」と僕の方に聞いてきた。

「あ、あう、親子ではありません。結婚しているわけでもないのですが…」

と絶句しそうになると事務官はにっこり笑って「では保護下にある、あなたが保護者ということですね」と何やら紙に書き込んで、では銀貨2枚です、と言った。

僕が「どこかいい宿はありますかねえ」と聞いてみると事務官は「冒険をするおつもりならば冒険者ギルドに入られることをお勧めします。そうすれば町の通行は無料になりますよ。宿も冒険者ギルドで斡旋していると思いますよ」と言った。中々に官吏である。

銀貨2枚を払うと素直に門の中の方を指さした。

城門をくぐると入ったところは広場になって多くの店が軒先を連ねている。通りは奥の方に続いていて多くの人が行き交っている。

「じゃあメラニーちゃん、ここでお別れだね。短い間だったけれど楽しかったよ」と社交辞令を言って彼女からは背を向けて歩き出す。さあ、冒険者ギルドを探しに行こう。

とりあえず護衛の役目は果たした。彼女も誰か知り合いにでも助けて貰えばいいよね。僕はこんな小さな女の子を引き連れてロリとか言われて後ろ指を指される危険がなくなってホッとしたわけである。


店先を見るともう中世ヨーロッパのような感じで電化製品などは一切置いていなくて、木製や銀製の食器や陶器のマグなどが並べられてあった。

そういう店を冷やかしながら歩いているとギルドの看板がぶら下げられた建物があった。

「ここか」と僕はその扉を開いてみた。


入ってすぐはいくつかのテーブルと椅子が置いてあり、それほど柄の良さそうではない男たちや女たちが何かを飲んで普通の喫茶店よりはやや大きな声で会話している。お皿やコップの置かれたカウンターがあるので軽食店を兼ねているのかもしれない。


奥の方には事務カウンターのようなものがあり、女の人が座っていた。

「ぼ、冒険者ギルドに入会したいのですが」

「では奥の方にお進みください」

と扉の方を指示された。

そちらに進むと別の女性がいて「ギルドにご入会ですね」という。

「は、はい」とやや赤面しながら答えると「では二名様の入会ということですね」という。

流石に訳がわからなくて「はっ?」と答えながら横を見るとさっきの女の子が素知らぬ顔をして横にいる。

「君、城門のところで別れたよね」

「何をいう。私の保護者はお主だと言ったのは自分ではないか」

「ぐっ」

(えーえーそりゃ言いましたよ。けれども、あれはこの街に入るための方便に決まっているじゃないですか)

受付の人は「ああ、それじゃ二人分で手続きしますね」と軽やかに言った。


入会書類を書いて見せると受付の人は「ではダイチ様とメラニー様は初心者としてF級からの登録ということでよろしいですね」と言う。

「は、はいそれで…」と返事しようとしたらメラニーが「いや、こいつは魔法使いだぞ。魔法使いはC級からの登録のはずじゃ」と言い出す。

受付の人は「え、ダイチ様は魔法使い様でいらっしゃるのですか?では実技が必要になりますが」と言い出す。

僕は慌ててメラニーを睨むが彼女は涼しい顔をしている。

(せっかく魔法が使えることを隠していたのに)

別室はいわゆる体育館のようで、向こうにトルソーのような造形が立ち並んでいる。

受付の人は「ではこの線からあの木人形に魔法を当てて下さい」と言う。

「こ、壊さなければダメですか?」と聞いてみたが「壊されたら困ります。当てるだけでいいです」というので気軽にファイアアローの呪文で手近のトルソーにぶつけてみた。

ファイアアローが当たった人形は壊れはしなかったが、火が燃え移ってしまった。

「げっ」

慌てて僕はクリエイトウォーターを像にかけて火を消そうとした。

受付の人は「に、二属性持ち!」と呟いてあわあわしていたが、火が消えたので落ち着くと、「で、では火と水の魔法で登録させてもらいます。入口の方でお待ちください!」と行って慌てて奥の方に走って行った。

「メ、メラニー?」とやっとのことで言うと彼女は済ました顔で「そりゃお主には私が安楽な生活を送れるためにはたくさん稼いで貰わねばのう」とすまし顔で言う。

「ぐぬぬ」

女の子に喋るなんて難しい。唸るのが精一杯である。

ややあって、先ほどの受付の人と髭を生やしたおっさんが現れて僕に向かって「ようこそ冒険者ギルドへ。私はここのギルドマスターのジェレミーです。魔法使い様、この町でのご活躍を期待しております」と言っておっさんは僕に緑色のカードを渡した。そのカードには僕の名前と大きくCという文字が書かれてある。

「メラニーちゃんにはこちら」と女の人が白いカードを渡す。そちらにはFという文字が見えた。

受付の女性は「このカードがギルド証になりますから街の城門の門番にそれを見せると簡単に出入りできますよ。あと手数料としてそれぞれ銀貨1枚頂きますね」と言って僕から銀貨2枚を受け取った。

「あ、あと、安心して泊まれる宿屋を探しているんです」とその受付の人に言うと受付の女性は「そうですね。では『竜の鱗亭』はどうでしょうか。食事は美味しいということですよ」という。

「じゃあそこに行ってみます。ありがとうございます」

もちろんメラニーは当然の顔をしてついてくる。

何か言ってやらなければ思うけれど、なんと言っていいかわからない。流石に「あっちに行け」とか言うと彼女も傷つくだろう。

そうやって考えている間に宿の前に来てしまった。

「すいません、宿をお借りしたくて来ました」というと中年の痩せた女性が出てきた。

「あなたとそのお嬢ちゃんの二人かい?ここは賄い宿だから賄い付きだと一日1人銀貨一枚、素泊まりだと一泊銅貨5枚だよ」

僕としてはそもそも一人で泊まりたいし素泊まりで充分じゃないかと思うので「あー、えーとそのー」と言いかけたら後ろからメラニーが「もちろん賄い付きで二人!」と言ってしまったので宿の人は「はいわかりました!では今からお部屋にご案内します!」と喜んで「では、チャージ料として三泊分、合わせて銀貨6枚お願いします」と言った。

部屋に入って僕はブスッとしていた。あの皮袋に入っていた銀貨はもう残り2枚である。

メラニーは「ま、まあそんなに不貞腐れるな。お主は私のためにガンガン稼げばいいだけではないか」と慰めているのか煽っているのかわからないようなことを言う。

(いつの間にお前のために稼ぐ話になっているんだよ)

そう思っても僕はそれを口に出しては言えないので「うん」と言ってしまった。

彼女は「うんうんそれでこそ私の騎士だぞ」とか訳のわからないことを言う。

「はっ?」とさすがに疑問を呈すると「今、お前を私の騎士に任命したんじゃ。騎士ならばご主人様のために命をかけて尽くすものじゃぞ」とか言って(そんなことどこで決まったんだよ)と硬直している僕を見ている様子もなく大笑いしている。

(そうだ、こいつを鑑定してやれ)

僕はこのプラチナブロンドで紫の瞳をした少女に鑑定をかけてみた。


名前: エラー

体力: エラー/エラー 魔力: エラー/エラー

スキル

取得不能


称号

取得不能


なんだこれは?鑑定で名前がエラーということはメラニーという名前は偽名ってことなのか?そもそもエラーってどういう事だ。

結局はこのメラニー(偽名)って子の謎が深まっただけじゃないか。

僕は心の中で頭を抱えるのだった。


夕食は素晴らしいものだった。素材はそんなに高価なものではなかったが、味付けや取り合わせがよく結構美味しくいただけたのである。

メラニー(偽名)は「こんなに温かい食事は初めてです、美味しいですね」と味付けなどより食事が温かいことに感動している様子だった。この子は普段からいったいどんな食事を食べている子なのだろう。


食事が終わり、ベッドに入って(もちろんメラニー(偽名)は隣の部屋である)ふと考えた。

僕はあの女神に「元の世界に自分を返せ」と言ったのである。けれども空の上から落っことされて結局はメラニー(偽名)のために働かされる羽目になったのではないか。あの女神の奸計恐るべしである。


少なくとも一人分だけぬるく働いてぐうたらして過ごす生活は夢と消えたわけである。メラニー(偽名)が満足するようにあくせく働く人生になりそうである。それなら転生などせずに元の世界にいた方がゲームもアニメもあってどれだけ幸せだったか。

そんなことを考えているうちに疲れで眠ってしまったらしい。

サイトのメンテナンスで途中まで書いていたのが消えたので書き直しました。(泣

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