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番外編 子供の生まれ方

□商業ギルドネビュラ支部 待合室 クロウ・ホーク


 俺たちは商業ギルドに訪れていた。

 というのもレレイリッヒから依頼を受けたためだ。


 どうやら<アルカナ>の装備判定について検証したいらしく、ファッションモデル……ではなく一つの実例として人型の<アルカナ>であるユティナの力を借りたいのだとか。


 報酬も用意しているようで、ユティナも快諾したため訪問し女性陣につれられる形で奥へと消えていった。


 ……なんか女子会しようとしてるだけに見えたけど、まあいいか。


 なにかあれば念話で連絡をするように伝え、俺は用意されていた個室の待合室で待機していたのだが。


「この世界の子供ってどうやって生まれるんだろうねぇ……」


 レレイリッヒが部屋に入って対面の椅子に座るなりそんなことを言い出した。


「えーと、とりあえず通報していいか?」


「どうしてだい!?」


「下手したらあっち系の話題になりそうだからあらかじめ手をうっとこうかなと」


「だって気になるでしょ? ロマンだよ!」


「なんでもかんでもロマンってつければ許されると思ってないか?」


「いやいや、まさかそんなこと……」


「そもそも、うちの子の教育に悪いでしょうが!」


「クロウはユティナのことを自分の子供と思ってるのかい?」


 大体合ってる。

 もしかして、これが……父性?


「あと、見てわかる通り俺は今忙しいんだ」


「たぶんメニューだよね。空中を見てにやにやしてるようにしか見えなかったんだけど」


「そろそろ【呪術師】がカンストしそうだから次のジョブ何にしようかとか上級職の条件達成を目指そうとか考えてるんだぞ。重要だろ?」


「それなら私の暇つぶしに付き合ってくれても罰は当たらないと思うなぁ」


 はっきり暇つぶしって言いやがった。

 レレイリッヒはちょくちょく俺の意見をもらいに来る、というより俺の捻くれた視点が参考になると前言われた。


「まぁ、ちょうどユティナもいないし、その話題に付き合うのもやぶさかではない」


「お、いいねえ。そうこなくちゃ」


 レレイリッヒは嬉しそうに笑う。

 どんだけ暇だったんだ……


「そうだな。赤子用の簡易結界があるとは聞いてるんで子供が生まれるのは確定だな……モンスターについては知らないのか?」


「モンスターは場合によるね。卵生と分裂は確認してるんだけど、よく考えたら哺乳類系のモンスターはどうやって生まれるかはしらないかな」


 逆に卵と分裂は知ってるのかよ。


「卵なんて見たことないけどな」


「視覚化されてるのは一部のモンスターだけらしいよ。俗にいう下級モンスターの大半の卵は目に見えないぐらいの大きさなんだってさ」


「は?」


「同種のモンスターが多く群れていると判定が発生して卵が生まれる。それはとにかく小さいらしい。その卵は特殊な生育環境じゃないと孵らず、その特殊な環境が魔域、ようはエリアだね。周囲に敵対存在がいない魔域という環境が重要で、生まれると同時に周囲の魔力を吸い取ってモンスターはこの世界に存在を確定させる」


「つまり、見た目や特性、属性とかは生まれた土地の魔域の影響を受けているからだと?」


 同じ名前のモンスターでも属性が変化してたり、ドロップアイテムが変わることはあるそうだが。


「そうそう。その時に生まれた場所の魔力が注ぎ込まれるんだろうね。抽象的だった存在がモンスターとして明確に定義されて初めて視覚で捉えられる存在になる感じかな」


「あー、オブジェクト生成と生物としての誕生の中間をとったような感じなのか」


 環境依存ではあるらしく、同種が複数体存在している必要はあるらしい。

 ただ判定が発生したらあとは自然にモンスターとして定義され生まれると。


「そうだね、だから基本モンスターに親子の絆のようなものは芽生えないらしいし赤ちゃん個体なんていうかわいらしい時期は存在しないんだってさ。一部を除くとね」


「というと?」


「ドラゴンの卵とか一部のモンスター、まぁ俗にいう上級モンスターであったりだとか、そういう個体は卵がオブジェクト化されるぐらい大きいんだって。こっちはちゃんと番がいたり、子供の時期もあるらしいよ。個体数が少ないのはそういう段階で他のモンスターに倒されてるからだとか」


「卵や子供のうちに狙われるような被害にあうのは生物としての強者だけ……と。そういえば食事とかはどうなってるんだ?」


「食事についても、肉食系のモンスターの場合は他の生物を倒すと胃袋に直接格納されておなかが満たされたりするんだって。モンスターが人に対して好戦的なのは本能の部分で人を倒すと満たされるということを知ってるなんて説もあるんだとか」


 この変態大体知ってるな。

 知的好奇心のまま調べる彼女の方が詳しいのは当然か。


「そうだな。……それなら、人類もリアルとだいたい同じ過程で生まれてくるんじゃないか?」


「その心は?」


「生物的に強者だから」


「……なるほどぉ」


 要は卵生と同じ原理だ。


「この世界の人類は間違いなく生物的に強者に分類される。だからある程度制限であったり弱点の時期が設けられてると見るのが自然だろうよ。番は当然必要で、出産という過程を経てから赤子も生まれる。小さい間はステータスの恩恵を受けなくなってるとかバッドステータスをシステム的に付与されてるとかじゃねえの」


「生存争いにおけるバランス調整ってことだね」


 そうなるんだろうな。


「そもそも俺たちがこの世界にログインしたときのステータスがある意味最低値みたいなもんだからな。ステータスにマイナス補正がかかってて、ある程度成長したらマイナス補正が消えて本来のステータスになるっていうんなら基準がぶれることもない」


「確かに……なんかもうその答えでしっくりしたし、わざわざ確認するようなことでもないかなぁ」


「……」


 話を振ったのはレレイリッヒだろうに、と思ったが言うのはやめておいた。


「うん、また面白そうな話題があったら持ってくるよ」


「次はもう少しテンションが上がるやつで頼む」


「よし、そろそろ私もユティナのファッションショーに参加してこよっかな!」


「検証しようとして追い出されたんだろ、ほどほどにしろよ」


「うっ……な、なんのことやらああああああ!」


 そう言い残してレレイリッヒは去っていった。 

 ユティナの装備判定の条件を突き詰めようとしすぎて、ほかのメンバーから追い出されたのだと思っていたがやはりか。


「ずず……」


 ふぅ。


「コーヒーうめー……」


 そのまま俺は何をするまでもなくメニューを操作して時間をつぶす。

 そんな、とりとめのない日のことであった。




 ちなみにユティナは追加報酬としてまた服をいくつかもらったらしい。

 そろそろアイテムボックスを容量の大きい奴に買い替えた方がいいかもしれん。




モンスターの発生について……

モンスター発生の原理と進化論については各国で長年研究されており、モンスターが発生しないように徹底的に魔域としての特性を封じ人類の生存圏にすることを【魔域の浄化】と呼んでいる。


かかる費用はもちろん、魔域でのみ採取できるアイテムやモンスター資源の枯渇に加え、モンスターの大量発生、進化の頻発、環境の変化など様々な問題が浄化までの間に連鎖的に発生することもあるため本当に必要な時でなければ実行されない。

また、実行したとしても失敗する可能性は高い。


ダンジョンと魔域エリアではモンスター発生のメカニズムが異なっており、魔域では食性、進化、成長、外的負荷、その他様々な要因にてイレギュラーが発生する可能性が存在している。

イレギュラーの中でも人類種にとって危険な進化や強力な能力を有した個体が確認された場合、発生の原理や発生元の種族を特定し徹底的に再発を防ぐための策が講じられることがある。

そして再現性が失われることにより、結果的にユニークになってしまった・なってしまっているモンスターが一部存在するようだ──

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出生に魔力が関わるならば特定地域ではエルフが多い、特定地域ではドワーフが多い、みたいな偏りがあるのだろうかと適当な妄想をしつつ。 厄災をもたらす種の根絶を掲げたとして、継続的に種が発生しな…
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