表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/374

第32話 星天の日 終息

□ココナ村北部 クロウ・ホーク


「マグガルムは!?」


「きゃっ!」


 【気絶】状態の回復。


「あ、おはようございます」


「ええ、おはよう。クロウ……」


 ユティナは俺の顔を覗き込んでいたようで、起き上がった頭とぶつからないように少し仰け反っていた。

 驚かせてしまったらしく、心臓の位置を抑えながら少しの怒りの表情が伺えた。


 見れば俺の背後には木があり、吹き飛ばされた衝撃で頭をぶつけて状態異常になったということらしい。


 意識はあるのに意識はないという謎の感覚を味わうことになった。


 と、考えてる暇はない。


 それよりもだ。


「ユティナ、【マグガルム】は……」


 そう聞けば、ユティナはなんて言えばいいのかわからないような顔をした。


 もしかして、逃げられたのか?


「そう……ね。【マグガルム】は……ポリゴンになって砕け散っていったわ」


 そして。


「私たちの勝ちよ」


 俺の目を見て、そう告げた。


「…………っはあああああああああ。強かったああああああああ! ははは!」


「ええ、ほんとにね」


 何度死ぬかと思ったか。


 特に最後の1分はやばかった。


 一応確認の意味もこめてシステムメッセージを見ておこう。


「お、ほんとだ。システムメッセージめっちゃ流れてる、てか流れすぎだろ!? レベルもかなりあがってる。新スキルも覚えて……ってゆっくり見てる時間はない!」


 俺は急いでパーティメンバーの方を確認した。


 マグガルムが討伐したところまでは読めてないが、アイテムボックスをちらりと見れば<魔狼犬の毛皮>のようなドロップアイテムがいくつか見えたので間違いなく【マグガルム】討伐はできたのだろう。


 これで一安心である。


 それよりも、特異種が出現したのはここだけではないのだ。


「ブルーとブラックは生きてるな……というかHPを回復してる途中か?」


 【マグガルム】と追いかけっこしている時、ちらほらHPの増減を繰り返しているのは見ていたのだが。


 もしかして、もう終わってる?


「……満タンになった」


 ……終わってるなこれ。


「とりあえず、合流場所に向かうか」


 俺は<月鳴りの剣>を回収……耐久値が100を切ってる、回復依頼しないとだな。

 そしていつも通り《限定憑依》でユティナを纏おうと。


「あ、あの……」


「ん。どうしたんだ?」


 ユティナはしずしずと。


「私、今憑依できないみたいなの……」


「え、マジ?」


「ええ。【マグガルム】の魔法攻撃に光属性も入ってたらしいのよね」


「あー、なるほど。たしかに、月光で魔力回復してたから属性として含まれてた可能性はあるのか?」


 盲点だったな。

 図らずとも、俺たちの天敵のような能力を有していたらしい。


「俺が気絶してから、4分ぐらいか。それでもまだ再使用できないとなると」


 なかなかに致命的な弱点である。


 《呪縛》発動におけるMPとINTの底上げに加えて、一時的な肉体操作権限の譲渡。

 サポーターが弱点になるという欠点の疑似的解消。

 ログアウト中でも効果が持続する自由度とは裏腹に、一度強制解除されると下手なスキルのクールタイムよりも長い時間サポーターが完全に孤立すると。


 自分の肉体を動かす指令を出す処理系が2つあるというのは想像以上に優位点が多いので、普通に困る。


 この感じだと、5分か10分か、長ければ15分ぐらいか?


「いや、でも雷撃の暴発を喰らったときは《限定憑依》が解けなかったよな?」


 使用する魔法が違ったのだろうか?


「そうね……光が眩しくてよく見えなかったのだけれど……あれは……」


 ユティナはどこか夢でも見ていたかのように、そして申し訳なさそうな顔をしている。

 気絶した俺と違ってユティナは何かを見ていたようだが。

 うーん。


「まぁ、難しいことは明日にでも時間を取って整理しよう。それよりも、だ」


 そうだ。


 せっかく勝ったのにそんな顔をされたら困ってしまうではないか。 

 であれば、話題を変えてしまおう。

 変な気を使わせないために、確認は最低限にしてメニューを閉じた。


「せっかくデスペナルティにならずに済んだんだ。今日はかたっ苦しいことは全部忘れて天体観測としゃれこもうぜ」


 俺の意図を組んでくれたのだろう。


「……ふふ、ええ。そうね、星空を見に行きましょう」


 ユティナは立ち上がり歩き出した。

 一応周囲の警戒もしながらになるが、まぁ【マグガルム】が暴れていたからか周囲にはモンスターは見当たらないし、しばらくは問題ないだろう。


「……クロウもHP回復しておいたら? 彼女たちも気が気でないはずよ」


「マジだ。残り200もない。あの爆発で3000以上のダメージ判定あったのか。よく生きてたなぁ」







□ココナ村北東部 集合場所 クロウ・ホーク


「あ」


「あら」


「ん?」


「きゅ?」


「む?」


 集合場所に到着すると、そこにはすでに彗星とブルーがいた。

 予想通り俺が1番最後、か。


「お待たせ、待った?」


「ううん、今きたとこ……って何を言わせるんだ!」


 裏声で話しかけたらブルーが乗ってくれた。

 ダンジョンで最初に会ったときやパーティを組んだ時も思ったがノリいいな。


「ブルーもブラックも無事倒せたようでなにより……でいいのか?」


「ふはははは! 魔の眷属など敵ではない! 我が最強の魔法によって打ち砕いてやったわ」


「ああ、余裕だったな。そういうシルバーはどうだ?」


「楽しむ余裕があるぐらいには問題なかったな」


 言葉とは裏腹に、2人とも見るからに装備がボロボロだ。

 防具の耐久値は残っているようだが、大体何をしたのかは予想がつく。


 ブルーの防具は小さな切り傷がたくさんついている。

 それこそ、至近距離で風の刃でも跳ね返り喰らったかのように。


 彗星のローブはところどころ焦げ、擦り切れている。

 それこそ、至近距離で魔法を放ち跳ね返ったかのように。


 俺の防具はところどころ焼け焦げている。

 雷に打たれ、爆発が直撃したかのように。


 全員過程こそ違えど、至近距離からの自爆特攻をしたんだろうな、と。


 なんとなく、わかった。


 当然2人も気づいている。


 まったく、ここにはバレバレの嘘を言うバカしかいなかったらしい。

 《噓感知》スキルに引っかからなかったところを見るに小癪にも意識をずらしているようだ。


「くく……」


「はは……」


「ふふ……」


 ひとしきりお互いに忍び笑いしあう。


「──ふぅ」


 これ以上はいらない。


 なぜ、どうやって、などと言うのは無粋であろう。


 必要だからそうした。


 冒険は、各々の胸の内に秘めていればそれでいい。


「……それじゃ戻るか、ココナ村無事ならいいけど。レッドは一度もHP減ってなかったから問題はなさそうなんだよな」


「これでダメならもうどうしようもないな、偵察班も追加の人員もだれも来ないから何か問題は発生しているのかもしれんが……」


「勝負はレッドの一人勝ち、か……しかし、次は負けんぞ! 我が邪竜の力を制御できた暁には魔の眷属など、一撃で粉砕してくれる!」



 あっ、そうだ。


(ユティナ、あれ。誘ってもいいか?)


(いいわよ。せっかくだものね!)


 ユティナからもOKがでたので、さっそく。


「ブラック、ブルー。この後時間あるか?」


「ん?」


「む?」


 俺は、このイベントを乗り越えたパーティメンバーに一つ些細な提案をした。


 そして、彼らもこの後時間はあるらしく快諾してくれた。


 あとは、レッドやゴン太郎も誘ってみるとしよう。




 うん、それがいい。





 結論から言うと、ココナ村は無事だった……が、相応に問題も発生していたらしい。


 というのもあの後大小問わずモンスターの群れが西部および東部から大量に襲いかかってきたらしい。


 道理で救援もこなければ偵察班からの連絡もなかったわけだ。

 こちらはこちらでイレギュラーに襲われていたということだな。


 どうにか撃退できたようでこれから俺たちの支援、ないし特異種の討伐隊を送ろうとしていたようだ。


 1体ならともかく3体同時に特異種が出現したのは過去の事例でもほとんどなかったようで、今回、東や西にモンスターが集中的に群れをなしていたのは、北側に特異種が複数体隠れ潜んでいたことによる影響だった可能性が高いらしい。


 偵察班で補足できなかった理由を含めて、ギルドから専門の調査員を派遣し因果関係を調査するようだ。


「ダンジョン都市ネビュラより報告。星天の日の終息が確認されました! ココナ村の防衛線に参加下さった冒険者の皆さんありがとうございました。報酬は後日お渡しいたしますので、各自ギルド窓口にお越しください!」


 正式に星天の日が完了したとネビュラの連絡員から報告があり、依頼を受けた冒険者は解散。


 そのまま報酬は後日渡すということになった。


 と言っても俺たち推薦組はもともと報酬の受け取りはそれぞれの依頼主に貰う予定だったのであまり関係ないみたいだがな。


 NPCはココナ村の仮宿であったり野宿の準備を進めている。

 プレイヤーは各々ログアウトしたり、NPCと一緒にココナ村の中に入っていく。


 また、兵士や一部の冒険者は引き続き追加の依頼を受けこの後調査員の派遣であったり、夜通し調査を進めるとのことだ。


 ご苦労様です……







「ふうー……」






 俺は大きく息を吐く。

 肩の荷が下りたという奴か。

 現実時間でいうと昨日はクラン戦、今日は星天の日と、イベントごとに事欠かないのはいいのだが……


「クロウ、お疲れ様」


「ああ、お疲れ様……」


 長いようで短かった星天の日は、ようやく終わりを告げるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 方々激戦はあったようですが、終わりよければすべてよし、ココナ村の戦いは無事完結ですね。残るは特異種の集中発生問題の裏側でしょうが……ひとまずは、お疲れ様。
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] システムメッセージを確認するのはいつになるんだろうねぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ