第25話 急転
□ココナ村北東部 クロウ・ホーク
アブソリュートエターナルカタストロフィ・彗星の戦いぶりを見た後、俺は元の位置に戻り、暫くモンスターを倒し続けていた。
しかし。
(一向に収まる気配がないな)
すでに一時間以上戦い続けているが、波が止まらない。
19時から20時までにはおさまる予定と聞いているのであと1時間あるかどうかと言ったところだが。
第1WAVEとんで第2WAVEぐらいは突破してると思いたいな。
(でも、減ってきてはいるわよね)
(そうだな。そもそもすぐに外れていくんだが)
また一つ俺に向かうことなく、反応がするりと気配感知の範囲外に抜けていく。
さすがに数が減ってきたのだろう。
最初よりは少ないし、内側の冒険者で十分に対処可能な量なはずなので、無理して追うということはしていない。
ヘイトの分散は限りなく機能していると見ていい。
『ココナ村より北部担当の討伐班へ緊急連絡』
「なに?」
ココナ村からだ。
何かあったのか?
『大規模な群れがココナ村西部に移動してきているのが確認された。配備上戦力は足りているため問題はないが、北西部並びに南西部に余剰戦力の存在、もしくは群れの一部が流れる可能性がある。各自連絡を取り合い合流し、外縁部から縮小する形でココナ村に撤退せよ。残り1時間強、専守防衛に切り替える。以上』
そのまま通信が切れた。
「何かあったというよりは、何かがある可能性があるから撤退しとけってことね」
外縁部はちょうど俺たちが担当しているエリアだ。
他にもいくつかのパーティと連携しながら対処していた。
ブルーが支援に向かっていたパーティも外縁部を担当していたパーティだ。
逆に言えばここが抜かれない限り内部に大きな被害は出ないというわけでもある。
危険度の高い中級モンスターたちの大半はここで弾けているからな。
『こちら外縁部担当のパーティだ。聞こえるか?』
「ああ、聞こえてる」
どうやら早速連絡が来たようだ。
(確か、星天の日の環境を利用しているんだっけか?)
原理はよくわからないが、この星天の日という環境において、【月光の樹海】で採取した魔石を加工した共鳴石は高性能な通信魔道具になるのだとか。
特定条件下で使用できる拡張魔道具ということなのだろう。
普段からこれが使えたら《囁風》が必要なくなるもんな……
『ああ、よかった。ん? 知り合いか……ってああ。レレイリッヒが誘ってた人か。すまん少し変わる』
向こうでの連絡の担当が変わったようだ。
というより、俺の近くで討伐班に参加していたのは決まっている。
『クロウさん、お疲れ様です! さっきの緊急通信の件についてです!』
ゴン太郎だ。
「おお、問題なさそうだな」
『はい! このまま戻りますので、合流しましょう』
「オーケー。マップを開いてくれ、今の場所はどこだ?」
位置情報を確認したが、わりとすぐに合流できそうではあった。
移動に5分もかからないくらいだろう。
モンスターが道中邪魔することを考えるともう少し長く見積もるべきか。
『それじゃ向かいますね!』
「ああ、俺はできるだけ移動しないようにしながら退路を確保しとくよ」
そのまま通信は切れた。
「さて、もう一仕事しますか!」
俺は共鳴石で連絡を入れた。
「こちらシルバー、先ほどの連絡についてだ。近場のパーティとコンタクトが取れた。プレイヤー4人のパーティだ。合流後予定通り集合場所に向かう」
『こちらブルー、承知した。俺の周りは既に他のパーティと合流し帰路についているようだったのでもう少し周囲の様子を見てから集合場所に向かう』
『我も機関の連中が潜んでいないか確認してから向かおう。契約書に記された暗号によれば、どうやら何かを企んでいるようでな……』
『Let's meet up!』
ブルーと彗星はもう少し周囲のモンスターを狩って撤退しやすくしてくれるようだ。
T&Tは俺と同じように他のパーティと合流してから向かってくると。
「わかった。またあとで連絡する」
☆
モンスターを倒しながら待つこと少し。
周辺の気配がほとんど無くなったのでこれなら安全に撤退できるだろう。
追加のモンスターも来ていないように見える。
「お?」
そして、こちらに向かってくる気配を捉えた。
この感じ、どうやら問題なく来れたようだ
「クロウさん!」
(無事合流できたわね)
(そうだな。とりあえず一安心だ)
まずは第一目標の達成である。
「おう、ゴン太郎。一人か?」
「いえ、パウルとデルタ号もいますよ」
「ぐぎゃあお!」
「ぶるるるひひぃいいいん!」
「悪い、悪かった。怒らないでくれ」
ゴン太郎と合流した。
道化騎士の<アルカナ>であるデルタ号に乗りながら来たようである。
馬、というよりもスレイプニルだ。
今は6本脚しかないが、成長すれば8本脚になるのではないか?
「他のメンバーは?」
ゴン太郎一人しかいないが、彼は笑顔なので何か問題が起きたわけではないのだろう。
彼は身を乗り出して経緯を話し出した。
落ちないかそれ?
「オレが後衛なので、合流がてら先に来ました。すぐに来ると思いますよ。メンバーの一人が採取したかった植物アイテムがちょうどあったみたいで、30秒もかからないけど先に行っててくれと言われました!」
なるほど、とりあえず先行してきたと。
確かに説明するなら俺と顔見知りであるゴン太郎が適しているか。
予想よりも早く来たからこちらとしてもその程度なら全然問題ない。
「結構早かったな。もう2、3分かかると思ってたんだが」
「ええ、モンスターがだいぶ減ってたんですよね。邪魔されずに進めました」
ならばこの後の予定を……っ!?。
(えっ!?)
「クロウさんと知り合いだったって言ったからか、気を使ってくれたんですかね……いて!?」
──ゴン太郎がその場に落ちた。
「いつつ、はは。痛みはないのについ言っちゃいました。デルタ号、どうし……た……の。あれ、デルタ号?」
彼は何が起きたかわからないという表情で周囲を見渡している。
「クロウさん、デルタ号がいないんですけど……」
「ゴン太郎、急いでパーティメンバーの状況を確認してくれ」
「は、はい」
俺はゴン太郎にパーティリストを確認するように頼んだ。
事態は急を要する。
「……え?」
そして、ゴン太郎の顔がどんどん青くなっていく。
それを見ながら俺は連絡を入れた。
「こちらシルバー、異常事態発生だ。合流予定だったパーティだが……」
俺が先ほど見た光景を端的に言うのであれば。
デルタ号は、ポリゴンとなって砕け散った。
「みんな、死んでる……」
「一人を残して全滅した」




