第8話 二番煎じ
明日も17:00ごろに更新します。
(お、ポイントが増えてる)
ゼシエからの依頼を受けた後、真っすぐ【イデアル・マジック】のクランホームに続く転移門に向かう。
ついでにメニューを見てみれば、先日始まったGWイベントのポイントが増えているのを確認できた。
前回の【impact The World】同様にこの世界で過ごす全てが集計対象だ。
討伐部門や国別ランキングのように細分化されることなく、最初から総合ランキングしかないのが変更点だろうか。
(675801位ね)
旅人の間だと上位500位以内に入れるかが上位層の1つの指標だという意見があるらしい。
なんとなく、現時点の上位を流し見してみれば見覚えのある名前がいくつかあった。
(ドウゴク、彗星、ちょこちょこドドリアン……)
前回の討伐部門上位のメンバーは当然のようにいた。
りんご飴も400位あたりに入っている。
メリナの名前はないので、今回もりんご飴のサポートに回っていそうだな。
「ん?」
そんな中、思わず視線を止めてしまう。
なぜなら、490位に書かれた名前に見覚えがあったからだ。
(ゴーダル……?)
そこにはPK事変終了後から消息不明だった男の名前があった。
同名のプレイヤーかもしれないが、なぜかあの大柄な男であると、どこか確信めいたものがある。
(懐かしいな)
知り合いがいつの間にかいなくなっているといった経験は1度や2度ではない。
別に寂しいというわけではないのだが、どこか残念な気持ちになるものだ。
メリナも連絡が取れていないと言っていたのでてっきり引退したものだと思っていたが、どうやら今もどこかであの高笑いを上げているらしい。
フレンドの無言の生存報告にどこか気分をよくしながら、俺は転移門を起動させ光の門を潜った。
☆
「お、クロウ。終わったのか?」
「ん? ああ」
ラウンジに戻ってくると先ほどのゲームが終わったのか雑談に興じているレトゥス達がいた。
「それならお前もやるか? ちょうどさっき終わったんだよ」
「そうだな……ユティナもやるだろ?」
「あら、いいの?」
「構わねえぜ。そんじゃ、3位と4位の司会とヘリオーと入れ替わりな」
「ちぇー」
しぶしぶヘリオーは立ち上がり、司会は特に何も言うことなく席を外す。
その空いたスペースに俺とユティナが座る形だ。
「……」
周りを見る。
ヘリオーはどこか面白そうな目で。
司会はマイクを片手に持ったまま。
遠くの席に座っているマリアはどこか伺うように。
呉羽はいつも通り不敵な笑みを。
そして。
「よーし、そんじゃ最初にルールを」
レトゥスは意気揚々とゲームを始めようとしている。
「なあ」
「ん? なんだよ、まさか俺に負けるのが怖いってんじゃ……」
それを止めればいつも通り煽りをかましてくる。
それに対し俺は……
「このくだりさっきやったよな? ねここ」
否、レトゥスの姿をしたねここに問いかけた。
「あん?」
「え?」
「ほぅ」
レトゥスの眉が上がり。
ユティナは不思議そうにレトゥスの方を見て。
呉羽は感嘆の声を上げた。
「何言ってやが」
「まず、ヘリオー。負けた後のはずなのにいつもより笑顔が二割増し」
「へ?」
ボードゲームであろうと負けた後にしては楽しそうな表情。
それは隠しきれていない愉悦の笑みだ。
その他の面々も。
「次に司会。マイクを持ったまますぐに実況を始められるように構えている。何をそんなに期待しているんだ?」
『は!? しまったあああああああ!』
「マリア。いつもはもっとバカなものを見るような感じで一歩引いているのに、今日は随分と興味深そうだな」
「はい?」
普段と比べると、ほんの僅かなズレ。
だが、お前らの表情や癖を何年見続けてきたと思っている。
「最後に……レトゥスならもっと息を吸うように煽ってくるぞ」
あいつなら俺が席に付いた瞬間に「てっきり負けるのが怖くて逃げだすかと思ったぜ」ぐらいのジャブは放ってくるがそれがなかった。
どこか不自然な面々。
加えて、見当たらないねここの姿。
他の情報を照らし合わせることで、このレトゥスは偽物だと確信できた。
「さしずめ、魔力操作を疑似再現したねここを見て、面白がったお前らが俺を騙せるか試してみたってところか?」
うん、なにやってんだほんと。
答え合わせを兼ねてそう問いかければ。
「はぁぁぁー。つまんねー」
『ば、バレバレだあああああああああああ! 俺達の完璧な作戦はなんと完全に見破られてしまっていたああああああああああああああ!』
「相変わらず、それだけ見えるのにどうしてたまに鈍……」
「ぐわあああああああああああああ! 一日に2回も見破られるとか俺のアイデンティティがあああああああああああ!」
「天網恢恢」
不平不満が溢れ出し、一斉にクランの内部が騒がしくなった。
すると、クランのドアが勢いよく開く。
「バレバレじゃねえか! どういうことだよねここ!」
「どういうこともねえよ! 呉羽以外違和感を出し過ぎなんだよ! それがなければ煽りで騙しきれたってのに! 俺は悪くねえ!」
「呉羽は腕組んで座っているだけだったしなー」
「負け惜しみが愉快であるな、ぶっちぎりで最下位だった男よ。演技も下手とは、救いようがないのではないか?」
「は? 言ったなお前ー!?」
『おいおいおい! やる気か! やる気なのか! 実況はこの俺、司会に任せやがれええええ!』
うん、随分と仲良くなったようで何よりです。
ちょっと違うか。
「あ。アルカ、お帰りなさい」
「うん。マリア、ただいまーって……」
いつの間にログインしていたらしい。
赤髪の少女は周囲を見渡した後、どこか遠い目になり。
「えーと、何の騒ぎ……?」
その呟きは、部屋の騒音にかき消されていった。




