第7話 魔導師からの依頼
12月27日は17:00頃更新します。
□魔導宮 魔導師の間 クロウ・ホーク
「よくぞ来たな。4日ぶりになるか?」
ここに来るのはもう何度目かになるか。
この間、今後も暇潰しに付き合えと言われてからちょくちょく訪れていたからか、ある程度顔パスでこれるようになってしまった。
最近国家最高戦力とはなんぞやと思い始めてきたところだ。
まぁ、俺だけに限らず【イデアル・マジック】の面々は割と高い頻度で訪れているらしいので今更だろう。
(あれ、これ事実上囲い込まれてね?)
現状はルクレシア王国所属だが、なし崩し的に所属国家変更まで進んでしまいそうな怖さがある。
いや、特段こだわりがあるわけではないのでそれはそれでいいのだが、最初に選んだ国に対する義理や思い出とかもあるとそうそう変える必要もないわけで……
「早速本題に入ろうか」
そんなことを考えている間にゼシエはさっさと本題に入った。
彼女の手元に浮かべた3枚の封書がふわりと俺の元へと飛んでくる。
指定の手順を踏まないと中身が燃えるようになっており、機密性の高い文書を送る際に重宝される魔道具の一種。
後から知った話だが、ルクレシア王国からアウローラへの納品依頼の際にも同じものが使用されていたらしい。
「今渡した封書を商業連盟アーレの議会の代表らに届けること。それが今回の依頼よ」
「……主要10都市か」
商業連盟アーレは基本的に各都市国家ごとに族長や、国王、代表など様々な独立した政治体系を維持している。
あくまでも商業連盟アーレという国は軍事同盟の名称のようなものだ。
だが、連盟として共通に取り組まなければならない議題などでは意志の統一を図るために一部議会制が採用されている。
議会に入れるのはそれだけの影響力を有するに値する資格を持つ豪商だけであり、彼らが事実上治めている大都市は主要10都市と呼ばれていた。
砂漠の中心にあるオアシスに栄えた街、交易都市サンドヴェーラ。
自然と調和せし幻想の街、幻想都市アウリラテ。
鍛冶と傭兵の街、決戦都市ブラッドフォージ。
最も商業が盛んな街、商業都市ラトゥール。
賭け事と悪徳の街、賭博都市ミラージュベイ。
造船と海運の街、海港都市クパッツア。
宝石の採掘が盛んな街、宝石都市ジルコ。
文化と芸術の街、芸術都市エリュシオン。
常に霧に覆われた街、常霧都市グレイヴ。
最後に現盟主が治める地、獣人都市ベルクルス。
「しかり。ブラッドフォージ、ラトゥール、そしてサンドヴェーラ。以上が今回の依頼の届け先よ」
「この手紙の内容については聞いていいやつか?」
「ああ、手紙と言ったが実態は納品書の類だ。しばらく前に魔道具の納品依頼を請け負ったのだが、設置先やらなにやら依頼をしておきながら揉めおってな、まったく。議会制などと、実に面倒だ……」
ゼシエは不服そうに溜息を吐く。
「現盟主が治めるベルクルスにはとっくの昔に送っておいたのだが、今あげた3都市はまだ送っていなくてな」
話を聞く限りその魔道具とやらは納品済みで。
ただ、細々としたところが議会で決定しておらず。
最終的に商業連盟アーレがその魔道具を設置した4つの都市の内3つにはまだ届けていなかった、と。
「せっかくなので、魔導師級の旅人を派遣してやろうという粋な計らいよ」
魔導王国エルダンには魔導師級の旅人という戦力が所属しているのだと国外に知らしめる一手。
これ、やっぱ囲い込まれてるよな。
いや、俺の自意識過剰か?
「冒険者ギルドの認識票を貸してみよ」
「ああ」
俺が青銅級の認識タグを取り出すとそれはすぐにふわりと浮いた。
宙に浮いた認識タグに対し、判子のようなものが力強く押し付けられる。
手元に戻ってきたタグを受け取ると表面に青白く光る紋様が刻まれていた。
先程の封書の封蠟に押されている印と全く同じ形のものだ。
「これは?」
「魔刻印の一種だ。お主が魔導王国エルダンの正式な使者であることを商業連盟アーレへ証明するものだな。それがあれば、かの国においても魔導船を優先的に利用できるであろうよ。費用もかからんはずだ」
なにそれ凄い。
これ欲しい。
「1ヶ月はもつ。それをもってして依頼の期限としよう」
「依頼期限を超過した場合は?」
「む? 特に考えていなかったが、そうだな……指定した魔石の納品でよかろうて」
「ああ、いつものね……」
【イデアル・マジック】がやらかす度にゼシエから通達される魔石の納品依頼。
魔石はいくらあっても困らない資源の1つということで、この依頼はペナルティとして採用されている。
ただ、あいつらと同じ扱いされるのは嫌なので期限以内に終わらせるとしよう。
「そして、これが今回の報酬の前払いだ」
ゼシエが手元に引き寄せたのは先程よりも豪華な封筒だった。
「先にヴァルドラーテへと向かうのであろう? これを渡せばよほどのことがない限りお主へと便宜を図ってくれるであろうさ」
再度こちらに飛んできた紹介状も受け取り、先程の封書と合わせてメニューからキーアイテムボックスへと移動する。
これで基本的にアイテムボックス破壊による紛失はなくなった。
「魔術師ギルドにはお主が来たら転移門の手配をするよう通達しておいた」
「受付でさっきの魔刻印を見せればいいってことか……何から何まで悪いな」
竜人国への紹介状という報酬に加え転移門の手配までしてくれたらしい。
これで魔導王国エルダンの国内の移動において大幅に日程を短縮できる。
至れり尽くせりだと言えよう。
「なに、こちらもお主の立場を十分に利用するつもりなのでな」
ゼシエは何か含みのあるような。
「気にするでない」
そんな悪い笑みを浮かべながらそう言った。
(これ、やっぱ囲い込まれ始めてないか?)
(ええ、私もそう思うわ)
だよな。
【共通クエスト】難易度2【商業連盟アーレへの納品依頼】
場所:魔導宮 魔導師の間
依頼者:【魔導師】ゼシエ
目的:商業連盟に属する以下3都市の商業ギルドへ手紙の納品を行う。
達成状況(0/3)
・ブラッドフォージ
・ラトゥール
・サンドヴェーラ
報酬:経験値(低)
前報酬:ゼシエの紹介状




