表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/280

第23話 狩りの準備は入念に

明日も20:00頃更新します。

□2035年2月17日 カイゼン樹林 クロウ・ホーク


(クロウ、上からモスネークが降って来てるわ。数は4よ)


「おう」


 ユティナの報告ととともに《気配感知》で上から落ちてくる蛇を認識する。

 同時に、巾着から追尾の呪いを付与した<呪われた投げ石>を取り出し適当に真上に放り投げた。


(3体当たったわ)


()()()呪縛(カース・バインド)》」

 

 俺の《呪言》により()()()()()()()()()()した《呪縛》によって、3体のモスネークが拘束状態になる。


「1体は先に始末して、と《スラッシュ》」


 《呪縛》の指定対象から外れ自由に動いていたモスネークは先に仕留める。

 残りの3体も、《呪縛》状態のためそのまま首を手早く切り落とし戦闘が終了した。


(お、新スキルを覚えたぞ)


(いい感じね)



呪爆(カース・ボム)》Lv1:アクティブスキル 消費MP1 以上

自身が所持権を有する任意の呪物を爆発させる。

込められた呪いに応じて消費MPが上昇する。

込められた呪いに応じて威力が上昇する。

※爆発することが可能な呪物には制限がある。

※一度に複数個の呪物を爆発させることが可能。その都度MPを消費する。

※50メートル以内の対象に限られる(スキルレベル上昇により範囲増加)

クールタイム10秒



 牽制札が一つ増えたな。


 呪物を爆発させるという性質上、呪物で肉体を殺傷する必要のある《呪縛》とはかみ合わせが悪そうだが、準生産職のスキルとしては割と真っ当なものだ。


 中距離から攻撃できる手段の確保という意味だと、やはり【呪術師】は事前に物資をため込んで戦闘時に放出する戦闘スタイルが想定されているのだろう。


 そんなことを考えつつ、俺は魔力回復薬を《早食い》しMPを回復しながら、そのまま森の中再度走り出す。


 会議の後にレベル上げを行い、現実時間の深夜に再度ログインし狩りを開始して4時間。


 俺の【呪術師】のレベルは10まで上がっていた。



 サービス開始して3日目の深夜、ゲーム内時間で6日目の朝を迎えた現在、ある一つの技術革命が起きた。


 それは【炎魔法師】や【風魔法師】といったMPを使用するジョブを中心に発見されたもので、魔道王国エルダン所属のプレイヤーから報告されたものだ。


 【魔術師】というジョブが存在する。


 そして【魔術師】で覚えることができるスキルの一つに《詠唱》と呼ばれるものがある。


 それは、魔法を発動する前に特定の言葉にMPを込めることにより、魔法の威力を底上げできる、というものだ。


 《詠唱》の内容はなんでもいいため、俗にいう中二病の方々が自分の考えたかっこいい詠唱を考えて発動するというある意味で有名なジョブだった。


 革命が起きたのはこの《詠唱》だ。

 始めたばかりのプレイヤーと違い熟練のNPCは自身の中に流れるMP、つまり魔力を認識し魔法をある程度自在に操ることができた。


 それを見たプレイヤーが色々試した結果発見されたのが【魔術師】の《詠唱》というスキルらしい。


 そのプレイヤーは簡単に「分裂せよ」という言葉に意味を籠めながら魔法を発動させた。

 すると言葉の通り分裂する形で魔法が発動したという。


 1つ1つの威力や大きさは下がるものの、魔法に変化を加えることができたのだ。

 これを見つけたプレイヤーは他のプレイヤーにも声をかけ、同じようにしてくれと頼んだ。

 そして、同じように魔法が2つに分裂した。

 全てのケースにおいて、再現性が確認されたというのだ。


 《詠唱》はなくても魔法スキルを発動させることはできる。

 《詠唱》をすることで魔法スキルの威力の底上げをすることができる。

 そして《詠唱》に意味を籠めることで、魔法スキルに変化を加えることができるという新たなルールが追加された。


 これは魔導王国の魔法師団に所属しているNPCも驚いたらしい。


 そもそもNPCはジョブを選ぶことができない。

 そのため、一部のNPCが【魔術師】で同じような発見をしても、そのNPCの魔法を操る才能が特段優れていただけと、見つからない土壌ができあがってしまっていたのだ。


 ゆえに、言霊のように意味を《詠唱》としてMPに込めることにより魔法を変化させる技術として、これを発見したプレイヤーは魔導王国エルダンにいる一番偉い【魔導師】と呼ばれるNPCに技術を名づける権利が与えられた。


 そして、そのプレイヤーはこの技術を【可変詠唱】と名付けた。


 魔法系ジョブブーム到来の予感だ。

 この話はすぐに広がるだろう。


 その恩恵を遠回りに受けたのが俺だ。

 レベル上げの最中、メリナから【可変詠唱】についてのメッセージを貰った俺はこれを実践してみた。


 【呪術師】の中には《呪言》というスキルがある。

 これは生産の他に言葉にMPを込めることにより、呪いの効果を底上げするといった効果があるスキルだ。


 つまり【呪術師】版の《詠唱》スキルということだ。


 そしてこの《呪言》によって【可変詠唱】ができたのだ。


 本来であれば、対象を同時に1体にしか発動できなかった《呪縛》も指定対象を増やすことが可能となった。


 その分MPの消費量も上がったが、魔力回復薬を使えば問題ない。

 ユティナによる視認による索敵、《気配感知》による探知能力と複数指定できるようになった《呪縛》によって<カイゼン樹林>で効率的な狩りを実現することができたのだ。


 おそらく、俺以外にも恩恵を受けたプレイヤーは多くいるだろう。


 【精霊術師】の《精霊語》や聖職者系統の《祝言》といったように、ジョブスキルの効果を高めるスキルは多く存在している。


 この【可変詠唱】の話をきっかけに、独自に能力を開拓し始めるものも増えるはずだ。


 この技術のミソはあくまで、効率的な運用が可能になるというところだろうか。

 MP100で【可変詠唱】した魔法よりも、単純にMP100を使用して普通に魔法を放った方が変にアレンジを加えた魔法よりも大きなダメージを与えられる可能性もある。


 【魔術師】というジョブはステータス補正が低いらしいので、変に詠唱にこだわらず単純にINTのステータスを上げて火力を上げる方を選んでもいいのだろう。


「少しレベルがあがるのが遅くなってきたな」


「そうね」


 レベルが低いうちはどんどん上がるのだが、少しづつ必要経験値が増えているのだろう。


 <カイゼン樹林>でのエンカウント率も下がっているし、今後はそう簡単にはレベルはあがらないな。


 下級職のカンストは大体ゲーム内時間で15日から20日を目安に見てよさそうだ。


 チュートリアルで説明された通り、経験値10倍の恩恵は大きかったということだな。

 

「ん、メッセージ?」


 メリナからだ。


「なんて書いてあったの?」


「フレンド登録している賞金首と、連れのPKがログインしたらしい。今は適当に物資を集めてて、ゲーム内で2時間後を目安にPK活動を始めると書いてある、というかそういう風に誘導したらしい」


 メリナの調査資料によって【賞金首】やPKの総当たりの必要性がなくなった俺たちはレベル上げをしながら、メリナの連絡を待っていた状態だ。


 つまり、これから狩りの時間というわけである。


 他にも簡単なジョブ構成に加えて現在のレベル、見た目や<アルカナ>の特徴もわかる範囲で書いてあった。


 俺は長時間ログイン可能と言っておいたので、時間の都合を合わせやすいのも幸いしたようだ。

 今日の朝からは普通に平日だしな。


 メリナのスケジュールも気になるがリアルの詮索はご法度だし、問題ないのであればこのままでいいだろう。


「他にPK狩りの準備として渡すものがあるから、王都ルセスに来てほしいんだってさ」


「ふーん、それなら一度戻りましょうか」


「だな、ユティナは暇だろうし寝てていいぞ」


「あら、お姫様抱っこでもしてくれるの?」


「寝てると俺の身体の中に収納できるんだよなぁ」


「なによそれ!? 私知らないわよ!」


 そりゃ寝てる時しか使えないからな。



 待ち合わせの場所に向かうと、そこにはりんご飴がいた。

 少し、大通りから外れたおしゃれなカフェだ。


 メリナの姿はない。


 彼女はPKの行動監視と情報を管理するという立ち位置の都合、あまり人目に付く場所やPK以外とのプレイヤーと絡むのは避けたいと言っていたため、どこかに身を隠しているらしい。


 基本彼女とのやり取りはフレンドのメッセージ機能だ。


 プレイヤーに与えられた特権の中でもある意味で最強の能力だろう。


 嘘感知が効かないという問題点があるので、フレンドだからと信用のし過ぎはよくないだろうがな。


「あ、クロウ! こっちだよ」


「おう。それで渡したいものってなんだ?」


「今渡すよ」


 りんご飴からトレードを利用して、いくつかアイテムを貰った。


【隠形ポーション】

《気配遮断》Lv1を獲得する。

効果時間:5分


***

幻惑の仮面

装備可能レベル:合計Lv1以上

耐久値:50/50

装備補正:END+30

装備スキル:《幻惑毛髪》Lv1

任意の髪型・色に見えるよう偽装することが可能になる。

※装備の耐久値が0になると解除される。

※特定のスキルで看破される

***


「これは?」


「ポーションは、気配遮断の効果があるよ。素材を買い集めて作ったんだ。鼻が利くモンスターや魔力や生命力を感知するモンスターには効果がないらしいけど、《気配感知》系のモンスターになら効果があるみたいだね」


 ここでいうモンスターは、つまりプレイヤーのことだ。

 汎用スキルの《気配感知》は有用であることに加えて、戦闘職に就くプレイヤーの多くが取得できる。

 プレイヤーから、隠れるためには気配を遮断したり、偽装することが必要になるわけだ。


 実際に<カイゼン樹林>にいた【賞金首】たちはジョブスキルか、もしくは<アルカナ>の能力によって気配を消していたのだろう。


 そういうジョブスキルがあるならともかく俺は現在覚えていないので、このポーションを利用して身を隠すということだ。


 総合レベルが相手より低かったり、スキルレベル2以上から隠れるのは難しいそうだが、ゴーダルや俺でもいまだに《気配感知》のスキルレベルは1なので、初心者用の狩場で活動しているPKにも通用するはずだ。


「仮面はいうまでもなく、おしゃれ装備だよ」


 適当に顏バレを防ぐ必要があるのと、髪型も自由に変えられるらしい。

 それにしても。


「幻惑ってことは……」


「そうだよ、私もただ無作為に過ごしてたわけじゃないからね。ククルおいで」


 呼ばれた【幻猫】ククルはりんご飴の膝の上に乗る。

 そして、りんご飴はある道具を取り出した。


「それは、ブラシか?」


「猫用ブラシだね。【従魔師】や【調教師】が使役しているモンスターに使うアイテムの一つだよ」


 そうして彼女はククルをブラッシングし始めた。


「気持ちいいか~そうだね~。ここがいいんだよね~」


 りんご飴はそのまま猫なで声でククルに話しかけながらブラッシングをしはじめた。


 ククルはとても気持ちよさそうで、喧騒の中にも関わらずゴロゴロ甘えた音がこちらまで聞こえてくる。


「えーと……」


 なんか、見てはいけないものを見てしまった気分になるな。


「あ、ごめんごめん。これだよ」


 そうしてりんご飴はアイテムを取り出した。


「毛玉ボールか?」


「そうだね。【幻猫の毛玉】というアイテムになってるよ。クロウの思っている通り、生産素材さ」


「それ、大丈夫か?」


 <アルカナ>から生産素材が取れるのとか、色々不味い気がするぞ。


「無限に取れるものでもないし、トレード不可で私しか使えないようになってるよ。そもそもこの子の毛を採取できるようになったのは、つい昨日のことなんだ。たぶん<アルカナ>との信頼関係が関係しているんだと思う」


 なるほど、条件があるのか。

 獣型であれば、ブラッシングで毛が入手できるということだ。

 あくまで、信頼関係を築くボーナスとして入手できる代物なのだろう。


 ……ユティナからも取れるのかな。


 いや、かなり最低な考えをしている自覚はある。


「ず、ずるいわ。私も、私にも! ブラッシングさせてちょうだい!」


「うん、いいよ。ユティナにはいつもククルに良くしてもらってるしね」


「キャー! ほんとにいいの? りんご飴、感謝するわ!」


 ユティナはククルを受け取り、そのままブラッシングを始めた。


 その姿を見て、俺は冷静になれた。


 鎮まれ俺の検証脳!


 悪霊退散!


「スペアもいくつか用意してあるよ」


「それにしても、【錬金術師】って聞いてたけど他にも【鍛冶師】でも取ったのか?」


 りんご飴は【錬金術師】という話だったが。


「ううん、【仮面作成師】だよ」


「は?」


「趣味ジョブってやつらしいね。自分で作ることも、スキルを使えば一瞬で作ることもできるから、色々試してるんだ。石ころの仮面とかあるよ? つけてみるかい?」


 仮面作成。

 なるほど、仮面作成師かぁ。

 鍛冶師が防具や武器を全般的に扱うのに対して、頭装備の仮面の作成に特化したジョブということだろう。


「それじゃあ装備してもいいか?」


「はい、どうぞ」


 石でできた無骨な仮面を手渡された。

 装備防御力が15増えるだけのシンプルな性能だ。

 目が見えるような穴は空いていないが、このままつけて大丈夫なのだろうか?


 恐る恐る被ると、視界は良好だった。

 穴空いてないのに……


「問題なく見えるんだな」


「ゲーム的に処理されてるんだろうね、作成に失敗した仮面は装備するだけで【盲目】状態になるものもあってそれを被ってみたら何も見えなかったよ。簡単な納品依頼も受けてみたんだけど、基準を満たす仮面を作るのは難しかったなぁ」


 【仮面作成師】に【錬金術師】、そして【水魔法師】か。

 りんご飴も順調にレベル上げをしているらしい。


「それでこれが追加の物資だね」


 俺はりんご飴から、回復薬や魔力回復薬というような物資を適宜補給していく。


 【錬金術師】は《ポーション生成》というポーション系のアイテムを作り出す基本スキルを習得できる。


 自分で作ったり他人が作ったレシピを使用して品質の高いものを準備することもできるそうだが、速さと量にこだわるのであれば、やはりスキルによって作るのが一番早い。


 ものによっては自分で一度作らないとスキルで作れないようなものもあるようで、自分だけのレシピ本を作るのも生産職の一つの楽しみ方らしい。


 俺も隙を見て《呪物生成》のスキルレベル上げをしているが、かなりランダム性が強いこちらと違い、他の生産職は真っ当に物を作り金策に繋がるのが主流なのだそうだ。


「これが依頼の物だよ」


 そして、俺はりんご飴から装備一式を受け取った。


「まだスキルレベルが低いのと、鍛冶師はスキルで作るよりも自分の手で作る方が良品になったり失敗作が作られにくいみたいでね。クロウが満足いくものかわからないけど、現状一番ステータスがいい装備を作ってもらったよ!」


「いいや、すごく助かる。初期装備よりもよっぽど性能がいいからな」


 <Eternal Chain>の装備は武器スキルや防具スキルのような戦術の拡張の方が役割としては大きいと見ている。


 各スキルの使用SPや使用MPから見るに、このゲームの戦闘はスキル攻撃とスキルによる防御及び回避を前提としているからだ

 そして、各ジョブに存在する奥義というべき存在。

 一つのジョブで、ある程度戦闘スタイルが確立されるようにデザインされているのだ。


 多くの攻撃を積み重ねHPをひたすら削る。

 隙を作り奥義で決着をつける。

 首や心臓というような急所を破壊し部位欠損により倒す。

 状態異常により、継戦能力を奪う。

 

 各々が自分に合わせた強みを目指していくのだろう。

 武器スキルがなくても、純粋に装備補正と耐久値が高い装備は重宝するだろうけどな。


 俺は《呪術師》という物資を大量に消費する戦闘スタイルなので、戦闘に対する見方が一部偏っているのも否めない。


「うん、似合ってるんじゃないかな! 色はユティナに合うように黒色にしてもらったんだ」


「調整機能のおかげで着心地は抜群だからなあ」


 りんご飴から渡された装備は黒を基調とした剣士服だ。


 【スレイヤー】シリーズというそうで、戦闘の動きを阻害しないような形のシンプルな防具である。


 装備一式を揃えることによる武器装備時に限り攻撃力を上昇させるセット効果もあるようで、初心者から中級者に向けて人気の防具だそうだ。


 確かに、どこかで見た覚えがある形の装備だ。


「りんご飴の方は順調か? 悪いな、大変だろうに」


「うん、順調だよ。もう色々動き出してるところさ。私も寝る前にもう一回商業ギルドの方に顔を出す予定なんだ。それをいうならクロウの方こそ今日は徹夜だろう?」


「俺は慣れてるから大丈夫だよ。ログインする前に仮眠を取ったし、コーヒーで軽くカフェインも入れておいた」


 りんご飴のほうもメリナと色々調整が進んでいるようだ。

 予想よりもNPCの動き出しが速いことから、準備はしていたんだろうな。

 

「おそらく、週末だな」


 この調子なら1週間もせずに決着がつくだろう。


「俺たちはそろそろ行くよ。ありがとな」


「いいさ、頑張ってね」


「おう。ほらユティナも、もう行くぞ」


 ククルを膝に乗せていたユティナは、悲しいというオーラを漂らせながらも立ち上がった。


「……また今度してもいいかしら?」


「歓迎するよ、私も早めにお店を開けるように頑張るね」


「え、ええ! 約束よ!」


 そのまま俺たちはりんご飴と別れ、<ゴズ山道>に歩みを進めた。



 <ゴズ山道>に繋がる西門へ進みながら、俺はぼそりと呟く。


「ステータスオープン」



プレイヤー名:《クロウ・ホーク》

レベル:10(合計レベル60)


メイン職業:呪術師(10)

サブ職業:戦士(50)


HP:3320/3320

MP:200/200

SP:280/280

STR:810

END:965

AGI:445

INT:210

DEX:415

CRT:130


所持スキル

〇ジョブスキル

《戦士の心得》《呪術の心得》《リラックス》Lv2

《スラッシュ》Lv5、《インパクト》Lv4《ディフェンス》Lv3《戦士の極意》Lv1

《呪物生成》Lv2、《呪言》Lv2、《呪縛》Lv2、《呪爆》Lv1

〇汎用スキル

《武具切替》Lv4、《防具切替》Lv4、《道具切替》Lv4、《早食い》Lv3、《気配感知》Lv1、《噓感知》Lv1、《暗視》



 準備は上々、なんなら<カイゼン樹林>の時の方が条件としては厳しかったぐらいだ。


 【mu-ma】【刃歯】【右手にポン】の3人組は、ハニーミルクのような例外を除けば間違いなく上位層である。


 【右手にポン】しか覚えていなかったことから、条件は分からなかったのだろうが情報が出回るより早く《嘘感知》スキルを覚え、《気配感知》を警戒した気配隠蔽スキルによる奇襲攻撃という作戦の組み立て。


 将来を見据えた計画性もあり、全員レベルもプレイヤースキルも相応に高かったとなると、あのタイミングで一度潰せてよかったな。


(ユティナ、情報を整理するぞ)


(ええ)


 今回のターゲットは【斧術士】と【土魔法師】、そして【賞金首】である【爪術士】の3人組だ。


 サービス開始初日から彼らはログインし、流れで最初は4人パーティを組んでいたらしい。

 都合が合う時はパーティを組みちょくちょくレベル上げを繰り返し、サービス開始3日目。俺たちがプレデター・ホーネットと戦う前に<カイゼン樹林>でレベル上げしようとし、毒の状態異常に痛い目を見て失敗。


 ヒーラーを誰もやりたがらなかった都合、物資を整えるために恐喝行為に手を出したのが始まりだ。


 途中パーティメンバーが1人抜けることになりパーティ編成が歪んだものの、恐喝行為で無理やりスピルを稼げたのが成功体験になり味をしめる。


 モンスターを探すために動き回る必要もなく、楽に稼げると考えたのだ。


 一人だけ【賞金首】になっているのは、パーティで狩りをしていない時にせっせとPKに励んでいたらしい。


(物資を他のPKに持たされてたらどうするの?)


 ユティナの言う通り、PKと【賞金首】の混同パーティのため、物資をパーティメンバーに渡しておくことによって【賞金首】のデメリットを打ち消せそうであるが……


(それは問題ないってよ。メリナにメッセージで確認済みだ)


 所持権の上書きは確かにされるようだが、内部ステータスにより履歴は残っているようで、特定条件下であれば問答無用で【賞金首】の持ち物はドロップできるらしい。


 例えば【賞金首】とPKがパーティを組んでいる、とか。

 意図的に他のプレイヤーとトレードして保持して貰っている、とか。


 【害意判定システム】と管理AIさまさまである。


 必要な情報は全て揃っており、考えうる戦闘パターンも大体想像がついた。


 装備もアイテムも潤沢にある。


「それじゃあ、いつも通り卑怯に油断なく隙を突いて勝つのを目標に頑張るとしようか」


「ええ、存分に暴れましょう」


 俺達のために、な。

設定資料①

戦士Lv50 (装備補正・初期ステータス除外)

HP:3000/3000

MP:50/50

SP:250/250

STR:750

END:700

AGI:400

INT:100

DEX:350

CRT:100


所持スキル

《戦士の心得》武器全般の扱いが上手くなる(システム補正:低)

《スラッシュ》SPを消費し斬撃威力上昇。

《インパクト》SPを消費し衝撃を発生させる。威力はSTR依存で任意の威力で調整可能。

《ディフェンス》習得Lv15:SPを消費し一定期間の間防御力を上昇。END依存で上昇量増加。

《リラックス》習得Lv35:アイテム・スキルによるHP・SPの回復量を増加。

《戦士の極意》習得Lv50:奥義。


HP・STR・ENDの補正が高い前衛職。

基本スキルが多く総合的な火力は低いが、下級前衛職の中ではまとまったステータスに加え、《戦士の心得》により多種多様な武器を取り扱うことのできる汎用性の高いジョブ。

奥義の《戦士の極意》はステータスを上げながら、2つまでだがSPを使用するすべてのスキルのクールタイムを30秒減らし、スキル詠唱を特定の動作に置換するというもの。

様々なジョブの育成が進むほど《戦士の極意》と《リラックス》以外の価値が薄れてしまうのが難点。

基本を押さえたい初心者向けの下級職である。



《リラックス》とは……

作中の都合、必要もなかったため一度も名前が登場しなかったかわいそうなスキル。

HP・SPの回復量を割合増加させる汎用性の高いパッシブスキル。

Lv1は5%、Lv5で10%増加

※他者からのスキル・アイテムの回復には適用されない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ