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第9話 汎用スキル

□モコ平野 クロウ・ホーク


 俺とユティナは、スキルの確認をするため<モコ平野>へ来ていた。


「よし、そんじゃ試すか。まずは《限定憑依》からだな」


「ええ、準備は出来てるわ」


 そのまま、俺はスキルを発動させた。


「《限定憑依(リミテッド・ポゼスト)》」


 すると、ユティナは黒い光となり、一瞬で武器へと吸い込まれていった。


***

スターターセット<剣>(トレード不可)(憑依:ユティナ)

装備可能レベル:合計Lv1以上

耐久値:56/100

装備補正:STR+22、討伐時獲得経験値+110%(【戦士】限定)

***


「おお。ちゃんと効果は出てるな。そっちはどんな感じだ」


(なかなか快適よ。視点はクロウが見ているものと同じみたい。あ、武器に切り替えれたわ)


 快適なのか、処理とか諸々どうなっているんだ。

 まぁそれは置いておいて、やはり汎用性が非常に高いスキルだ。

 腐る場面はなく、今後強力な装備を手に入れるほどに輝くスキルだろう。


「次は俺に憑依してみてくれ」


(わかったわ《限定憑依(リミテッド・ポゼスト)》)


 次はユティナにスキルを発動してもらう。

 すると武器から黒い光が離れ、そのまま俺の体内に吸い込まれていった。そして、俺の背中にユティナがふよふよと浮かんで……って。


「……なんか浮いてないか?」


「ええ、背後霊になった気分よ」


「だよな」


 憑依というよりは憑いている感じだ。

 体全身が浮いている。

 触ろうとしても触れないのでどうやら実体はないらしい。


「視点はどうなってる?」


「いつも通りね、周りを見渡せるから背後の状態も伝えられそうよ」


「マジか」


「身体も動かせるわね」


「ほんとだ」


 身体の操作権も渡そうと思えば渡せるらしい。

 俺の死角から攻撃されてもユティナが知覚してさえいれば、スムーズな連携は前提だが緊急回避ができるということだ。


 ステータスを見るとしっかりユティナのステータス分だけ伸びていた。

 なによりMPが増えるのが良い、次のジョブによっては戦略の幅が広がるだろう。


「それじゃ最後に《反転する(インバージョン・)天秤(リーブラ)》だな」


 そして、俺は装備を変えた。


***

呪われた手斧

装備可能条件:合計Lv1以上

耐久値:1/1

装備補正:STR+60、STR-6%

装備スキル:カースインパクト

カースインパクト(アクティブスキル):耐久値を全て使用し攻撃対象に呪いを込めた一撃を与える

***


「……ねえ、本当にやるの」


「もちろん」


「うっ……」


 武器の耐久値は1で装備スキルは攻撃系。

 そう、憑依状態で武器ロストした時にどうなるかの検証である。


「絶対必要なことなんだ。ユティナの命を無駄にはしない」


「……死んだら恨むわよ」


「ああ、いくらでも恨んでくれてかまわない。それは俺が背負うべき罪だ。《限定憑依》そして《反転する天秤》」


 先ほどと同じように、ユティナが呪われた手斧に吸い込まれていく。薄情者と言っているが悪いな、どうやら耳が遠くて聞こえないみたいだ。

 

 《念話》で聞こえてくる怨嗟(えんさ)の声を無視しながら装備補正を見ると、STR-66とSTR+6%に変わっているのを確認した。

 倍率上昇は切り捨てと。


 そしてタイミングよく穴から飛び出してくるのはおなじみ<ホーンラビット>。


「ヒャッハーーーーー! 獲物だあああ! 《カースインパクト》!」


(い、やあああああああああああ!)


 嬉々として襲い掛かる俺。

 悲鳴を上げるユティナ。

 地面を軽くふき飛ばす衝撃を発生させる<カースインパクト>

 ポリゴンとなる<ホーンラビット>。

 砕け散る呪われた手斧。

 そして。


「い、生きてるわよね!?」


「なるほど、憑依状態が解除されるだけなのか」


 おっかなびっくりといった様子で、ユティナはその場に座り込んでいた。

 ダメージを負った様子もない。

 憑依状態で武器が壊れても、ただ解除されるだけらしい。


「クロウ、あなたノリノリじゃなかった?」


「ノリノリじゃない! 超ノリノリだ!」


「……捻りつぶすわよ」


 何を!? 怖い!


「あ、【戦士】がカンストした……ん?」


「どうしたの?」


「レベル50になったからか、色々覚えたらしい」


─システムメッセージ─

合計レベル50の到達おめでとうございます。

以下の機能を解放しました。

【汎用スキル】を取得できるようになりました。


条件を達成している以下のスキルを取得しました。


《早食い》Lv1:アクティブスキル 消費SP1

アイテムボックスに収納状態の飲食系アイテムを1つ消費する。

効果がある場合適用する。

※対象を認識しておく必要がある。

※適用される効果のクールタイムは対象のアイテム依存

クールタイム1分(最短10秒)


武具切替(ウェポン・スイッチ)》Lv1:アクティブスキル 消費SP1

アイテムボックスに収納状態の武具を一瞬で取り出し装備する。それまで装備していた武具は代わりに収納される。

クールタイム3分(最短30秒)


防具(アーマー・)切替(スイッチ)》Lv1:アクティブスキル 消費SP1

アイテムボックスに収納状態の防具を一瞬で取り出し装備する。それまで装備していた防具は代わりに収納される。

クールタイム3分(最短30秒)


道具切替(アイテム・スイッチ)》Lv1:アクティブスキル 消費SP1

アイテムボックスに収納状態の任意のアイテムを取り出す。

クールタイム1分(最短10秒)


 【汎用スキル】は条件の達成もしくは特定のジョブになることで取得することができるスキルだ。

 取得すればどの職業でも使用可能になるものを【汎用スキル】と呼び、ジョブで覚え、スキルレベルを最大にすることで自由に使うようことができるスキルを【準汎用スキル】と呼ぶらしい。


 そして今覚えたのは俗にいうショートカットと呼ばれるものなのだろう。

 戦闘中の装備の切り替えや、回復アイテムや妨害アイテムの取り出し。場合によっては食事アイテムによるノータイムでのバフの継続などまさしく必須の機能だ。


 VRMMOでショートカットをどのように再現するか気になっていたが、どうやらスキルで代用するらしい。

 メニュー操作するのは大変だと思っていたが、このタイミングで解決するようなデザインになっているということだろう。

 ただまぁ、一つ言うことがあるとするなら、


「最初から覚えられるように修正しろ!」


「きゃっ! ちょっとなによ、びっくりするじゃない!」


「あ、悪い」


 ただ、突っ込まずにはいられなかった。

 意図はわかる。

 最初から使えるとメニュー操作に不慣れなままになってしまうからだろう。


 それでも、ショートカットの有無はストレスフリーな操作環境には不可欠なのだ。

 レイナに伝える意見として心のメモに書き残す。


「問題はこっちのスキルだな」


─システムメッセージ─

【戦士】のレベルが50になりました。

以下のスキルを習得しました。

《戦士の極意》Lv1:アクティブスキル 消費SP 最大SP 20%

5分間HP/MP/SPを除くすべてのステータスを10%上昇する。

5分間、SPを消費する任意のアクティブスキルを指定しクールタイムを30秒減少する。

5分間、SPを消費する任意のアクティブスキルの発動詠唱を特定の動作へ置換する。

※2つのスキルまで設定可能

※指定できるスキルや動作には制限がある

クールタイム20分(最短10分)


「強いんじゃないか……?」


「そうなの?」


「ああ、発動するスキルの詠唱とクールタイムを省けるのは大きい」


 それこそ、《スラッシュ》を指定すればSPこそ必要だが、すべての通常攻撃が《スラッシュ》によるスキル攻撃、などもできてしまうのだろう。


 サービス開始してたった1日だがゲーム内では2日経過しており、動画やSNSで情報は続々と集まっている。

 例えば【剣士】は風属性を纏う剣技である《暴風剣(ストームソード)》を、【炎魔法師】であれば《フレイムスピア》といった強力な攻撃手段をレベル50で覚えるのが確認されている。 


 そういった切り札の他にも他の戦闘ジョブが威力の高いスキルを覚えられるのに対し、【戦士】というジョブは他の前衛職に比べて覚えるスキルは基本スキルばかり。

 歯にもの着せずにいえば、【戦士】のスキルは他の職に比べて弱いといえた。


 なぜ、そのような差が生まれたのか気になっていたが、どうやらこのスキルの存在によるものらしい。

 たしかに汎用性の高さは随一だ。


「《戦士の極意》」


「……クロウ、あなた青く光ってるわよ?」


 どうやら俺は少し光っているらしい。

 スキル発動の光というやつか。


 《スラッシュ》を思い浮かべながら発動したけどこれでいいのか?

 そのままなんとなく、剣を振るう。


「おお、発動した」


 SPが消費され、《スラッシュ》が発動した。

 連続して振ると、全て剣が薄く光り《スラッシュ》になっている。

 SPもその都度消費されるが、火力はだいぶ上がりそうだ。


「確認は終わったかしら?」


「おお、終わっ……た……」


 笑顔だ。

 とびっきりの笑顔だが、なぜか俺は睨まれているような感じがした。

 なぜか、と言われたら先ほどの検証に対する不満に違いない。


「……」


 にこーっとユティナは笑う。


「……」


 俺もにこりと笑顔を返す。


「……そう、だな。確認することは終わったし、美味しいごはんでも食べようか。ああ、そうしよう。冒険者ギルドに備え付けの飯所があったはずだ!」


「あら? それはいいわね」


 そう言えば、ユティナの機嫌が少し良くなったような気がする。


(……食は効果的、っと)


 その小さな発見を心のメモに残しつつ、俺たちはモコ平野を戻っていった。

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