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ヒロインは放棄します

作者: ely

ブクマが500越え。

皆さんありがとうございます。

たった?と思われても嬉しいので活動報告にちょっとした小話を投稿しました。

よろしければ読んで下さい。

誤字脱字報告がコメント欄にきそうな気がしています。

 10歳のある日、季節外れの風邪にかかり、三日三晩高熱に(うな)され、テンプレのように思い出しました。

 辺境伯令嬢である私、リーゼロッテ・シュクランは、乙女ゲームのヒロインだと。

 16歳で王都の学園に通い、乙女ゲームな展開をして、貴族令息を(たら)()み、皇太子妃とか奥方様になる。

 その為に乗り越えなければならない試練、それは、悪役令嬢とその取り巻きによる虐めだ。

 ヒロインだから庇って貰えるし、最終的にざまぁ出来る。

 お花畑なだけの勘違いさんも数々の話の中に存在するが、実際に虐められて過ごした学生時代、たかが浮気男の為に虐めを受けたいとは思わない。

 夫と息子に看取られ、享年78歳。

 堅実に回避の道に進む事にします。

 ここからは私の人生を語ろうと思う。

 私の前世はいわゆるデブス。

 小さい頃から子豚でダイエットは意志薄弱で成功しなかったので生涯デブスだった。

 友達という友達はおらず、漫画と小説は好きだったが、音楽はそんなに好きではなかったので、歌と共に人生はあるなんて事も無い。

 前世でも良く結婚出来たなと自分でも思うが、そこは見合い結婚なので出会いもへったくれも無い。

 旦那になった人はハゲデブ。

 見た目からして、割れ鍋に綴じ蓋なのだが、ハゲデブ旦那は意外にリア充で、知り合いも多く、音楽好きだった。

 見合い結婚という物は意外に上手くいく物で、リア充なので、結構な頻度で飲みにも行っていたが、浮気もしないし、病院の送り迎えもしてくれるし、買い物時は後ろを付いて来る鬱陶しさはあるが、買う物には口出ししないし、普通に「こっちは仕事をして、疲れてる」と言う、パワハラ旦那でも50歳過ぎても夫との触れ合いがあるという何故か愛され人生だった。

 ドッジボールでヘタをした私に、ネチネチ嫌味を言うクラスメイトがどういう人生を辿ったのかは知らないが、旦那と子供から愛されていた私はそう悪くない生涯だったのだ。

 ヒロインだと気付いた理由は単に漫画を読んだから。

 元々のゲームは全く知らないから、誰それルートについて語るオタク程、のめり込んでもいないので「推し」なんて存在しない。

 全巻大人買いに付随していただけの要らないファンブックを読んで「ホー!!」と思った位だ。

 そして、大抵の人もそうだと思うが、漫画だと大まかなストーリーや、登場人物や、国の背景なんかを覚えている。

 私は、漫画は所詮フィクションと割り切れる派。

 ヒロインはこの男とくっ付けと願うが、ストーリー自体に文句があるわけでは無い。

 そして、二次元の男ヒーロー単体にときめいた経験も無い。

 ちなみに恋愛ドラマのヒーロー役にときめいた事も無い。

 所詮、俳優の演技だと思っている。

 この男とくっ付けと願った男と自分がどうこうなろうと思わない。

 総じて婚約者のいる浮気男でしかないから、願い下げだ。

 まあ、一人婚約者のいないのはいるが、年下は好きじゃない。

 性癖NG。


 とにかくヒロインとして、畑違いなのはご理解頂けただろうか。


 性格的に適役はサポーター役かモブだ。

 つまり、なにが言いたいのかと言うと、たとえピンク髪でもそこそこ可愛く、将来Dカップという普通体型を得られる事が出来るのだから、お見合い結婚拒否でもないので、ヒロインは放棄して、平穏無事に政略結婚でもして、人生を過ごしたいなあと、現在まだ子供の私は思っているわけだ。


 時は流れた。

 現在、15歳。

 季節は夏。

 辺境領において皇太子殿下と出会いがあるのが、この年の7月だ。

 リーゼロッテは辺境伯令嬢らしく剣の訓練をしている。

 そこに入る魔獣情報。

 あ、この世界、魔王は出現しませんが、RPGのモンスターみたいな魔獣が特定の森とか荒野とかに出現します。

 故に特定の森と荒野のある辺境の守りを重視し、辺境伯が置かれているのですがね。

 つまり、()せばいい物をおバカなリーゼロッテは森に出た魔獣を退治しようと森に行き、危ないところを皇太子殿下に助けられ、出会っちゃうわけだ。

 結果、ケンカップルな事に発展して王都行き、決定だ。


 誰が行くか。


 私は忠実に練習だけをこなし、魔獣が出た森には近付かず、出会いは回避した。


 しかし現在、回避した筈の王都の学園の入学式に居る。


 これが、かの有名な「強制力」というヤツらしい。


 おバカなリーゼロッテの代わりに、両親を魔獣に殺され養女になったセシルが皇太子殿下とケンカップルをし、私迄、巻き添えを食ったのだ。

 養女だけ王都の学園に行かすのは如何(いかが)なものかという大人の事情らしい。

 パステルピンク髪の私の代わりをローズピンク髪のセシルがしてくれるのは良いが、婚約者も存在するのに、浮気する気満々の皇太子殿下。

 引くし、萎える。

 そんなにピンク髪が好きなら自分がピンク髪に染めろと言いたい。

 せめてもの抵抗で、常にアホ毛付きポニーテールだった漫画と違い、アホ毛無し、二つに分けた三つ編みと伊達眼鏡をしてみた。

 私は絶対にモブとなるのだ。


 モブ生活、初日。

 皇太子殿下を学園内の案内に使おうとする、おバカなセシルに関わりたく無いので、無言を貫く。

 それにしても浮気皇太子殿下でありながら、婚約者、赤髪グルグル縦ロール吊り目美人様の尊さよ。

 すぐに泣くセシルに懇切丁寧に、自分がいかに世間の道徳と令嬢の常識から外れ、不敬な行いをしているのか諭しているその根気。

 素晴らしい淑女だ。


「ソフィア、そのようにキツイ物言いをすべきでは無いのでは?気が強いセシルがすっかり怯えているではないか」


 浮気皇太子が何か言っている。


(待てよ……ここでしゃしゃり出れば、バッドエンドで辺境に戻るのでは♡)


 腹は括った。

 早速きた浮気皇太子の「俺の女、虐めんな」発言。

 その言葉がクラスメイト女子の虐めに繋がるのだ、滅せよ自己満男。


「殿下が御案内役をかって出るのは、要人としての義務ですのね!でしたら、新入生を全員ご案内して下さるのですね。では、セシル、貴女はこちらのカレダンの姫やヴェルブ公爵令嬢より身分が低いのですから、こちらにいらしゃい!」

「エー、ヤダ」


 浮気皇太子の腕に掴まるおバカなセシルの頬を目一杯の力で引っ叩く。


「婚約者の居る方に身を寄せる、娼婦のような行動と、言葉遣いを改めないと明日にでも辺境に戻りますよ!元々、入学する気は無かったのですからね!」


 退学処分ドンと来いでズケズケ言い募る。


「分かったよー、リーちゃん。痛いよ、もー♡」


 若干、Mでおバカなセシルが気にせず(どっちかと言うと嬉しそうに)、私に腕を絡ませて頭を肩にスリスリしているのを見て、浮気皇太子は引き下がった。

 結果、浮気皇太子の案内によるバスツアーな校内見学を終了させた。

 そして、尊い縦ロール婚約者様の権力に守られ、退学は出来なかった。

 世の中は上手くいかない。



 今日も今日とてモブ生活。

 無事、寮にも入り、学生生活はスタートしてしまった。

 おバカなセシルは同じ部屋だ。

 クラスメイトは最悪。

 浮気皇太子と、浮気者2号である騎士団長の息子と、おバカなセシルが同じクラスだ。

 どうせなら尊い縦ロールの婚約者様と一緒が良かった。


「ヤダ、教科書忘れちゃったー、見せて欲しいなぁ」


 何故か急成長を遂げた胸を押し付けつつ、浮気者2号(騎士団長の息子)にお強請りするおバカなセシル。

 ツカツカ寄って行き、セシルの耳を引っ張る。


「教科書全部置いてくる馬鹿は授業を受ける気が無いの?みっともないからこっちに来なさい!」


 浮気者2号は硬派を気取って無口なので、何か言ってくる事も無い。

 好都合な相手だ。

 女子ばかりが座る席でセシルを囲う。

 エーンと言いつつ涙も出ていないセシルの机の上に、セシルの教科書を全て、鞄から取り出す。

 倍量の教科書の肩への負担の恨みは、耳を引っ張る程度では解消されない。

 睨み付けるとおバカなセシルは嘘泣きを止めた。

 席を立とうとしていた浮気皇太子はそのまま座っている。


「全く、男性に囲まれた席に座るだけでもみっともないのに、また不用意に触るなんて、あの方にも婚約者がいらっしゃいます、嘆かわしい」


 かなりお局発言だが実際、お母さんだったので、こんな誰でもいい害悪な尻軽女は再教育対象だ。

 現在進行形で自分はガッツリ悪役令嬢な立場かもしれないが、問題無い。

 こんな害悪を残し、一人で辺境に戻るのは忍びないが、帰宅希望。

 その後、おバカなセシルは学園でわざとハンカチを男性の前で落としたり、転んだりしている。

 パンツを見せているのはわざとだろう。

 ミモレ丈スカートは転んだ程度で、普通あそこ迄、捲れない。

 寮では落書きしたり、破ったりしようとする教科書を死守した。

 教科書がどうにかなれば、男に見せて貰いながら、お触り出来るという淫乱発想はどこで培ったのか。

 16歳やぞ?

 寮の部屋でおバカなセシルを硬い床に正座させる。


「今度、婚約者の居られる男性に性的嫌がらせをする事があれば、手紙を書く事になりますよ」

「もー、お堅いよ。学生なんだし、遊んだっていいじゃないの。せっかく良い家柄の男が一杯なんだから、正妻じゃなくても妾にして貰えれば万々歳なのに。若い内は流されやすいから狙い目なのに」


 足を崩そうとするおバカなセシルの太腿を叩く。

 痺れに悶えているが、言っている事は全く理解出来ない。

 そして、Mなのでおバカなセシルは内心、悦んでいる筈だ。


「本当に別の世界の生き物ね、貴女って、前世でもあるの?」

「エー、何ソレー」


 生態はよく知らないが、転生ゲーオタお花畑女、()しくは、転生セクハラ勘違い女ではないらしい。


「もう、高級娼婦でも目指しなさいな。それでも礼儀作法と喋り方、政治について勉強しないと無理ですからね」


 おバカなセシルに一番、現実的な提案をして、父親に手紙を書く事にした。

 早急に帰宅希望。


 モブ生活一週間。

 領地のお隣さんで幼馴染でもある、ツロガン侯爵家の次男である、髪も目も肌も全て焦げ茶色のトラビス様と再会した。


「久し振りだな。会わなくなって、二年になるのか」


 トラビス様の学園入学迄、年に数回、共に過ごし、声変わりも無いまま別れたが、白くて、細い少年が、バキバキ、ムチムチに成長していた。

 市販のシャツは胸筋で閉まらないから、シャツの(ボタン)は第二ボタン迄開放していますよ。

 深夜放送や雑誌裏の怪しい通販器具の使用前、使用後を目撃。

 思わず「トラちゃん、立派に成長したねぇ」と親戚のオバちゃん気分になった。

 デブっていて、首が太いからフォーマルシャツはオーダーメイドだった旦那を思い出す。

 まあ、大分スタイルはトラビス様の方が良いが、この世界では敬遠されがちではある。

 ザイル系はこの世界ではモテないのだ。


「トラビス様は騎士科にでも入ったんですか?」

「そうだ。リーゼも剣の稽古を続けていたのか」


 騎士爵は平民だが、将来は開ける。

 王宮で勤める事が出来れば国家公務員で()(はぐ)れも無い。

 将来をきちんと考えているトラビス様は真面目で素敵だ。

 どっかの浮気令息達より好感が持てる。


「辺境伯令嬢としての嗜みです」

「令嬢なのに筋肉が付くぞ」


 ホホホと笑っておいた。

 贅肉よりマシだと鍛えたので、力を入れるとシックスパックな自分は、背丈も伸びたし、漫画のヒロインとは少し違った体付きになっている。

 望むところであるから、問題は無い。

 それでフラグが折れるなら、筋肉で折りまくるの一択。

 浮気者2号(騎士団長の息子)が鍛錬しに来る時間が近付いてきたので、朝の鍛錬は終了させた。

 乙女ゲーで誰もいない場所で朝早くから訓練する真面目な男(ファンブック参照)だったが、現実は、ただ単にその地位故に、周りから気遣われていただけだ。

 将来、上に立つ気があるなら、そっちこそ気遣って、もう少し遅く来い。

 迷惑な。


「久し振りだから、昼食でも共にしないか?」

「ええ、喜んで。では、トラビス様、後程」


 トラビス様と別れ、寮に戻るとおバカなセシルが口を開け、お腹を出して寝ていた。

 昔から寝相が悪いのだから、学習して、いい加減にネグリジェタイプの寝間着は止めたらいいのにと思いながら、自分のベッドに潜り込む。

 二度寝は最高だ。

 爽やかな朝。

 おバカなセシルは当然、お腹が痛いと、部屋のトイレを独占している。

 と、いう事は「治ったから急いで学校に行ったら、素敵な人と会っちゃった、キャッ」の巻で、仕事一辺倒な父に捨て置かれた母親の病気を気遣い遅れた、一学年上になる浮気者3号である宰相の息子と出会うわけだな。


(カーッ、ヤダヤダ。世の中、浮気男ばっかだよ!お花畑をビシッと撥ね退ける気概は無いのかねぇ)


 パワハラでも浮気無しな夫を持つ、パート主婦は理解に苦しむ。


(イヤ、おバカなセシルが相手だし、ヤりたいだけか?)


 食堂前に行くとまた、おバカなセシルが眼鏡男子に纏わりついていた。

 どうやら浮気者3号(宰相の息子)らしい。

 初対面の筈なのにケーキを強請っている。

 トントン肩を叩かれ、振り向くと頬に指が刺さった。


「トラビス様……10歳児ですか?」

「それよりアレは放置で良いのか?」

「妾狙いだそうで。もう、将来は娼婦決定ですし、最後の思い出に玩ばれて、捨てられればいいかなと」


 確か浮気者3号は早々に婚約者から婚約解消されるので、問題は無い。

 女性から見切りをつける。

 立派だ。

 その後、第二部で主役となる婚約者様が留学先の王子と恋に落ちるのも良い。

 その後、再会して、ざまぁされるのも良い。

 ゲームの原作者は眼鏡男子に恨みでもあったのか?と、思われる展開だが、ここは静かに見守るだけだ。

 逆にその浮気男とくっついて欲しい。

 おバカなセシルには、ソイツをお勧め。


「14歳で父のベッドに潜り込んでくるだけあるなぁ」


 変な感心の仕方をトラビス様はしたが、それは真実だから反論は無い。


「その節は大変、ご迷惑をおかけしました」


 身内の不始末は謝るしかない。

 兆しはあったのだから早々に何とかするべきだった。

 場末の売春宿とか、どこかにある鉱山の売春宿とか、隣国の売春宿に預けるとか。


「まあ、過ぎた事だ。隙のあった父も悪いしな。いまだに立場が逆転しているから、あれから家庭は円満だ」

「それは……何とも」


 良かったですねとは言い辛い。

 二人でランチを持ち、向かい合わせで食べる。

 トラビス様はランチの他に惣菜パンも三つも食べていた。

 浮気者3号(宰相の息子)とおバカなセシルは、浮気者3号の婚約者様に睨まれているが、気付いていない。

 良い傾向である。

 最高な傾向である。


 漫画の展開として騎士団長の息子から宰相の息子に行き、皇太子殿下からの隣国の第二王子(皇太子殿下は相手が決まっているから)になる。

 ファンブックの表紙には五人居たから、五人目は誰だったか思い出せない。

 辺境伯令嬢だから騎士団の誰かか、暗殺者か。

 食器のトレイを持って片付けようとしているおバカなセシルがまた、男性に突進して、転がっている。


(思い出した!魔法学の稀代の天才エミリオ(庶民)だ!)


 年下の性的対象外の為、スッカリ忘れていた。

 だが、おバカなセシルはエミリオ君に無関心で、舌打ちしただけで、浮気者3号(宰相の息子)と腕を組んでいる。

 ファンブックによると、エミリオ君は育成系の対象者で卒業する頃には誰よりも美形になるのだが、今はキノコカットの瓶底眼鏡だ。

 このままエミリオ君は、おバカなセシルから逃げ切って欲しいものである。

 浮気皇太子担当の縦ロール婚約者に起こされて、ホコリを払われている。

 是非とも庶民と侯爵令嬢の、原作無視な禁断の恋に発展して欲しいところである。


「大丈夫ですの?まあ、血!」


 おバカなセシルが、割った皿を片付けないので、エミリオ君が怪我をしたらしい。


「だ、だ、だ、大丈夫です。こ、こ、こ、こんな怪我」


 エミリオ君が自分を治療して、割れた皿迄、元に戻している。

 目を丸くする縦ローいや、ソフィア様がエミリオ君の両手を両手で握る。


「こんな素晴らしい魔法を見たのは初めてですわ、是非、お話をお聞かせ下さいまし」


 興奮気味に畳み掛けるソフィア様はいつもの高貴な感じではなく、とても親しみやすい。

 ギャップ萌え。


「ぼ、僕で良ければ」


 赤くなって俯くエミリオ君。

 まさしくヒロインとエミリオ君の出会いと、仲の深め方。


(推せる)

「気持ち悪く笑うな」

「感じ悪ッ」


 ケンカップルな遣り取りに「ふ」と思った。

 フラグ立ててるなと。


 父親からの返事にトラビス様との政略結婚の打診がきた。

 見合い結婚は吝かでは無い。

 返事は「是」。

 夫婦で魔獣討伐、悪くない。

 おバカなセシルが浮気男達のお気に入りになったので、部屋が変更になり、縁が切れたようで、嬉しい。

 今日も今日とてモブ生活を満喫している。

 朝練ではトラビス様とケンカップルをしている。

 今日は膝カックンをやられた。


「もう!精神年齢、10歳!」

「リーゼに隙があるだけだろう」

「あ、そうだ。お婿に来てくれるそうですね、ありがとうございます」


 儀礼的にお礼を言ったが、トラビス様から両手で両手を握られた。

 思っていたのとは違う対応だ。


「いや、こちらこそ、婚約を了承してくれてありがとう。嬉しい」


 満面の笑顔で言われた。

 なんか……愛されているような気がしている。

 悪くない気分。


 昼間は図書室で麗しのソフィア様とエミリオ君の睦まじい姿を微笑ましく見守っている。


「お前は勉強する気はあるのか?」

「シーッ。聞こえない」

「だからA地点を通り……」

「それでしたら、XYで……」


 出刃亀は撃沈。


「……勉強しよ」

「初めから真面目にしろ。あー……でも、距離が近いな、あの二人」

「エ?私達と変わらないから普通じゃないの?」

「こっちは婚約者同士だから」


 トラビス様から耳を赤くされて言われた。

 そんな反応をされると、こっちが照れ臭くなってしまう。

 取り敢えず勉強する事にした。


 放課後は学校内のカフェテリアでお茶をする。


「あー、寮のメシが足りない」

「キングコングかッ」


 ちなみにキングコングとはゴリラみたいな魔獣である。

 大きさはゴリラだが、皮膚が物凄く硬い。

 (なまく)らは折れるから、剣は二本持ちが鉄則の討伐相手。


「そこは私が作ろうか?とかじゃないのか?」

「面倒臭いから、無料な学園の食堂にすれば良い」

「リーゼのメシが食いたい」

「それは結婚してからで」

「五年、イヤ、三年後じゃないか」

「トラビス様が卒業したら、すぐじゃないの?」


 言ってから、求婚めいている事に気付いた。


「お、おう。じゃあ、それで」


 否定もされなかった。

 二人で赤くなって、俯いたままでいる。

 かなり、恋愛満喫状態だ。

 コレの脱出の仕方は知らないから、現在漫画の頁を頭の中で捲り中である。

 決戦はトラビス様の卒業式になりそうだが、花嫁修業と称して帰宅希望して良いだろうか。

 顔を上げて、トラビス様を見て、トラビス様と一緒に学生カップル生活を満喫するのも良いかもしれないと思い直した。


「好きな人が出来たら、すぐに言ってね」

「そんな、器用じゃないし、マメでもない」


 この日、初めてもう少し一緒に居たいとか、離れ難いとかいう気持ちを味わった。


 夏休み、浮気男達に連れて行かれたおバカなセシルは放って、帰省した。

 道中は帰省先がほとんど変わらない、トラビス様が一緒だ。

 トラビス様の実家、ツロガン侯爵家、年間コンパートメント席予約の恩恵を受け、トラビス様と共に個室に入る。

 浴室とトイレは付いていないが、個室で他の人も同席しないので気楽だ。


「あー、ハラ減った」

「キングコングかッ。寮母さんからのお弁当を食べたばかりじゃなかったっけ?」

「ミートローフサンドたった8切れじゃないか」

「リンゴ丸々一個、齧ってたよね?」

「例のアレ無いの?」


 例のアレとはサラダチキンである。


「ある」


 原材料と手間賃は貰っているから結構な稼ぎになっているので、この世界の恩恵であるジップ○ックもどきを手提げかばんから引っ張り出す。


「用意してるんじゃないか」


 トラビス様はホクホク顔になり受け取った。


「今日も美味い」

「そりゃ、どうも」

「一生、食べたい」

「飽きるでしょうが」

「飽きない。リーゼを15年前から好きでも厭きないから」


 急にブッ込まれた。

 そして、気付いた。


(貞操の危機じゃね?)


 17歳(三年生、来年卒業後、即、結婚)と16歳(一年生、婚約者の卒業と共に退学、即、結婚)だが。


(チョイ、待てよ)


 自分はこの世界のヒロインな立場で、浮気男達に無条件愛されがある女だ。

 身分が高く、結婚相手に処女性を求める浮気男達の存在があるのだから、処女は取っておくべきではないと思われる。

 ウッカリ素顔バレして、勝手に惚れられ、求婚されれば断れないし、トラビス様とも引き離されてしまう。

 こっちはもう、既に見合い結婚ではなく、ガッツリ恋愛結婚なのだから、浮気男達との結婚こそ政略結婚になってしまう。

 そうなったら自殺の一択だ。


(由々しき事態!)


 恐ろしいバッドエンドに気付いてしまった。

 速やかに座席に正座し、トラビス様に土下座する。


「ヨロシク、オネガイシマス!」


 トラビス様はポッカーンだが、気分の問題だから気にしない。

 いつでも手を出して貰って良いように、今日の下着の色をCheck(チェック)しにトイレに行く事にした。


 由々しき事態は続いている。

 トイレチェックの結果、下着はお子様めいていた。

 ボーダー柄。

 せめてギンガムチェックなら許容範囲だったものを。

 購入した覚えが無いから無理だ。

 純白清楚下着はお値段の関係で持ち合わせていないのが悔やまれる。

 すぐに脱がされて、ポイされた経験しかないから気にしていなかった。

 リア充女子は大変だったのだな。

 尊敬する。


(今日の処女は死守しよう)



 あの日の処女は死守出来た。

 喜ばしい。

 この時の私はまだ余裕でいた。

 今は、後悔している。

 何故、もっと押さなかったのか。

 ヒロインやぞ。


 夏休み、トラビス様のツロガン侯爵家にある湖でボート遊びをした。

 ヒロイン様なので当然、事件が起こる。

 ボートは見事にひっくり返り、二人でズブ濡れになった。

 濡れた服をボート小屋で脱ぎ、乾く迄に盛り上がって、「こんな所でぇ♡」とはならず、岸で待っていた侍女さんや従者さん達からバスタオルで包まれ、馬車でツロガン侯爵屋敷に帰宅した。

 お風呂と着替えを借り、トラビス様の部屋で共に過ごす。

 着替えはトラビス様のお母様から借りた。

 いつもの雰囲気とは違う大人ドレスにトラビス様が「辛抱堪らん」で、「アレー♡でも、もっと♡」ともならず、お母様参加で婚約披露の祝賀会で着る予定のドレスデザインを真面目に選ぶ事になった。

 ブラウンのドレスは地味ではなく、意外とオシャレな物でした。

 先入観はいけないね。

 そして、そこから何故か辺境領に帰宅する事なくツロガン侯爵家で過ごし、婚約披露の祝賀パーティーもしたが、キス一つ無かった。


 いや、そういう世界ですよ。


 キスは結婚式で、婚前交渉は(もっ)ての(ほか)が常識だと知ってましたけど、漫画でチューはしてましたよ。

 想いを確かめ合って、チュー。

 デートして、チュー。

 虐めから助けられて、チュー。

 ん?アバズレじゃねえかッ!


 婚約披露の祝賀パーティーで、これまたヒロインとは違う巻き髪にして貰い、私の憧れであるソフィア様(浮気皇太子担当の悪役令嬢です)にお祝いの言葉を貰う。

 ソフィア様のパートナーである筈の浮気皇太子は参加していないので、トラビス様のご友人であらせられる兄上様と挨拶した。

 王の代理に夫婦円満な王弟様が出席したので、浮気者達に会わずに済み、気分良く過ごした。

 愛する人との一生の思い出を穢されたくないから、不参加なのは大歓迎だ。

 しかし、良い物は見た。

 お忍び中の隣国の皇太子殿下と浮気者3号(宰相の息子)の婚約者様が密かな出会いを果たしていたのだ。


(推せる)

「覗き見は止めておけ。俺は腹が減った、何か食いに行こう」


 推せているのに、トラビス様からズリズリ引き摺られて、離された。


(漫画で読んだから、良いけどさー。甘い雰囲気に感化されて、チューしてくれても良いんですよ)


 ムッとしながら、トラビス様に赤身肉を給餌する。


「こ、こういうのってイイな」


 チューはしないが、いきなりブッ込まれた。


「そっちがそんなに恥ずかしがると、こっちも恥ずかしくなるんですけど」


 二人で赤い顔をして、俯くのを家族に生温く見守られた。

 家族の前は余計に恥ずかしい。

 そして、進展の無さはこの真面(まとも)で純情な婚約者のせいだと気付いた。

 浮気者じゃ無い人は真面(まとも)なので、恋の発展は急激には進まないらしい。

 こっちは好感度、爆上がりで押し倒して貰っても良い位の盛り上がりを見せている。


(チクショウ、ヒロイン、アバズレは健在なのか)


 道理で浮気者達に良いようにされるわけだなと悟りつつ、自分を律する必要がありそうだとも思った。

 だが、万が一という事もある。

 トラビス様であれば問題は無い。

 毎日、同じ屋敷で一緒なのだから、間違いは起こる筈。

 純白下着を用意しなければならない。

 ところでトラビス様は、ピンクと黒、どっちがお好きだろうか。

 毎日、可愛い下着を装着し、準備は万端にしておいた。

 リア充女子は気が抜けなくて大変だ。

 婚約披露の祝賀パーティー以降、お茶の時間は二人が多くなったので、食べさせては貰った。

 膝抱っこもクリアーした。

 良い傾向。

 俺色の指輪とネックレスとピアスも貰った。

 ピアス穴は生まれた時から開いているからだ。

 毎日同じは嫌だろうと、雫型と、ハート型と、お花型も貰った。

 俺色なので、茶色宝石だが、これはきっと溺愛に違いないと、毎日装着している。

 お花畑ヒロインになってしまいそうな位には「私、幸せ♡」状態を満喫。

 これ程愛されているのだから、絶対に機会はあると思っていた。


 しかし、今、由々しき事態が発生している。


 背中に流れる冷や汗。

 学園に帰宅する為のコンパートメントでトラビス様と向かい合わせになっているが、処女を死守して学園に戻る羽目になった。

 予定と違う。

 恋に浮かれ、若さ故の夏の過ちは起こらなかった。

 どういう事だろうか。

 私の脱ヒロイン、順風人生の為の最大の敵は、真面(まとも)な婚約者になりそうだ。

 手強そう。


 夏季休暇明け、おバカなセシルはどうやら夏の間に浮気者3号(宰相の息子)とくっついたらしい。

 大歓迎な展開である。

 他の浮気者達の嫉妬の目が気持ち悪い。

 人目を憚らずイチャイチャする二人。

 ヒロイン化する悪役令嬢。

 取り巻き連中の虐めはお嬢様なので、逆に二人を閉じ込めてどうする的な物なので、おバカなセシルの首にキスマークを見てしまった。


「あんなのが身内だなんて、嫌過ぎる!」

「まー、まー。ご令嬢は婚約の解消に動いているらしい。だが、慰謝料の請求はされそうだな」


 トラビス様の言葉に私は愛されヒロイン特性を発揮すべく、髪形をヒロイン仕様のポニーテール(アホ毛付き)にして、女子寮の浮気者3号(宰相の息子)担当の悪役令嬢様の部屋を訪ねた。

 ポニーテールにすると何故か現れる触角(アホ毛)。

 この世界の七不思議の一つにしても良いのではないだろうか。

 彼女は目の周りを赤くして出迎えてくれる。

 良心が痛む。


「申し訳ございません、我が家の養女であるセシルがとんでもない事を」


 部屋前で土下座。


「お立ちになって、そんな場所で迷惑でしてよ」

「そうですか、では、お邪魔します」


 床に置いた手土産を持って、遠慮せずに入り込む。尊き方から、


「ちょっと、貴女、部屋に入れるなんて言ってませんわよ」


 と、窘められたが、結局は良い人なので、ブツブツ言いながらお茶の用意を侍女に頼んでいる。

 流石、特権階級。

 侍女OK。

 あの侍女さんも尊き方を支える仕事の出来る女性だから、漫画のメインキャラだ。


(おお!感動をありがとう。推します)


 手土産は尊き方の好みを押さえた激辛ごぼうスナック。

 この世界にごぼうがある事すら驚愕だったが、お菓子になっていたのを見つけた時の衝撃。

 辛い物が苦手な私でも手に取った。

 異世界で食べる喉に刺さり、咳が止まらない位、唐辛子の利いたキンピラゴボウ。

 百年前の開発者の名前を調べ、転生者かどうか疑ったね。

 そして二度と買わないと思っていたが、買った。


「なんですの、このシャキシャキ食感と独特の香りと、絶妙な辛味。素晴らしいですわ」


 見開いた眼、高揚して染まった頬、美味しいと思ってくれているに違いない顔。


(推せる)

「お気に召して頂き光栄です。私、リーゼロッテ・シュクランと申しまして、セシルとは同い年ですが姉に当たります」

「そ、そうなの?あ、あ、貴女も家庭の事情とはいえ、大変なのね」


 尊き方は良い人なので、妾の子と勘違いし、動揺しているが、そんな事実は無い。


「家庭の事情はありません。天涯孤独な辺境領騎士夫婦の忘れ形見を両親が養女にしましたので、セシルは元領民で、天涯孤独です」

「じゃあ、貴女と一切、血の繋がりは無いんですの?」

「はい。ですが、セシルの教育はちょっとおかしな事になっておりまして、辺境領では素直で明るく純真、無邪気だった筈が、王都に来るなり馬鹿で、考え無しで、享楽的な男好きの恥知らずに成り果てました」


 尊き方が居心地悪そうに、何度も座り直している。

 現在セシルは庇いも出来ない位、自分勝手に過ごしている。

 女子寮ではなく、男子寮に住み、浮気皇太子の権力に守られている為、誰も、何も、言えない今の状況。


「……た、大変なのは理解しましたわ」

「ありがとうございます。もし、婚約の解消の原因にセシルが入る場合、慰謝料は、出来ましたら分割払いでお願いしたいのですが、いかがでしょうか」

「セシル様自体に罪は償って貰いたいところですが、辺境伯様に迄責任を問うのは些か……大変さは理解しましたので……」


 素早く立ち上がって、尊き方の傍らで跪き、白魚のような手を役得で握りしめる。


「でしたら、武力で恩返し致します!浮気に走った宰相のご子息にお嬢様が指一本も害される事の無いよう、全力を尽くさせて頂きます!」

「た、頼もしいですわ。その時は、お願い致しますわね」


 尊き方の微笑み、頂きました。

 満面の笑顔を返すと、尊き方からトロンとして、少し頬を染められた。


(おお、攻略されそうな位、色っぺえや)


 流石、二部のヒロイン様は可愛いだけじゃなく完璧美女。


「では、私は失礼致します」


 尊き方の手の甲に尊敬のキスをして、騎士っぽく挨拶して、部屋に帰宅した。


(尊き方の為なら私、浮気者3号をさいの目切りにして差し上げます!)


 高笑いする気持ちが分かったが、迷惑なので止めておいた。



 毎日の生活にトラビス様とのイチャイチャは欠かせない。

 こちらは既に婚約者同士の為、どれ程イチャ付こうと独り身な方に公害なだけで許容される。


「てめッ、何なんだ、その足の速さッ!」

「身軽で、足が速いんですのー。筋肉は重そうですねーッ」

「クソッ、絶対に追い付いてやるッ!」


 周囲から見れば、鬼気迫る競争かもしれないが、これは「ダーリン、私を捕まえてごらんなさーい♡」なのである。

 トラビス様の必死さと強面がそう見せていないだけである。

 イヤー、ヒロインってのは設定的にモブには負けない筈だから捕まる為にはコケるしかないのだが、ラッキースケベ付きなので、出来ればグラウンドの硬い地面じゃなくて、柔らかい芝生の上とかがいいなあと目星を付ける。


「キャーッ!」

「ワーッ!」


 躓いた振りをすると、トラビス様は急に止まれなかったらしく、共に倒れ込んだ。

 狙い通り。

 流石ヒロイン、うつ伏せなんかには倒れない。

 しっかりお空が見える。

 一緒に倒れたトラビス様の体は足の間、左手は地面、右手はしっかり胸にあるし、お互いの顔の距離は物凄く近い距離にある。

 正常位と言っても過言ではない。


「何、巻き込んで転んでんだ。痛え」


 起き上がろうとしたトラビス様の右手が動く。


「あんっ」


 ヒロインなせいでアバズレ体質なので、当然、声が出る。

 トラビス様がビシィッと固まり、自分の状況を確認。

 真面(まとも)な婚約者なので、ピンク展開にはならず、腹筋だけで体を離すトラビス様。

 思わず舌打ち。

 やはり手強い。


(ヤりたい盛りのお年頃じゃないのか?この真面目(まじめ)真面(まとも)めッ)


 トラビス様は日に焼けているので分かりにくいが、どうやら顔が赤くなっている。

 ついでに口がワナワナしている。

 モブ青年が純情乙女化している。


(エー、何?お股が濡れちゃう位、凄い可愛いんですけどぉ♡)


 前世のある穢れたアバズレヒロインは残念思考になって、お花畑が止まらない。

 地面に倒れたまま誘惑。


「トラビス様♡」


 トラビス様が倒れたままの私を認識。


「リーゼ、どこか頭でも打ったのか?」


 真面目真面(まじめまとも)なので心配しだすトラビス様。

 トラビス様に手を伸ばすと顔が近付いてきたので、キスか!と目を閉じた。

 伸ばした手をトラビス様の首にかけ、離すもんかと力を入れると、背中と膝裏にトラビス様の手が入り、お姫様抱っこされた。

 そんな乙女の夢みたいなシュチュエーションでキス♡とかー!と、盛り上がっていたが、甘かった。


「そんな起き上がれない程なのかッ!しっかり掴まっていてくれッ!」


 と、青褪められた。

 違う、違うんだよ、トラビス様、(さか)っていただけで、ピンピンしていて、凄く元気なんです、怪我なんかしていませんのですとは言えなかった。

 何故なら、この状況が美味しいから。

 ヒロインは一応フラグを回収しておかないと他の攻略対象者が接触してきた時に危ないからね。

 これで攻略対象者と接触しても「一緒に転ぶ」からの「素顔バレ」からの「一目惚れ」からの「お姫様抱っこ」からの「医務室で(一方的に)愛を育む」からの攻略対象者の「その婚約、待った!」は回避出来たのではなかろうか。

 校医が出勤したばかりの医務室に運ばれた。

 校医さんからは婚約者を心配するトラビス様に、どこも何も無い事を告げられた。

 良かったと泣かれた。

 罪悪感が酷い。

 良心が痛む。


「心配かけて、ごめんなさい」


 と、謝り、チューしようとしたが、見事な反射神経で躱された……チクショウ。


「そ、そんな事をしてくれなくても、言葉、言葉だけで十分だからッ。こっちは切実だからッ!な、な!」


 トラビス様から凄く鬼気迫る顔で言われた。


(そんな、修行僧みたいな事をされても困るんですけど?)


 と、思っていると、「な!」と、言われた。

 勿論、諦める気は無いが「分かった」とは言っておいた。

 その後はそういった事は一切無く、日々を過ごしている。

 だが、あれから、


「リーゼを運ぶのは鍛錬に良い」


 と、言われ、朝の鍛錬の日課としてトラビス様にお姫様抱っこされるようになった。

 ダンベル代わりではあるが、愛され感があるので受け入れている。

 だが、トラビス様の頬にキスしようとすると避けられる。

 下ろされはしないが、顔を赤くして、口をワナワナさせる真面(まとも)な婚約者は今日も手強い。


 浮気者3号(宰相の息子)はおバカなセシルと上手くいった。

 尊き方は出会いを果たし、婚約解消し、順調だ。

 攻略対象者であるエミリオ君は浮気皇太子の婚約者ソフィア様とイイ感じ。

 だが、完全失恋の浮気皇太子の存在が二人の邪魔をしているのは頂けない。

 そして、浮気者2号(騎士団長の息子)はおバカなセシルに浮気皇太子と同様、完全に失恋している。

 浮気皇太子と浮気者2号は何とかしておかないといけないのではないだろうか。


「トラビス様、騎士団長のご子息はどういった人物ですか?」

「無駄に秘め込んで、格好付けている馬鹿だ。婚約者から頬を染められつつ「貴方ってツマラナイ人ね」と言われていたが、言葉のまま受け取る馬鹿だ。貴族令息なら愛してくれている婚約者から「私になら遠慮せずに何でも喋ってくれても良いのよ、何でも受け止めるわ」と言ってくれていると分かるだろう。一匹狼気取ってるからそんななんだ、きっと」

「カーッ、ヤツは男友達が少ないのが原因かーッ」


 額をペシッと叩く。

 自分で叩いたので痛くも痒くもないが、トラビス様から額をナデナデされた。


(オオッ、恋心にクる)


 トラビス様との仲を深めつつ、相談。


「トラビス様、ヤツの横で解説してやってくれませんか?」

「何の為にだ?」

「それは、慰謝料減額の為です。それに、おバカなセシルの尻拭いをするのに私が解説するより、良いかなと思いまして。浮気した騎士団長の息子はともかく、婚約者様はあんな扱いをされたのに、まだ信じてらっしゃるんですよ。その健気さ、内面乙女なところを知ればコロッと恋に落ちますよ。そうしてから婚約者様に愛を乞い、嫉妬し、翻弄され、後悔の海に沈むといいのです」


 尊き方の為「モトサヤ作戦」など、いかがかと存じます。


「……将来の夫としての役割なら協力しても良い」

「お願いしますぅ♡」


 ブッ込まれる。

 チューは躱されるのでトラビス様の両手を両手で握る。

 チューしようと口元に持って行こうとすると、全力で下方向に力を入れられた。

 手強い。

 それでも手は離して欲しくないらしく、力加減は絶妙だ。


「ところで結婚はいつにしますか?卒業式当日?それともトラビス様の誕生日ですか?」

「た、た、た、誕ッ生日でも良いのか?」


 トラビス様から握っていた手を引き抜かれたが、逆にトラビス様から両手で両手を握られ、聞かれた。


「籍だけなら入れられるのではないでしょうか。嫌でした?」

「嫌では無い。すぐに両親に手紙を書く」

「じゃあ、私も書きますね」


 トラビス様の顔が思いの外、近くにあったので、チューを狙いにいくと、またもや素早く避けられた。


「その反射神経、入り婿として理想的です」

「そういう触れ合いはいけないと言っただろうッ。ギリギリ迄迷って、遅れたじゃないかッ」


 もっと速く動けるらしい。

 入り婿云々(うんぬん)に対するアピールだろうか。

 仮に心変わりしても、今更逃げられるとでも思っているのなら、甘い。

 下半身不随かヤク中にしても逃がすもんか。


「逃げたら、標本にしてでも結婚する」

「どういう思考をして、そうなったのか分からんが、辺境領で城の地下に監禁位にしてくれ。その場合、動けなくなるのはリーゼだが、良いのか?」

「あー、テステス、こちらは冗談ですよ、オーバー」


 トラビス様の目が本気になってきたので、冗談を言い、有耶無耶にして、この話は速やかに終了させる。

 取り敢えず、楽しいダブルデートプランを練る事にした。


 私は再び女子寮で魅惑のヒロイン、ポニーテールをしています。

 今夜の相手は浮気者2号(騎士団長の息子)の婚約者様。

 第三の尊き方の籠絡です。

 赤い目元の尊き方の侍女様が殺せそうな目で、扉を開けて下さるので安定の土下座です。


「申し訳ございません、我が家の養女であるセシルがとんでもない事を」

「お立ちになって、そんな場所で迷惑でしてよ」

「そうですか、では、お邪魔します」


 床に置いた手土産を持って、遠慮せずに入り込む。尊き方から、


「ちょっと、貴女、部屋に入れるなんて言ってませんわよ」


 と、窘められたが、結局は良い人なので、ブツブツ言いながらお茶の用意を侍女に頼んでいる。

 流石、乙女ゲー世界。

 テンプレになっているらしい。

 尊き方は兎、子犬、子猫、子熊型クッキーに悶えている。

 浮気者2号の悪役令嬢様はモデル系スレンダー美女なのだが、出るトコ出てます、ズルい、エロい体だ。

 オレンジの髪だし、実写版○ミだ。

 乳バンドと半パンを着て欲しい。

 しかも、ポッテリ唇。

 コレに何も感じないなんて、流石、硬派と言える。

 そんなにも硬派なのに、浮気者2号がおバカなセシルにコロッといった理由が全く分からない。


「私が聞くのもどうかとも思うんですが、おバカなセシルに振られて、ざまぁな婚約者様とはいかがですか?」


 バキッとクッキーがいった。

 そんなに硬いクッキーじゃない筈なのに。

 何か別の物が?と、侍女様の方を見ると、割れたお盆をそっと片付けている所だった。


「あまり態度は変わりませんわ。窘めて下さる方がソフィア様以外いなくて」


 微笑む姿は女神。


「(節穴めぇ)」


 小さく呟くと、侍女様が高速で首振り肯定して下さった。

 流石、特権階級、優秀で義理堅い護衛侍女付き。


「もし、よろしければ、ですが、私の婚約者も交え、四人で出かけませんか?」

「貴女の婚約者は確かトラビス・ツロガン様でしたわね。いつもあの浮気者に花を持たせて下さる方ね。よろしくてよ」

「花を持たせる?だから、図に乗るんだぁ!今度から叩きのめして、現実を見させる方向でいかせますから、ご安心下さい!」

「リーゼロッテ様ぁ!」


 手を握ってきたのは尊き方ではなく、護衛侍女様だった。


「私もあの実践もした事の無い、世間知らずの坊ちゃんに現実を見せたいと思っておりました。私に容易く後ろを取られているのに気付きもしないッ。アイツァ、戦場なら真っ先に吐いて、使い物にならなくなるヤツですッ、そうに決まっていますッ」


 護衛侍女様に経歴を問いたいが、手の感触から手練れである事は間違いない。


「アリス、お止めなさいな。リーゼロッテ様がお困りでしてよ」


 女神の一言で護衛侍女様は後ろに下がったので、女神の足元に跪く。


「不詳、リーゼロッテ・シュクラン、女神の憂いを払い、浮気に走った騎士団長の息子であっても、女神の婚約者として相応しい(おとこ)にさせます。何が起こってもお見守り下さいますよう、お願い申し上げます」

「……リーゼロッテ様♡」


 トロンとした顔をする女神。

 その女神の部屋着の裾を持ち上げ、服従のキスをする。


「では、失礼致します」


 跪いたまま女神と目を合わせ、微笑みを交わした後は、ボロが出ないように颯爽と別れる。

 浮気者2号な騎士団長の息子、覚悟しとけ、その根性、辺境伯令嬢が物理的に叩き直して、訓練時間への気遣い位、出来る奴にしてやる!

 顔はマスクで覆うがな。

 タイガー売ってないかな♡


 ダブルデート。

 トラビス様とお出かけ♡

 楽しみ過ぎる。

 浮気者2号(騎士団長の息子)に惚れられるといけないので、辺境領で普段着にしていた田舎臭いジャンバースカートとギンガムチェックシャツに、靴下はレース付き、いつもの三つ編みだが、伊達瓶底眼鏡に替えているから視界が薄ボンヤリしている。

 女神の馬車で降り立つと、トラビス様と、どうでも良い浮気者2号が待っていた。

 トラビス様の方が浮気者2号より背が高い♡


「リーゼは辺境領での姿か。愛らしさが隠せていないから、町でも馴染むな。だが完璧な美しさだから、安心出来ない。それに、その眼鏡は却って見えないんじゃないのか?しっかり掴まっておけ、俺から離れるな」

「はい、離れる気はありません。トラビス様もその裏通りにたむろしていそうな感じが、町に馴染めていて、そこら辺で時間貸しにしている休憩宿に行きたい位、格好良いです♡」


 トラビス様の格好はいわゆるチンピラである。

 ピチッとTシャツに絶対(ボタン)は閉まらないであろう柄シャツをはおり、サスペンダー付きのズボン。

 一見すると、純朴田舎娘が騙されて、どこかに売り飛ばされる途中だが気にしない。

 トラビス様と引っ付けるから問題は無い。

 だが、二人でイチャ付いている場合では無い。

 デートだっつってんのに、手も腕も差し出さない浮気者2号。

 足を膝丈迄上げ、浮気者2号の足を踏みつける。


「さっさと動けや、ウスノロ、女神が一人じゃ秒で拐かされて、騎士団長の息子の名が落ちんぞ」


 実は私は記憶を取り戻して以来牛乳を飲みまくった結果、成長期(と根性、後はこの世界のヒロインだからか)も手伝い、女神位の身長を持つ。

 198cmなトラビス様とは理想的な身長差に近い175cmなので、デカい女だ。

 加えて、威圧をかけると一瞬、魔獣がたじろぐ位に剣技は極めている。

 筋肉でフラグは折ると言ったのはこういう意味もある。

 おバカなセシルみたいに華奢(幼児体型・現在、胸は上げ底)で、チマッ(156cm)としたのが好み(ロリコン)の浮気者2号の好みからは外れる筈だ。

 渋々、女神の手を取る浮気者2号。


「っありがとうございます」


 ほんのり赤らむ女神。

 いつもと違い女神に似合うシンプルな服装(浮気者2号の好みに合わせ今迄はフリフリで似合わなかった。健気、なのに浮気。死ね)と、気の強さを感じさせない態度に明らかに「お♡」な浮気者2号。


(……チョロ)

「(……あの顔だけの生き物に容易く騙されただけあるな)」

「本当にノコノコいらっしゃるとは思いませんでしたわ」


 ムッとした顔をする浮気者2号の反対の耳元でトラビス様の解説が入る。


「(言った相手が婚約者ならば普通「本当に悪いと思って、私と出かけて下さっているのですね、嬉しいですわ」と判断します)」


 ハッとした顔をして俯く浮気者2号。


「俯かないで下さいませんこと?」

「(幼い頃からの仲ですので、気安い物言いです。「気にしないで、今日は楽しみませんこと?」という、今日のお出かけへの期待の言葉です)」


 解説後、ガバッと顔を上げる浮気者2号。

 既に浮気者2号が女神の態度に惚れ、犬耳とブンブン振る尻尾が見える。

 文房具店で口下手、浮気者2号がお互いに手紙を送り合う為のレターセットを買っていた。

 迷わず赤い封筒を取る女神にデレる赤い髪に鳶色の瞳の浮気者2号。

 女神色のオレンジの封筒を迷わず取る、浮気者2号。

 可愛い物好きで、真に乙女な女神の姿に「素で可愛い」を見出し、デレデレしている浮気者2号。


(チョロい)

「あ、そうだ、コレ、20本、買って下さい」


 浮気者2号に赤いインクの瓶(150mlの大容量)を押し付ける。


「何故、俺がッ!」


 蓋を開け、指先にチョイと付け、浮気者2号の眉下に付ける。

 浮気者2号は手首を掴んでいるが、回避は出来ず、首を仰け反らせている。


「騎士団長の息子としての実力が不足しておりますので、現実を知った方が良いと思いまして。訓練の為の小道具です」

「不意打ちだからッ」


 言い訳している横で同じ様にトラビス様の眉を狙ったがトラビス様は手を握って、防いだ。

 現在、トラビス様とは腕を絡ませていないので、条件は同じの筈だ。


「私の婚約者は防げましたね。私の婚約者は見事、防げましたが?」

「二回言う必要があるのか?」


 無視して、浮気者2号に赤インクを押し付ける。

 今度は素直に受け取った。


「20本、買って来て下さいよー」


 浮気者2号は素直に買って来たが、箱を押し付けようとするので押し戻す。


「ウスノロの為に使うんだから、自分で持てますよね。ひ弱ですか?でしたら、馬車に置いて来てはいかがでしょう。明日の朝稽古にはそれを一本、お持ちになって、来て下さい。忘れたら取りに戻らせますので、忘れ物の無いよう注意して下さい」

「注意しなくても忘れない」

「ケッ、注意しますよー。だってぇ、婚約者がいる事は忘れたじゃないですかー」


 心底馬鹿にして言う。

 傷付いた!みたいな顔をしているがメシウマでしかない。


「ケケケケケケッ」


 嗤いすら状況にあった嗤い方になった。

 ヒロインだからか?


「リーゼロッテ、トラビス様に忘れられたら、泣いちゃう」

「リーゼ、そんな事は起こらない。幼い頃から共に育ったではないか、婚約をしたのは最近だが、そんな不誠実な事は死に別れても起こらない。俺の妻は一生涯、リーゼだけだ」


 トラビス様の後ろに浮気者2号が見切れて、増々、気まずそうにしているが、こっちは視界に入る不快物はあるものの、トラビス様の言葉にメロメロ、お花畑を駆け足中だ。


「お待ちになって」


 と、女神から言われる迄、トラビス様のエスコートで二人を撒こうとしていた事に気付かなかった。


 カフェテリアの個室に入り、トラビス様と横並びで座り。

 女神に頭を下げる。


「「申し訳ありませんでした。邪魔臭かったもので、つい」」

「許してさし上げるわ」

「仕方「トラビス様、どれにしますー♡」」


 女神から赦しが与えられたので、浮気者2号を無視して、メニューを広げる。


「ローストビーフサンドとチキンサラダの特大とフローズンヨーグルトの無糖。後は水」

「即決!好き。私はこのBLTサンドと紅茶にします」


 女神はクリームパスタと紅茶、浮気者2号はミックスサンドとオレンジジュースだった。

 もう一品頼むのかな?と思ったが頼まなかった。

 鼻で嗤っておく。

 小鳥のように少食の男は乙女の敵だ。


「今日はいかがでしたか?」

「悪くありませんでしたわ」

「これからどうなさいます?護衛も兼ねて、引っ付いていましたけど、お邪魔じゃ?」

「フフッ、嘗て無い程の爽快感を味わっておりますわ」


 女神の微笑みに顔を俯ける浮気者2号の向う脛を蹴る。


「反省会と後悔は帰宅後に一人でしろ。この期に及んでまだ婚約者を気遣えないのか?」

「リーゼロッテ様、ありがとうございました。今日は私、帰りますわね。一生の思い出になりましたもの。フフ、フォルラン伯爵の後妻として嫁ぐ決意もつきましたわ」

(そりゃ、女神のBADENDじゃねえかッ!)


 立ち上がる女神、だが、その手をガシッと掴む手があった。


「い、嫌だ」


 浮気者2号が引き止めはしたが、そのまま固まっていて、喋りそうにない。

 迷わず浮気者2号の向う脛を蹴る。

 二度目の痛みによって浮気者2号は悶絶顔だが、今の状況と顔が合っているので問題無い。


「お、俺は婚約の解消手続きも、両親にも何も言っていない。セシルを好ましいと思った事は認めよう。だが、体を密着されて、無理して喋らなくても良いなんて言われて、口接けされれば、女性との免疫も無いし、好きだと思ってしまうものなんだ。特に俺は単純で、お前みたいに賢くない、馬鹿だから」


 コイツ本当に馬鹿だなとしか言えない言い訳。

 引き留める気はあるのかも疑わしい罪の暴露。

 女神から見捨てられ、自暴自棄で嫁いでいかれるかもしれない状況。


「馬鹿だから、お前の言う言葉は全部そのままの意味だと思ってしまうんだ。「つまらない」は「つまらない」。「馬鹿」は「馬鹿」。「もういい」は「もういい」。どんな顔をして言っているか考えなかったんだ。お前が「馬鹿」という時の顔をよく見ろとツロガン先輩に言われた。今日、一緒に出掛けようと誘った時、「今更、私に何の用がありますの?馬鹿なんですの?」と言われたが、少し微笑み、耳が赤らんでいて、教師や皇太子殿下が言う「馬鹿」と意味が違うのではないかと思ったのだ。昔から思い出してみると、お前がそう言う時にはいつもそういう顔だったから、図々しいが俺に好意があるのではと期待していた」


 女神が浮気者2号を凝視している。


「俺の勘違いなら、申し訳ない。でも今日、思った。結婚するなら、お前が良い。政略とか関係無く、お前が良い。結婚は当然、お、貴女が俺の過ちを赦しても良いと思い、愛して貰える迄何年でも待つ。だから、俺と婚約の解消はしないで欲しい。俺が貴女に赦しと、愛を乞う期間をくれないか?」


 女神が既に絆されかけだが、グッと口を結んで沈黙したままだ。


「今すぐ、返事を貰おうとするなんて図々しいにも程があるだろう。婚約者殿はいきなり手の平を返されても、戸惑うだけだ。赦しが欲しいなら、もっと気遣うべきではないか?」


 流石、真面(まとも)な婚約者、トラビス様は言う事が違う。

 その言葉にお花畑に走り出してしまいそうだがグッと堪える。


「その手を離して、女神が秒で拐かされる前に、馬車迄送ってさし上げて下さい」

「分かった。行こう」


 浮気者2号が立ち上がり、四人で店を後にした。

 ちなみに昼食代は浮気者2号が払ってくれた。

 安い授業料である。


 浮気者2号(騎士団長の息子)は片付いた。

 浮気皇太子が残っている。

 素行調査の結果、おバカなセシルに惑わされた以外、悪い所は無い。

 成績は常に一位、人望もあり、見た目も眉目秀麗、スタイルも良い。

 女子垂涎の細マッチョだ。

 まあ、浮気皇太子がどれ程良かろうと、私の好みに浮気皇太子は存在しないし興味も無い、吐く事はあっても恋に落ちる事は無い。

 調査結果としては、青少年の性的接触に対する弱さは豆腐ですか?何、完璧だった道、踏み外してんの?状態。

 だが、完璧に失恋しておきながら、婚約者が嫌いなのは変わらないらしく、反省も無く、邪険に扱っている。

 八方塞がり。

 麗しのソフィア様(浮気皇太子の婚約者)がエミリオ君と幸せになる道は、おバカなセシルが原因になるか、駆け落ちしかない。


「どあッ!!」


 いつもの通り、昼食時はトラビス様のツロガン侯爵家という地位の恩恵で良い席に座れる私は、トラビス様と共に食堂のテラス席にいるのだが、テーブルに突っ伏す以外の解決策は導き出せなかった。


「リーゼは学園に入ってから、奇怪な行動が増えたな」

「ソレは何もかも、おバカなセシルのせいです。辺境伯家の名を地に貶め、この学園の三大権力者に汚名を着せたからです」


 おバカなセシルが浮気者3号(宰相の息子)に落ち着いたから、隣国の第二王子は恙無(つつがな)い留学生活を送っている。

 エミリオ君と第二王子はこのままおバカなセシルと接触しないまま過ごして欲しい。

 辺境伯家の慰謝料をこれ以上引き上げないで欲しい。

 現在の額はキングコング(魔獣)一万匹だ。

 年間百匹いくか、いかないかなのに、酷い仕打ちじゃないか。

 待てよ、ガルーダ(魔獣)なら五羽でって百年に一度、出るか、出ないかの神獣様扱いの魔獣は処せないッ。

 惜しい。

 コッソリ……違う、希少性だ。


「まあ、なぁ。一人はどうしようもないとして、一人は収まった、最後の一人は……。何も出来ないって程でもない。ルエパル公爵家は傘下に当たるソフィア様を推しながら、皇太子殿下の浮気を看過した。理由は皇太子殿下の優秀さにある。だが、それに勝る国益があれば乗り換える。それが政治だ」

「ソフィア様という最上級の宝石は皇太子殿下だけのものじゃ無いって事なの?」

「国を揺るがす有事があり、例えば戦争とかだが。それを収めれば褒美が与えられるのは当たり前で、姫を望んだ英雄もいた。皇太子殿下が結婚する迄に多大な功績を誰かが挙げれば、そして、それが認められれば……」

「サ、サラダチキンをどうぞ」


 昼食を食べ進めながら見解を述べていたトラビス様に献上する。


「おう、貰う」


 我が婚約者は神ですか?

 それとも、神が使わし(たも)うた天の使いですか?

 天才エミリオ君は皇太子殿下の卒業前、魔獣を寄せない魔法陣なる物を開発する。

 その魔法陣は一夜限りや一瞬で消える物では無く、定着させる事が出来、魔力を注げば注ぐ程、広範囲になっていく代物だ。

 何千年か後には国を超える位で、国が将来手にするであろう利益は計り知れないだろう。

 しかも、その魔法陣は難解過ぎて、エミリオ君以外は使いこなせない(by ファンブック)。

 つ・ま・り、公表したって誰にも出来ない代物。

 それでも欲しがる国は多い。

 当然、皇太子殿下なんかよりエミリオ君の方が尊重されるし、国は手放さないだろう。

 エミリオ君が浮気男で無いのなら、本気なのなら、ソフィア様を要求する筈だ。


(そんな展開、リーゼ、泣いちゃう)

「突然、ニマニマしだして、どうした?」

「エー、解決の感謝の印に、裏山か体育館倉庫にでも行きますか?」


 トラビス様がフォークを手から落とした。

 顔が赤くなり、口がワナワナしているから意味は分かったらしい。


「い、い、い、い、行く!じゃないッ、行かないッ、行かないからッ」


 流石、真面(まとも)な婚約者。

 煩悩に負けても立て直す。


「食い終わったなら、フォークを貸してくれ」


 それでもブッ込んではきた。


「どうぞ」


 フォークをトラビス様に渡す。

 この真面(まとも)な婚約者はどうしてくれよう。


「早く結婚したい」

「俺も」


 トラビス様がジッとこちらを見つめながら、即答してくる。

 本当に、この真面(まとも)な婚約者はどうしてくれよう。



 先日、中間テストがあった。

 おバカなセシルは当然、下位から数えた方が早い位。

 浮気者3号(宰相の息子)は大幅に順位を落とした。

 第二部は既に始動している事を確信した。

 二部ではこの中間テストの結果、浮気者3号の元婚約者様があの浮気皇太子を押さえ、満点一位を取り、留学が決まるのだ。

 つまり、大人の事情で、浮気するような皇太子でも一位陥落の汚名はヤバい、ならソイツを排除すれば良いんじゃね?となるわけだ。

 それが現実に今、起こり、尊き方は三日前に旅立っている。

 おバカなセシルと浮気者3号(宰相の息子)の行く末は順調である。

 これはもう、ヒロイン、リーゼロッテ・シュクランは「GAME OVER」で終了なのではなかろうかと判断している。


 学園生活だが、私はモブとして浮気者2号(騎士団長の息子)をトラビス様と扱きつつ、毎日を過ごしている。

 女神には肌に付いたインクを落とす為に、アルカリ電解水を魔法で精製すると良いと教えたので、健気な女神は精製した水で浮気者2号を拭いてあげている。

 その後のアフターケアで、洗顔と化粧水迄しているので浮気者2号の癖にプルツヤ肌になっている。

 女神は浮気者2号の頬に手をやる事が多くなり、キスですか?な状態に期待する浮気者2号を、おすまし顔からの笑顔で撃ち抜いている。

 浮気者2号は浮気皇太子とだけ侍る事は止め、日々、女神の飼い犬兼番犬状態。

 同じクラスではないので、休み時間ごとに通う姿を見るようになった。

 たまにおバカなセシルが「お友達だったのに、私、寂しいよ」と言って、しな垂れかかろうとするのを浮気者2号に避けられ、パンツを披露している。

 浮気者2号は変わらず馬鹿だが、浮気皇太子以外の男子とも、たむろするようになり、冗談も言い、笑い合っている。

 浮気者2号も少しは真面(まとも)になったらしい。



 穏やかに日々は過ぎ、晴れて11月になった。

 11月はトラビス様の誕生日である。

 善き日とトラビス様の誕生日。

 至福の日である。

 学園は当然、休んだ。

 おバカなセシルは当然、呼ばない。

 学業優先だ。

 籍を入れるだけなので、私とトラビス様に、お互いの両親だけだ。

 この後、すぐに私は両親と共に退学届の手続きにも行く。

 トラビス様は付いて来たがったが、学園長室前で待機(ん?付いて来ていると言えるかもしれない)だ。

 この国は、女性は初潮と同時に成人な恐ろしい国なのに加え、政略、年の差結婚の国だから、60のジジイ花婿と5歳の花嫁が存在する。

 未亡人なら自由恋愛OKだから、令嬢達は嫌がってはいない。

 年齢的に突っ込まれる事は無いが、確実に相手は変態だから覚悟はいる。

 まあ、令嬢は大抵、見目麗しい従者という名の恋人候補を持参するのでお互い様だろう。

 いいのか?後継者問題は?と、思うが良いらしい。

 大きな屋敷に存在するという「開かずの間」というヤツだ。

 恐ろしく話が逸れてしまったが、幼い花嫁が存在しているので、同級生の中にも夫人や未亡人も通っている。

 通わない選択も出来る為、そこは本人の希望次第になっている。

 私としては辺境領で良かったのだが、入り婿のトラビス様がゴネたので、トラビス様が卒業する迄、通う事になった。

 この乙女ゲームの決戦期間は三年間なので、一年通って、退学する私はBADEND退場というわけだ。


 理・想・的・終・焉だ。


 手続きも終わり、両親と一旦別れ、扉前のトラビス様とも合流。

 二人共制服なので、授業中で誰も居ないし、聖地巡りをして、トラビス様以外ではゲロりそうなチューイベントフラグを回収しておく。

 まずは中庭の噴水前だ。

 真面(まとも)な婚約者は夫となったので、もうチューを拒まないだろうと思われる。


「トラビス様、チューしましょう。チュー!」

「リーゼとの口接けなのに、情緒と雰囲気が無い」


 乙女な事を言い出すトラビス様。

 しかし、私には必殺技がある。

 伊達眼鏡を胸ポケットにしまい込み、左右の三つ編みをポニーテール、アホ毛付きに変更。

 目を閉じて、唇を差し出すと、やはり唇が落ちてきた。

 薄目を開けて、トラビス様かどうかを確認。

 トラビス様だったので、トラビス様のブレザーの裾をちょっと握る。

 一旦唇は離されたし、それで離れてくれる予定だったのだが、トラビス様は背中に左腕を回し、引き寄せ、右手を頭の後ろに置いて、確保してきた。

 夫から繰り出されるディープキス。

 唇が触れるだけのキスで終了の筈が喘ぎ付きで再現してしまった。

 唇を離すとハアハアしている夫、トラビス様が居た。

 他にも美術室とか、屋上とか、温室とか、夕日をバックに騎士訓練場とかあったが、一遍に済ます事は出来なそうだ。

 学園にはまだ通う予定だし、徐々に回収していこう。

 アバズレなので、ディープキスで火の付いた体が音を上げている。

 そして、多分、夫なトラビス様も限界だ。


「情緒が何とか言っておいて、舌、入れる?」

「夫婦だし、問題無い。それより早く新居に行きたい」


 ポニーテール、アホ毛付きは危ないので、トラビス様とケンカップルをしながら、学園内から速やかに新居へ帰宅し、お姫様抱っこで新居に入室後、寝室に直行された。


 学園があるこの国の王都には、辺境伯屋敷も、トラビス様の実家のツロガン侯爵家屋敷もあるのだが、徒歩で学園に通える距離に部屋を借りている。

 お母さん経験があるので、掃除も洗濯も炊事も出来るが、お貴族様の嗜み(持ってる奴は(ヤツァ)、惜しまず金を出しとけ)として、身元保証のしっかりした(たまには妾狙いがいるので)通いの下働きを雇い、暮らす事になった。

 雇って正解。

 騎士の体力、舐めてました。

 初夜にて上、下、斜め、後ろ。

 全部、体験させられました。

 現在、お風呂でオエッフォッン。

 アバズレも逃げ出す程のエロ。

 今朝は元気にサラダチキンを齧る夫から桃を給餌されています。

 五臓六腑に染み渡る桃の甘味。


「汁が垂れた」


 口端の果汁を舐めて、キスしてくるサラダチキン風味のトラビス様。


「アーッ、何故、同じ学年じゃ無いんだ。新婚の妻が同じ学園にいるのに膝にも乗せられないなんて」

「もしもし、仮に同じ学年で同じ組でも、絶対、膝には座りませんよ」

「あのお坊ちゃんにはまだ指導するのか?」


 トラビス様が速やかに話題変更しながら、キスもしてくる。


「奴が7時からの朝稽古に変更したのは良いんだけど、三撃から五撃になっただけだから」

「チッ、こうなったらもう、病院送りに……」

「もしもし、そうなったら辺境伯家への入り婿どころか騎士団長への道まっしぐらですよ」

「じゃあ、今日も昼飯の時に会って、放課後は図書室で会おう。その時は膝で良いか?」


 再び話題変更しながら、ブッ込んでくる。

 だが、納得出来ない事もある。


「放課後はお邪魔虫にならないように、帰宅希望です」


 ソフィア様とエミリオ君との貴重な時間を邪魔したくないし、新婚だもの。

 トラビス様の頬に手を置き、サラダチキン風味のキスをした。

 椅子に座っていた筈のトラビス様がベッドに膝をかけている。

 だが、トラビス様が私の事を押し倒してきているような気がするのは気のせいだと思いたい。


 トラビス様とのイチャラブにより足腰が立たないので、トラビス様のおんぶで学校に行き、木陰でトラビス様と騎士団長の息子(更生中)の剣技を見守る。

 五撃から三撃に戻った騎士団長の息子(更生中)は又しても四つん這いだ。


「ツロガン先輩は強かったのですね……父上に相手をして貰った時のようでした」

「王宮の騎士団には、絶対に入らないからなッ!」


 あの話が利いているのか、叫ぶトラビス様は本気だ。

 可愛い夫である。

 再び夫におんぶされ、教室に向かう迄の廊下で不審な言葉を発している。


「こうなったらもう、冬季休暇以降は辺境領で監禁されるべきなのではなかろうか。魔獣の討伐で深手を負い、負傷すれば何とか……良い、理想的な生活」

「良くないですよ。見捨てませんけど、負傷しないでしょうが」


 隠しているが、防御魔法カンストのトラビス様は自分を含む5m程度なら完璧に守れる。

 トラビス様は溺愛してくるし、ソコソコ強いし、もしかしたら隠しキャラなんじゃないか?と、疑った事もあるが、ファンブックにはそんな記載は一切無かった。


(まあねー、歩き始めから辺境領で出会ってるし、トラビス様が学園に入学する迄、毎年一緒に過ごしてたし、そんな平穏人生コースはゲームとしてウケないから、違うか。ん?でも隠しキャラだとしても、OK、OK。大歓迎)


 愛しい夫に教室の椅子に座らせて貰い、別れる。

 浮気者3号(宰相の息子)は上の学年だから、おバカなセシルは浮気皇太子と共に座って、お喋りしている。

 騎士団長の息子(更生中)は他の男子と座っている。

 おバカなセシルも浮気者3号(宰相の息子)も、浮気皇太子も、断罪への道を突き進んで欲しい。

 もう、単なるクラスメイトでしかない私は今日もモブ生活を満喫する。

 トラビス様とリア充生活しながら。


 トラビス様が卒業したので、退学し、辺境領に帰宅した。

 浮気皇太子が執着しているのはおバカなセシルなので何の問題も無かった。

 おバカなセシルは二股かけているのだろうか。

 恐い事をする。

 辺境伯家はソフィア様のジュペス侯爵家やルエパル公爵家と手を組む予定だから、浮気皇太子は支持しないと決定。

 一番の理由は二年目の夏季休暇もおバカなセシルが浮気皇太子と浮気者3号(宰相の息子)と過ごし、帰宅しなかった事が原因だが、私の手紙で状況を知っていた両親は、問題を起こせばおバカなセシルは切り捨てる決意を三年生への進級を期に決定した。

 コレがモブとして辺境領で過ごした二年間にあった事。


 今では全てが終了したので、辺境伯家で今日も平穏無事に過ごしている。


 辺境領でおバカなセシルのせいの慰謝料による借金生活と思いきや、千年に一度の災厄と言われる魔獣、古代竜(見た目ティラノサウルス)の出現により慰謝料生活は無くなった。

 流石、ヒロインである。

 この時ばかりはヒロインである事を感謝した。

 辺境領ではポニーテール、アホ毛付きで過ごしている。

 討伐時にこの髪形にすると、スパスパッと魔獣が屠れるので重宝している。

 王宮から派遣され、剣の修行に来た新人騎士の騎士団長の息子(更生済み)に弟子入りを申し込まれかけたが、夫の背中に隠され、剣を突き付けながら、


「貴様に古代竜の血の味を味わわせてやろう」


 と、瀕死にすんぞ、ゴラ宣言を夫がしてくれたお陰で、無事、回避出来た。

 その後、騎士団長の息子(更生済み)に誘われ、遊びに来た女神が終始私にベッタリなので、騎士団長の息子(更生済み)に敵認定され、嫉妬の視線を浴びている。

 メシウマ案件であるので、馬で二人乗りしたり、レイピアの扱い方を教えたりと女神と終始、イチャ付いている。

 トラビス様は真面(まとも)な夫なので女神とイチャ付いてもプンスカせず、騎士団長の息子(更生済み)を扱きながら温かく見守られている。

 騎士団長の息子(更生済み)は攻略対象者だけあって死にかけると急成長するので、女神は回復魔法特化になっている。

 その優しさ、とことん女神だ。


 ついでなので、他のどうでもいい人達と尊き方の卒業後の事を報告しておこう。

 おバカなセシルと浮気者3号(宰相の息子)は仲良く、王妃となった尊き方と隣国の新しい王の結婚祝賀会に、呼ばれてもいないのに浮気皇太子に引っ付いて出席し、おバカなセシルはあからさまに新王を誘惑。

 浮気者3号(宰相の息子)は、尊き方が今でも自分に未練があると思って、罵り、侮辱。

 浮気皇太子でも見捨てる位の不敬を働き、隣国の牢屋で二人、仲良く処刑待ちをしている。


 浮気皇太子は隣国での失態に加え、自己中な性格と、婚約者であるソフィア様を得られなかった事で廃嫡され、正妃様の産んだ第二王子が皇太子殿下となった。

 廃嫡が決まり側妃の母親は第二王子を暗殺しようとして、実家もろとも処刑され、早々に母親を裏切り、密告した浮気皇太子は、命を取り留めたが、臣下降下し、准男爵(平民)となったので、どんなに努力しようと、生涯、家臣でしかないだろう。

 つまり、飼い殺される事が決定したわけだ。

 だが、浮気皇太子は望み通り、愛に生き、恋愛結婚出来るから問題は無いだろう。

 ピンク髪の娘さん、ガンバレ!


 エミリオ君はやはり類稀なる美男になり、ソフィア様と美しき一対になっている。

 魔法陣を完成させ、国の宝となり、国に留まる引き換えにソフィア様を要求した。

 ソフィア様が育てただけあって、とても優秀ないい子だ。

 だが、魔獣の魔法陣を辺境領の森に施すのはご遠慮した。

 生活の糧を失うのは困るのだ。

 ソフィア様にポニーテール、アホ毛付きで頼むと、生真面目な溺愛夫となっているエミリオ君はソフィア様に秒で懐柔され、魔獣の森に魔法陣の影響が無いように迄してくれた。


 なんて事を!と思われるかもしれないが、魔獣の用途は武器だけじゃなく、薬の役割がある。

 古代竜の血は伝説の万能薬で、我が夫が脅しに使った通り、どんなに瀕死だろうと一瞬で治癒出来る。

 蘇生機能迄は付いていないが、「神の水」と言われている程だ。

 骨も粉薬として万能の毒消しになる。

 内臓を正しく処理すれば素晴らしい芳香を放つ香料の原材料になり、生殖器官は媚薬の原料となる、肉も美味。

 古代竜は余す所無くだが、効果は落ちるが、その代替として他の魔獣だって使用出来る。

 あのキングコングは、精力剤や育毛剤の原料として男性に大人気だ。


 私はモブとして今日もこの世界を満喫している。

誤字脱字報告頂きありがとうございました。

直接感謝したいところですが、この場でお礼申し上げます。

イヤ、もうホント。笑ける位多くて、自分でも間違い探しか!と思うくらいですわー。

皆さん本当にありがとうございます。


感想を頂き、セシルの最期が曖昧だったのと、浮気騎士団長の息子や浮気宰相の息子を浮気者2号と3号に改稿しました。

浮気騎士団長の息子は出番が多いので、浮気者2号での登場となっております。

皆さん本当にありがとうございます。


連載始めました。

「気付いていませんでしたが、夫とはすれ違ってもいないし、ジレジレでもありませんでした」

です。

読んで頂けると、嬉しいです。

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[良い点] 面白いですね〜! 読んでてニヤニヤ、あらあらと、楽しませてもらいました。 [気になる点] ヒロインの彼は、隠れ攻略対象なのか気になります。 [一言] ヒロインが新しいです! 賢くて、たくま…
[良い点] 淡々とヒロインチートを満遍なく利用しつつ、彼ピッピとラブラブしている主人公の逞しさ、素晴らしい…!! 不幸になる人員も最小限に抑えてるところもステキ。 幼なじみが真実ゴリマッチョになってお…
[良い点] 一気に楽しく読ませていただきました! [気になる点] セシルは、隣国で処刑待ちなのか、平民落ち皇太子の恋愛結婚相手に収まったのかどっちなんでしょう?
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